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準備出来ている盗賊

 アムルンさんの酒場で、ソルマ達と遭遇してから数日。

 俺とソルマはオネスト国王に闘技場を借りてもらい、勝負の舞台を整えた。

 フード付きマントをゆっくりと羽織り、グローブを引っ張ってしっかりと装備する。

 懐に球体のノーフォーム、ズボンのポケットにメダルを仕込んで準備は出来た。


「ローブ、いよいよだね……」


「ああ、さっさと終わらせてくるよ。これが終わったら、何処かに遊びに行こう」


 闘技場の控室まで、メシアは見送りに来てくれた。

 メシアは今日の戦いには参加せず、客席でシーリアス王女達と見守ってくれる。

 本当は参加したそうだったけど、遠慮してもらった。

 ソルマとの決着は、俺だけでつけたい。


「うん……! シーリアス王女と、3人で行こうね……!」


「……そうだな、3人で海にでも行こう。遊ぶ為にも、まずは頑張ってこないとな」


 俺がそう言うと、メシアは微笑みながら頷いた。

 約束をしてしまったのだから、尚更負けられない。

 見送ってくれるメシアに背を向けて、俺は闘技場のアリーナに姿を出す。


「待っていたよローブ、本当に1人で来るとはね……その度胸だけは、認めてあげよう」


 アリーナで俺を待ち受けていたのは、完全に武装したソルマのパーティーだった。

 真っ先に声をかけてきたのは、リーダーの『剣士』ソルマだ。

 上半身のみ鎧を身に纏い、バックラーと片手剣を持って不敵に笑っている。


「幾ら強くなったからって、調子に乗り過ぎですよ。嘘をつきすぎて、自分の実力を勘違いしちゃいましたか?」


 ニコニコとした笑顔で俺を煽ってくるのは、『僧侶』でありながら回復、攻撃、支援をこなすビソー。

 真っ白な僧侶らしい衣服に、先に青い水晶を付けた長い杖を装備している。


「油断をするな……確実に仕留めるぞ……」


 そんなビソーに注意しつつ俺を睨んでくるのは、実質サブリーダーになっている『弓兵』のエイロゥ。

 森に溶け込みやすいよう緑の服とマフラー、標準よりも大きな弓を背負っていた。


「クソローブゥッ! テメエだけはっ! テメエだけは、必ず俺様の手でボッコボコにぶちのめしてやるってんだよぉぉおおっ!」


 最後に大きく吼えながら、大きな盾をハンマーで叩いて威嚇しているのが『重装兵』ダンモッド。

 全身を頑丈そうな鎧に身を包み、全身が入る巨大な盾と全てを叩き潰すハンマーが目を引く。

 一旦ソルマパーティーから目を外し、周囲の観客席を見渡した。

 貴族専用の特別そうな席に、シーリアス王女とパトリオット家の方々、メシアが座っているのが見える。


「最初は俺がサボっていた事を撤回させようって、そう思っていただけなんだけどな……お前らの顔を見たら、やっぱりぶん殴りたくなったんだ」


「ああっ!? 不意打ち一発当てたくらいで、調子に乗ってんじゃねえぞ! テメエの貧弱な腕で、俺の護りをぶち破れるとでも思ってんのかぁっ!?」


「ぶち破れると思っているから、勝負を受けたんだ。そんな事も理解できなくて、よくSランクパーティーに居られるよな?」


「んだとぉっ!?」


「耳を貸すな、ダンモッド。お前を怒らせて、隙を作ろうとしているだけさ。君は私のパーティーに相応しい、安心して盾を構えていてくれ」


「お、応ともよっ! 任しとけっ!」


 ダンモッドの冷静さを少しでも奪っとこうと思ったが、ソルマの言葉でダンモッドは調子を取り戻していたる。

 本当はこんな風に煽る必要は無いんだけど、言われっぱなしなのもムカつくからな。

 昔とは違う、少しは言い返してやらないと怒りを抑えきれない。


「ソルマパーティー、ローブ。準備は出来ているか?」


 闘技場のスタッフから選出された審判が、俺達に声をかけてくる。

 もしかしたらソルマに買収されているかもしれないが、そうだとしても関係ない。

 審判が必要になるような、ギリギリの戦いにはならないからな。


「私達は何時でも戦闘可能です。ローブ、君は武器を使わずに戦うつもりかい?」


「敵が余計な心配すんな……俺も準備できています、何時でもどうぞ」


 ソルマの無駄な質問に苛立ちながら、審判に準備完了を告げた。

 右手を軽く握ったり開いたりして、手の調子を確かめる。

 緊張は無いし力み過ぎてない……うん、悪くない。


「それでは、始――」


「うおおおおおらぁぁぁぁっ!」


 審判が始めと言い切る前に、ダンモッドがハンマーを掲げて突進してきた。

 ソルマ達はニヤリと笑っている事から、この行動は予定通りらしい。

 俺がこれを想像してないと、本気で思っているのだろうか?

 だとしたら、それは……


「舐められたもんだな……!」


「脳みそ、ぶちまけやがれぇぇぇぇっ!」


「【盗む】っ! 威力を盗む(パワースティール)ッ!」


 左手で右腕を支え、ダンモッドが振り下ろしてくるハンマーの面に右手を合わせる。

 ハンマーに右手が触れた瞬間、ダンモッドの体を勢いよく弾き飛ばした。

 放物線を描いて目の前で崩れ落ちるダンモッドに、ビソーとエイロゥは大きく目を見開いている。


「俺のこの体には魔物やダンジョンマスターの強さが、凝縮されている……まだ俺を『盗賊』だと侮ってるんだったら、思い知らせてやるよ……メシアのおかげで手にした、俺の強さをなっ!」


 大きく啖呵(たんか)を切る俺を、ソルマは忌々しそうに睨んできた。

 ビソーをっ! エイロゥをっ! ダンモッドをっ! そしてソルマをっ!

 全力で、ぶん殴るっ!

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