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生きる為に協力する女騎士と盗賊

 森で集めた枝の束を右腕に抱え、左手には漆黒の槍に変形させたノーフォームに持っている。

 ノーフォームには数匹の魚が突き刺さっていた、川で【槍技】を使って獲ってきた物だ。

 川での魚獲りは、【槍技】の入門に最適な練習になる。


「【索敵】範囲最大……良し、周囲に魔物は居ない。シーリアス王女も、洞穴から動いてないな」


 【索敵】で周囲の状況をしっかりと確認、数分前に使った時から大きな変化は無さそうだ。

 安全を確認したとはいえ、何が起こるか分からない。

 なるべく早足で洞穴まで戻り、足音を立てないようにこっそりと中に入る。

 どうやらシーリアス王女はまだ眠っているらしい、それなら今の内に外で焚き火をつけて魚を焼く準備でもしようか。

 眠るシーリアス王女を確認し、枝の束を置いて槍形態のノーフォームの柄を地面にしっかりと突き刺す。


「動くな」


 背後から唸るような女性の声、首元には小さな短剣が突き付けられている。

 どうやらシーリアス王女は既に起きていたらしい。

 ゆっくりと両手を上げて、降参の意を示す。

 俺の能力値(ステータス)的に短剣では傷つけられないだろうけど、だからと言って無視し続けるのも失礼だ。


「シーリアス王女、俺です。『盗賊』のローブですよ、だから短剣を外していただけませんか?」


「貴様だったのか……離してやるが、妙な気を起こすなよ」


「分かっています。外で焚き火の用意しますから、シーリアス王女は休んでいてください」


「余計な気を遣うな、自分は王女でもあるが騎士だ。生き延びる為に働く事があるのならば、自分も働く。そこの魚を焼く準備でもしておこう、貴様に聞かねばならない事もあるしな」


「魚の下処理が苦手なので助かります、まあ取り合えず外で作業しましょうか」


 ノーフォームに刺さっている魚をシーリアス王女が川の水で洗いに行っている間、俺はノーフォームを杖形態にして【炎魔法】プチファイアで枝を乾かす。

 まさかシーリアス王女が手伝ってくれるなんて思っていなかった。

 乾かした枝を一か所に集めて、プチファイアで火をつける。

 普通に火を着けようとするよりも断然に早い……【炎魔法】を盗んでいて良かった。


「無事に火がついたようだな、自分の方も準備が出来た。魚を刺す串のような物はあるか?」


「枝ならあります」


「ならば、それを削るとしよう。自分は短剣を持っているが、貴様は……」


「大丈夫です、この杖は短剣にもなりますから」


 俺はノーフォームから杖メダルを取り外し、今度は短剣メダルを嵌めこむ。

 手元に漆黒の短剣を用意すると、シーリアス王女の視線がノーフォームに向けられていた。

 俺達が焚き火の近くに座り込み、枝を串にする為に削りだす。


「……貴様の武器、杖から短剣になっていたな。先程は槍として魚を突き刺している、もしかしなくても剣になったり斧になったりもするのか?」


「他にも弓や鉤爪、盾とかにも変形しますよ。王国の裏路地にひっそりと工房を構えた、ドワーフのおっちゃんに作ってもらったんです」


「ああ、おっちゃん殿の作品か。確かに彼の腕ならば、その武器も作れるだろう。だが、何故『盗賊』である貴様がその武器を使いこなせる? 自分が調べた限り、『盗賊』のスキルは全く戦闘に向かない筈だ」


「ええ、その通りです。『盗賊』が扱えるのは【盗む】と【索敵】、【鍵開け】に【罠解除】の4つ。それが俺の本来のスキルですよ、こんなマイナーな職業のマイナーなスキルをよく覚えていますね」


「自分達騎士は、時に冒険者の鎮圧をする事がある。そうなった時に大事なのは、その冒険者がどういう職業でどういうスキルを持っているのか自分達が知っておく事だ」


 俺達冒険者だってダンジョン攻略をする時は、棲息している魔物の特徴や弱点をよく調べる。

 それは知っている事と知らない事で、戦闘の仕方や被害の数が大きく変わるからだ。

 魔物が相手だろうが冒険者が相手だろうが、これはきっと変わらない。


「だからこそ『盗賊』である俺が、他の職業のスキルを使っていた理由が気になる。いいやきっと、知らなければならない」


「ああ。自分を助ける為に使ってくれた【爪技】に、先程の焚き火には【炎魔法】を使っていた。自分の推測が正しければ、貴様は他にもスキルを使えるのだろう? でなければ、おっちゃん殿が作った武器が変形機能を持つ意味は薄い」


「シーリアス王女の言う通りです。まあ今は【剣技】と【槍技】、【爪技】の3つしか武器系のスキルは覚えていないんですけどね」


「全く戦闘を出来ない『盗賊』が、そこまで使えれば充分だろう。不意打ちとはいえ、Sランクのデーモンを一撃で倒す程なのだからな」


 シーリアス王女が突然、枝削りに使っていたナイフを逆手に素早く持ち替える。

 そのまま俺の目を突き刺そうと振るってくるが、俺は短剣形態のノーフォームでしっかりと防いだ。

 流石にもう、『盗賊』としては異様に高い能力値(ステータス)にも気付かれている。


「危ないですよ、もっと別の確認方法だってあったでしょうに」


「答えてもらうぞ、貴様の強さの理由をな……!」


「構いませんよ。隠す事でも無いですし、『盗賊』でこの強さを得るのは相当大変ですから」


「ほう……?」

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