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問題に気付く剣士【元パーティー視点】

 私達Sランクパーティーは、とある洞窟タイプのダンジョンを攻略中だったのだが……少々問題が発生している。

 魔法でしか倒せないヘビーメタルというスライムタイプの魔物が、大量に発生する罠を作動させてしまったのだ。

 部屋の出口も封鎖され、戦う事を強制されてしまい……


「ビソー、すまない。かなり無茶をさせてしまったね」


「いいえソルマ、元はと言えば僕が罠を踏んでしまったのが原因ですから……でも、もう少しだけ休ませてくださいね……」


「当然だとも、君は私達パーティーの要なのだから」


 私は『剣士』、エイロゥは『弓兵』、ダンモッドは『重装兵』、そして『僧侶』のビソー。

 この中で攻撃魔法を扱えるのは、『僧侶』でありながらレアスキルの攻撃魔法【神聖魔法】を扱えるビソーしか居ない。

 ヘビーメタルは何とか退けたが、魔力の酷使によりビソーが倒れてしまったという状況だ。


「ったくよぉ! ビソー、倒れるなんて情けねぇなぁ。罠は踏むわ、倒れて休憩させるわで良い所ねえぞ? 次の駄目野郎は、お前かぁ!?」


「はぁ? 誰のおかげで魔力を使い過ぎたと思っているんですか? 貴方がヘビーメタルに大怪我させられたのを治したせいで、魔力を酷使してるんですよ。むしろ駄目なのは貴方の方だと思いますけどね?」


「ああっ!? 言ってくれるじゃねえか、一発ぶん殴って……っ!?」


 ビソーとダンモッドがくだらない口喧嘩を始めてしまい、仲裁に入ろうとした瞬間だった。

 今にも殴り掛かりそうなダンモッドの足元に、何処からともなく矢が飛んできて刺さる。

 矢を撃ったのは、周囲の警戒にパーティーを離れていたエイロゥだった。


「くだらん喧嘩を、するな……ダンモッド、頭を冷やせ……ストレスをぶつける相手を、間違えるべきではない……」


「チッ、わーってるよ……ちっと頭を冷やしに、俺も周囲見てくるわ……」


 そう言って、ダンモッドはエイロゥが戻ってきた道を歩きだす。

 エイロゥは休んでいるビソーの傍に行き、水筒を差し出した。


「周囲の警戒のついでに、湧水を見つけてきた……ビソー、喉を潤すと良い……」


「感謝しますよ、エイロゥ。ご迷惑をおかけします……」


「謝るなら、拙者ではなくダンモッドだ……貴様が煽ったのも、悪い……」


「……ええ、そうですね」


 ビソーは少しだけ水を飲み、小さく息を吐く。

 ローブが居た時は、こう言ったストレスは全て彼にぶつけていた。

 だからこそ、私のパーティーは安定していたと言っても良いだろう。


「ソルマ、暫くは休めそうだ……お前も肩の力を抜いておけ……」


「ありがとうエイロゥ、少し座らせてもらうよ。それにしても、どうしたものか……」


「何か、問題か……?」


「ああ。今回の事で浮き彫りになったが、私のパーティーはビソーに魔法を任せ過ぎている。攻撃も回復も出来るからと、ビソーに頼り切って何も策を用意しなかった私のミスだ。少し考えれば分かる事だと言うのに……」


「いいえ、ソルマ。僕が不甲斐ないだけで、貴方のミスなんかではありません!」


「いや、ビソー……そこはやはり、リーダーたるソルマの責任だ……そこだけは、認めねばならないだろう」


「エイロゥの言う通り、これは私の問題の先送りが悪かったのだ。ビソーの魔力は『僧侶』として、【回復魔法】に費やさねばならない。魔法の攻撃に専念する『魔術師』をパーティーに勧誘しようと思う」


「となると、問題は……拙者達Sランクのパーティに付いてこられるような、実力を持った者を探すという事か……」


「今更低ランクの雑魚『魔術師』を育てるのも、時間がかかり過ぎるでしょうしね。ダンモッドが耐えられないでしょうし」


 ビソーの発言に、私とエイロゥは小さく頷く。

 低ランクの『魔術師』を育成する間、私達の収入は大きく下がりかねない。

 そうなればダンモッドは新しいメンバーを、叩き出そうとするのは容易に想像がつく。

 となれば、即戦力となる『魔術師』を探さなければならない。


「おーう、戻ってきたぜぇ。ビソー、さっきは悪かったな」


「いえ、こちらこそ失言でした。申し訳ない」


 戻ってきたダンモッドはドカッと座り、荷物袋から干し肉を取り出して齧り始める。

 エイロゥが宥めてくれたおかげで、喧嘩は収まってくれたようだな。


「ソルマ、何の話してたんだよ?」


「ああ。ビソーは回復に専念してもらう為に、魔術師をパーティーに加入させようと思ってね。だが、私達の冒険に付いてこられる魔術師なんて滅多に居ないだろう?」


「んだよ、だったら俺に心当たりがあんぜ?」


 戻ってきたダンモッドのあっさりとした発言に、私達3人は目を見開く。

 そう言った冒険者の噂に疎そうなダンモッドが知ってるとは、正直予想外だ。


「ダンモッド……それは誰なのだ……?」


「あーっと……ほれ、王国の酒場で、クソ野郎推薦してきたあのマスター、何つったけ?」


「アムルンさんですよ、あの酒場に居るんですか?」


「そうそう! アイツの酒場に確か居ただろ。なんか後衛の癖に、ソロでスッゲエ活躍した女がよ」


 ダンモッドの発言で、私はその冒険者を思い出した。

 確かに彼女ならば、間違いなく即戦力になる!


「無言の天才『魔術師』メシアか! 思い出したよ、レアスキル【宣言破棄】を習得した、1000万人に1人の逸材と言われるSランクの冒険者だ」


「おーっ! ソイツだよ、ソイツ!」


「【宣言破棄】持ちに、ソロでSランクですか!? その人なら、間違いなく僕達に付いてこられますよ!」


「となれば……このダンジョンの攻略を終え、勧誘に王国へ戻るのが良いだろうか?」


「そうするとしよう。その為にも、まずは今頑張ろうじゃないか」


「応よっ!」


「そうですね、僕ももう行けますよ!」


「うむ、行くとしよう……!」


 恐らくは気難しい『魔術師』だろうが、そこは上手く勧誘するとしよう。

 待っているが良いメシアとやら、君は必ず私のパーティーに加入してもらうのだから。

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