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最後の素材を取りに来た魔術師と盗賊

 ハーティの背中に乗り、俺とメシアはおっちゃんに言われた素材を取りに行く。

 どうやら今日の素材で、最後になるらしい。

 目的地の名はベイマー森林、森の中を進んでいくダンジョンだ。

 ここのダンジョンマスターの間にある世界樹、その枝である世界樹の枝を2本手に入れる。

 どうやら俺の武器だけでなく、メシアの杖も世界樹の枝を素材にするらしい。


「良しハーティ、入り口近くで降ろしてくれ」


 ベイマー森林の入り口が見えてきた所で、俺達はハーティの背中から降りた。

 ハーティの背中に乗りながら戦う練習もしているんだけど、まだまだ実戦で使えるレベルじゃない。

 ウィーラメルト竜渓谷と違って、ベイマー森林ではハーティでも構わず襲ってくる魔物が居るからな。

 でもいつかはハーティの背中に乗って、天空に存在すると言われるダンジョンに行ってみたい。


「それじゃあ、ローブ……ここを攻略すれば、ワタシとキミの武器が完成する……!」


「ああ。奥に見えるデッカイ樹を目指せば良いんだよな?」


 森の奥に見える、空まで届きそうな程巨大な1本の大木。

 その辺りは木々が無く、ダンジョンマスターと戦う為の場として整えられているらしい。

 辿り着くまでには自然が作り出す天然の迷路、遭遇率の高い魔物、巧妙に仕掛けられた罠が待ち受けている。

 とはいえ俺の【索敵】があれば、魔物も罠も殆ど無いと考えても良い。


「ローブ、ハーティ……頑張ろうね……!」


「勿論だ!」


 メシアの声掛けに、俺とハーティは気合を入れて応える。

 まずは俺が『盗賊』としてのスキルを使って、パーティー全員を安全にダンジョンマスターの元へ送り届けるんだ。

 同じ過ちは繰り返さない、その皆の中には俺の事も含まなければならない。


「【索敵】範囲最大……なっ!?」


「どうしたの……?」


「大量のアサルトウルフがこっちに迫ってきてる! やり過ごすのは無理だ、もう来るぞ!」


 俺が忠告をした瞬間、前方から20匹を超える灰色の狼が飛び出してくる。

 常に10匹以上で群れを作り、自分よりも強そうな相手に果敢に挑むという厄介な習性を持つアサルトウルフ。

 ハーティが森に着地するのを見て、わざわざやってきたんだろう。

 1体の強さはCランク程度だが、群れでの強さはAランクにも匹敵した筈だ。


「慌てないで、ローブ……ワタシを誰だと思っているの……」


 俺はメシアを庇う様に構え、ハーティが大きく息を吸い込む中……メシアは穏やかな声でそう言った。

 メシアが杖を地面に突いた次の瞬間、俺の前方に強烈な暴風は発生する。

 アサルトウルフを紙くずのように吹き飛ばし、次々と木に叩きつけて気絶させていた。

 その衝撃的な光景に、俺とハーティは目を丸くして驚愕するしか出来ない。


「お、お見事……?」


「気絶に留めて、ギリギリ生かしてあるから……能力値(ステータス)やスキル、盗めるよ……」


 メシアに言われてアサルトウルフを見てみると、確かに微かに息がある。

 もうCランクの強さじゃ能力値(ステータス)は何も盗めない。

 倒れているアサルトウルフの1匹に近づき、右手を当てる。


スキルを盗む(スキルスティール)


 ▼アサルトウルフから 【爪技(そうぎ)】 を盗んだ


「【爪技】か、良いスキルを盗めたな!」


 この【爪技】というスキル、本来は『武闘家』が習得するスキルだ。

 爪を装備して使うスキルなのだが、なんと素手でも使う事が出来る。

 能力値(ステータス)の低い人間が素手で使ってもあまり威力は出ないが、素の能力値(ステータス)が高くなった俺なら関係ない。

 しかも……まだまだアサルトウルフは大量に居る、全員から盗んだら相当熟練度が手に入る筈だ……!


「これでローブ、強くなれる……?」


「多分な。今までは【盗む】のカウンターと、能力値(ステータス)のゴリ押ししか出来なかった。けど今盗んだ【爪技】があれば、もっと強気に攻められると思う」


 アサルトウルフ達から【爪技】を盗み終え、その熟練度は大きく上がった。

 多くの派生技を覚える事が出来たし、ダンジョンマスターに挑む前に何度か試しておきたい。

 メシアの魔力量は桁外れではあるけど、使い続ければ必ず底がある。

 だからダンジョンマスターに辿り着くまで、道中の戦闘は俺がやるんだ。


「メシア、ここから先はなるべく俺が戦うよ。いや、【索敵】でなるべく魔物と遭遇しないように心がけるけど……とにかく、露払いは俺に任せて欲しい」


「うん、分かった……ローブに任せるよ」


「ああ! メシアはハーティの背中に座って休んでてくれ。ハーティ、乗せてやってくれないか?」


 俺がそう問いかけると、ハーティは軽く鳴いた後に乗りやすいように頭を下げる。

 メシアが背中によじ登って(またが)ると、ハーティはゆっくりと体を起こした。


「【索敵】範囲最大……良し、今度は魔物が来ている気配は無い。ハーティ、俺の後ろについてきてくれ。メシア、何かあったらフォロー頼む」


「任せて、しっかり気絶させるね……!」


 ハーティも任せろと言うように、短く鳴いてくれた。

 魔物だろうが罠だろうが、俺が必ず取り除く。

 待ってろよベイマー森林のダンジョンマスター、世界樹の枝は俺達が必ず盗んでやるからな……!

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