表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崖っぷち兄妹のダンジョン攻略記  作者: 生姜寧也
3章:兄妹激闘編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/98

第97話:最高額兄さん

 突然響いた第三者の声。

 菜那ちゃんが肩を跳ねさせ、瞠目していた。俺も同じような顔をしてるだろう。慌てて周囲を見回すが、誰も居ない。


 クロノス……か? 声は女性のそれだったが。あの仮面の下は……いや、影女も女性だった。人の姿に似ていて、声もそうだからといって……というかあの声、どこか聞き覚えが……いや、落ち着け。今はヤツの正体の考察をする時じゃない。

 なおもグルグルと周囲を見回す。だがやはり、姿は見えないし、声もあれっきり。


「兄さん……」


 不安げな菜那ちゃんが寄り添ってくる。


「……呼んでみますか?」


 それで姿を現されても、どう対処して良いか分からない。聞きたいことは山ほどあるけど、藪をつついて蛇を出す事態になったら、俺たちなんて瞬殺だ。

 好奇心、猫を殺す、だな。


「やめとこう。命あっての物種だ」


「そう……ですね」


 菜那ちゃんも(やや間があったが)納得してくれた。少し話題を変えよう。

 

「えっと……胸の印は本当に大丈夫?」


「え、は、はい。多分」


 そっと、シャツのネック部分を持って、自分で中を覗き込む。


「あ……み、見たいですか?」


「い、いや。だ、大丈夫だから」


 さっき前科を作ってしまっただけに、「そんなワケない」とキッパリ言いづらくもあり。


「……やっぱり、消えてます。4歳になった時も最初はあった気がするんですが、いつの間にか消えていて」


 お風呂に入れた時には、既に無くなってたんだよね。つまり、入れ墨や焼印のような半永久的な物ではなく。さりとてアザとも違うし、ホログラムで投影してるでもなく。

 やっぱ正体不明なんだけど……現状、害は無いようなので、放置以外に選択肢がないという。


「ダンジョン現象専門医みたいなのが居ればなあ」


 まあそんな人が居れば、まず政府が放っておかないだろう。学術的観点からの協力要請(強制)って感じで。


 ……ないものねだりをしてても仕方ない。俺たちは残務の処理に当たる。

 まずはフロア鑑定を改めて。




 ====================


 <農園ダンジョン4階層>


 残存モンスター

 七色ゼミ:0体

 ???:0体

 ビッグワーム:6体


 残存宝箱:0個

 残存素材:1個


 ====================

 



 やっぱり七色ゼミも全滅させてたみたいだな。155体を倒したにしては、レベルアップが渋かったから、恐らく1体の経験値は極少ということだろう。まあ群れてナンボだもんな、ああいう系は。


「フロア鑑定はこんな感じなんですね」


 菜那ちゃんが不思議そうに前方を見ている。俺と同じく、中空に画面が出てるんだろう。


「あ、残存素材がありますね」


「そうなんだよね」


 しかし、素材と言われてもな。

 俺たちはキョロキョロと周りを見渡す。と。焼け落ちた木々の合間にキラリと光る何かが見えた。指さすと、菜那ちゃんも確認できたようだ。


「あれは……糸……ですか?」


「ぽいね。行ってみよう」


 足元に転がる木々に気を付けながら、慎重に近づく。間近で見ると、確かに糸だった。ただ材質がちょっと普通と違う感じ。鋼糸ってヤツか。


 拾ってみる。銀光りする糸の束が、謎のバンドで結束されていた。だから誰がやってんの、こういうの。まあ楽で良いんだけど。


「鑑定してみましょうか」


「そうだね」




 ====================


 <ダンジョン鋼糸>


 ダンジョン鋼が加工を経て、糸状になったもの。ただ人工では難しく、天然モノを採る以外、現状は入手手段がない。布に織り混ぜて衣類を作れば高硬度の物が出来上がる。

 武器としても使用可。かなりの練度が必要だが、使いこなせれば強力。

 時価:880万円/500グラム


 ====================




 ヤベェの来たな……今までの最高換金額は、特上薬草の700万円だったけど、それを大きく上回る模様だ。


 菜那ちゃんも鑑定結果を見て、瞬きを忘れていた。だが、すぐに。


「売るより、装備に使うべき……ですよね」


 冷静な状況判断を告げてくる。


「そうだね。いずれ防具も整えようと言ってたからね」


 大宮か高崎辺りのショップに行こう、と。ただ、この鋼糸の値段を見ると……行ったところで無駄足になってただろうね。とてもじゃないけど、買えない。そう考えると、超ラッキーということになるが。


「けど、結局……作ってもらう工賃は要るだろうね」


 まあ素材持ち込みだから、800万円超ってことにはならないから、やっぱり儲けモンなのは間違いないけどね。


「うーん。農園で作れませんかね?」


「どうだろう」


 銃も木に実ったしなあ。可能性としては全然ある。


「取り敢えず、ワーム……倒すか」


「功労者というか……利用するだけ利用してって感じがして、良心が痛みますけど」


 菜那ちゃんの言うことも分かるけど、置いておくのもな。あるいは放置して、次に入った時どうなってるか検証するのも手か。いや、このワケ分からんダンジョンに置いておいて、変な進化を遂げられたりしたら目も当てられん。それで通れなくなったりしたら、もうアホとしか言いようがないし。


 というワケで、サクッと倒させてもらった。菜那ちゃんがライトで追い込んで、俺がバットで粉砕。比喩でも何でもなく、ダンジョン鋼の金属バットは粉砕級の威力だった。クラブだと少々苦労した相手だったが、本当に軽く振っただけで一撃死という。やっぱ時代はダンジョン鋼だな。


 俺たちはそのまま、他のドロップも回収。転移の魔石、モグラの皮、料理本、虫の羽。新規入手のアイテムは鑑定にかける。




 ====================


 <モグラの皮>


 文字通り、モグラのモンスターから獲れる体皮。かなり頑丈で、魔法耐性もあるため、装備品に転用するのが一般的。

 時価:80000円/100グラム


 <料理の本>


 ダンジョン食材を使った料理のレシピがいくつも載っている。不思議な魔法がかかっており、これを読んだ後、そのレシピ通りに作れば、何故か非常に美味な仕上がりとなる。

 時価:???/1冊


 <虫の羽>


 虫系のモンスターから獲れる、比較的レア度の低い素材。ただ汎用性は高いため、加工や合成などのスキルがあれば、面白いアイテムが作れる可能性も。

 時価:1000円/1枚


 ====================

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ