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崖っぷち兄妹のダンジョン攻略記  作者: 生姜寧也
3章:兄妹激闘編

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第85話:未登録兄さん

 銃は譲り合いの末、俺が持つことになった。正直、前衛の俺は盾役でもあるから、十全に使えるか微妙なところだが。まあ、ソロ攻略する時は間違いなく有用だよな。


「敵のタイプなんかに応じて臨機応変に使おう」


 基本は俺が持つ。けど完全固定する必要もない。後衛の菜那ちゃんが炎と銃の二段構えで戦った方が良い相手なんかが出てくれば、そうすれば良いという話。


「そうですね」


 菜那ちゃんも頷き、


「それで、特上薬草の方はどうしましょうか」


 手に持った金色に輝く激レア薬草に視線を落とす。

 悩みどころだよな。以前のように即換金とは踏み切れない。状況が変わりすぎている。


「自分たちで使う可能性も……」


「はい」


 今後も潜り続けるしかない状況。700万円はもちろん魅力だけど、命には替えられない。


「こっちも保留だね。タンス預金と考えておこう」


「それが良さそうですね」


 俺たちは銃だけ持って家に戻る。ていうかコレ、今もし家宅捜索されたら、銃刀法違反で捕まったりするの? まあ家宅捜索なんかされんけど。

 後で確認しとくか。確か登録しておいたら、持ってても平気らしいけど。とか思ってたら、


「銃はオワコンで登録するのがベターですね」


 菜那ちゃんがそんな提案をする。


「あ、ああ、うん。そうなの?」


 警察とか省庁とかじゃないのか。菜那ちゃんが、少し含みのある視線で俺を見た。


「……講習で佐藤さんが話してくれてたじゃないですか」


 あー、うん。申し訳ない。俺がダメダメなのか、妹がしっかり者すぎるのか。多分、両方か。


 いわく、最寄りのギルドに登録すると、そのままギルドが各所への登録を代行してくれるそうだ。


「買ったことにするか……」


「ああ、その問題がありましたね。登録時に購入証明とか言われたら」


「あー」


 非常にありそうな話だ。武器だもんな。


「取り敢えずは、情報を調べてみて……あ、いや。そうか。オワコンと農園を繋げて使えば良いのか」


「あ! その手がありましたね」


 以前に、おじもちの上にボアーを落として成敗、後に解除してオワコン側へ戻るという事をやった。即ち検証も終え、可能であると確定している状態だ。


「まあ……無登録使用なので見つかったら逮捕でしょうけど……」


「大丈夫。オワコンに人なんているハズがないんだから」


 そこは全幅の信頼が置ける。

 それに……まあやっぱり出処が明かせない以上、各所に登録しての正規使用は望めない。だけど、俺たちは最悪でもあと2回、時の欠片とやらを貰わなくちゃならない。さもなくば妹がマトモな生活を送れないのだから。


 そのためには、使えるものは何でも使わないと。

 ……たとえそれで法に触れるとしても。


「じゃあ、銃はここに置いたまま。それで今日は……」


「レベル上げに行きましょう」


「やっぱりそうだよね」


 七色ゼミも、速きモコ道も、また一段とレベルが高かった。対抗するには出来るだけ上げておきたいよね。


「オワコンの4層ですか? スカルソルジャー」


「うん。ただ銃を手に入れた今、割と楽に倒せそうではある」


 確かにソードは怖い。おデュラはんの時にも、それは思った。けど射程範囲外から狙い撃ちにしてしまえば。そう恐るるに足らないのでは、と。


「それじゃあ、行ってみましょうか」


「うん」


 今日は土曜日。菜那ちゃんもお休み、絶好のレベル上げ日和だ。

 俺たちは麓のスーパーで昼用の弁当を買って、一路オワコンダンジョンへと向かった。












 ガラガラの駐車場に車を止め、すっかり馴染みとなったオワコンギルドに入る。堀川さんと佐藤さんが出迎えてくれた。


「「こんにちは」」


「どうもです」


「お久しぶりです」


 兄妹で挨拶を返して、ギルド内を見回す。今日も今日とて閑古鳥。本来なら書き入れ時の土曜日なんだけどなあ。


「今日は? 何か換金? それとも潜っていくの?」


「はい。4層に行こうかと。それで遠距離の炎魔法が撃てる妹を」


 なるほど、と得心顔の堀川さん。まあ実際は俺も不法所持の銃をブッ放すんだけどね。


「気を付けてね」


「はい」


 2人で外へ。ダンジョンの入口へと繋がる階段を下りていくと。プツッと境界を越えた感覚。


「菜那ちゃんは伊勢崎の方でしか入ったことなかったんだっけ」


「はい。初のオワコンです。記念日ですね」


「そんな良いモンじゃないけどね」


 ただの過疎ってるダンジョンだ。


 1階、2階と過ぎる。ゴブリンを見て、菜那ちゃんも積極的に狩りたいとは思わなかったようで、微妙な顔をしていた。

 3層、ここは全部片付ける。最悪は4層から怪我して戻ってくるかも知れない。そんな時に(リポップがあれば仕方ないけど)、無駄な戦闘は避けたいし。

 ちなみに例の転移クリスタルには菜那ちゃんも触れて登録(?)しておいた。


「ミミズ……こんな大きいのが地上にもいたら」


「農家は廃業だね」


 軽口を叩き合い、緊張をほぐす。

 全滅させたところで、俺は農園を展開。すぐさまダンジョン銃を取ってくる。展開を終了させ、元のオワコン3層に戻った。


「よし、成功」


 やはり大丈夫だった。これで自由自在に物を取り出せる倉庫を手に入れたようなモンか。行軍も戦闘も、かなり楽になるな。


「ちょっと試し撃ちしてみようか」


 一応、地上でユルチューブの動画を見て、勉強はしておいたけど。もちろん実地は初めてだ。


 しゃがんで、片膝を地面につく。その上に腕を置いて固定。固定した方の腕を畳み、掌を銃の下側に当てて安定させる。そしてもう一方の手は引き金に指をかける。ライフルの膝射しっしゃと呼ばれる撃ち方だとか。


「ふう~」


 長い息をつく。自分の中から何かが抜けていくような感覚に襲われる。こちらもネット情報だが、この感覚は魔法を撃つときと同じ類らしい。要するに魔素をこめた弾の精製が出来たという合図だ。

 実は魔法の素養云々に拘らず、この魔素は誰でも持っていて、こういったデバイスにこめるくらいは出来るのだそう。弾を手に入れなくちゃとか思ってたけど、取り越し苦労だった。


「……」


 一拍おいて。グッと引き金を引いた。パーンと乾いた音を立て、次いでダンジョンの壁に小さな穴が開く。薬莢とかが残らないからアレだけど、確実に弾は出たらしい。


「これは中々」


「良さそうですね」


 謎に兄妹でセリフを分け合ってしまった。

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