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崖っぷち兄妹のダンジョン攻略記  作者: 生姜寧也
2章:兄妹雪解編

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第48話:肉片兄さん

 今度こそ、その場に深く腰を下ろす。それと同時くらいに、ファットボアーの体が煙になって消えた。今になって思ったけど、クロノスが宙に書いた文字も魔素を使ったモノだったんだろうな。どうやって魔素をそんな自由に操れるのかは、皆目見当もつかないけどさ。


「あ゛~」


 菜那ちゃん(4歳)に笑われた濁点つきの「あ」が喉の奥から出てしまう。

 モンスターの居た辺りに、ラードの塊みたいな物と、肉が落ちてる。肉の方は謎に上手いこと切り分けられているブロック肉だ。血とかも滴ってない。しかも竹皮の上に乗ってるので衛生面も配慮されてる。いや、誰が配慮してくれてんだよ。


「マジで科学者泣かせだよなあ、改めて」


 膝を叩いて、体を起こす。竹皮に乗った肉とラード塊を鑑定。




 ====================


 <ファットボアーの肉>


 ファットボアーを倒した際に高確率でドロップする肉。芳醇な味わいのサシが入った肉質は絶品と評され、世界中にファンがいる。かつては供給量が少なく、値段が高騰していたが、専門で狩る探索者も増えたため、需給のバランスが釣り合ってきつつある。

 時価15万円~30万円/1キログラム



 <ファットボアーの脂>


 ファットボアーを倒した際にドロップする脂の塊。肉と違って、食用には向かない。交雑用の素材。

 売却不可。


 ====================




 ラードは置きっぱで良いかな。交雑に使う以外に用途がないんなら、農園から持ち出す意味もない。交雑表は、後で菜那ちゃんと見よう。


 肉は当然ありがたく頂戴して帰る。竹皮にクルクルと包んで、リュックに入れてあったゴムバンドで縛った。色々と備えをして潜ったけど、甲斐はあったね。


「さてと」


 それで、こっからどうするかだよな。冷静になった今……思うに、ボアーはゴブリンの仲間だった説が濃厚なんよね。というのも、ゴブリンの備考欄に、別種族のモンスターと群れることもある的な記述があったのを思い出したからだ。

 ランダムボスというには弱いしな。まあ命の危機は感じたけど、それは俺のレベルが低いだけの話であって。


「周りにもヤバそうなのは居なかったし」


 それでも大事をとって農園に避難したのは、より上位のモンスターが擬態して隠れてるかも、って恐れたんだよな。まあその可能性も未だゼロではないものの。ゴブリンが何体も何体も自分よりレベルの高いモンスターと組むのが常態化してるなら、ネットでもっと騒がれてるだろう。正直、ファットボアー1体でも運が悪かったと見るべきではないかと。


「楽観視は危険だけど……」


 正直なところ、2層に戻れるなら戻った方が良いんだよな。というのも、他のダンジョンならいざ知らず、あのオワコンダンジョンだと最悪、職員の2人がギルドの窓から出入り口をガン見してる可能性もあるんだよな。そうなると、俺がこのまま庭のダンジョンから出て、チャリでギルドに戻ったら「え!?」ってなってしまう。なので、


「ダメ元でやってみるか」


 そういう結論に至り。

 まずは物置小屋まで行って、ゴルフクラブの替えをゲットする。曲がって折れかかってる功労者は申し訳ないが置いていく。


「農園展開解除?」


 伺うように宣言してみると……


「っ!」


 いとも簡単に地平が変わった。2層の広間に逆戻り。完全にマジックだな。まあダンジョン自体がマジック以外の何者でもないんだが。


「……」


 周囲を改めて見回す。静寂そのもので、やっぱり他の上位モンスターは居なさそう。

 

 すぐそこの階段を下りる。少しの安心感。どのダンジョンも階段は取り敢えず、安地あんちらしいからな。


 やがて階段の中腹、壁際に水色の光を見つける。いわゆる中間ポイント、転移魔法のポータル。これ自体が魔石で、原理は不明だけど、触れた人間の情報を記録するらしい。その情報を基に、体をバラして飛ばした後、転移先で再構築してるんじゃないか説もあって、普通にまあまあ怖い。けど死亡事故はおろか怪我や健康被害は今のところゼロらしい。


 実際にその水色の石(どういう原理か、宙に浮いている)に触れると、呼応するように淡く光った。これで俺の情報を記録したんだろうか。何の実感もないけど。


「引き返すか」


 一瞬、3層の様子くらい見ておこうかと欲が出たけど、まあ今日は流石にやめておこう。ボアー戦での心身の消耗が回復しきってない。


 そうして俺は来た道を引き返していく。ゴブリンを避けながら、1層まで戻る。スライムはリポップしていたらしく、面倒だがクラブを振り回した。最後の1匹を倒したところで、


『新田拓実のレベルが6→7になりました。スキル:腕力強化を獲得しました』


 ありがたい。さっきのファットボアーを倒した時に上がらなかったけど、まあまあ経験値は入ってたハズだから、そろそろかとは思ってたけど。




 ====================


 名前:新田拓実


 職業:Fランク探索者


 レベル:7


 スキル:ダンジョン農園LV2

     鑑定LV2

     交雑表

     脚力強化LV1

     腕力強化LV1


 備考:

 妹の乳房を20秒~30秒にわたり揉みしだき、何食わぬ顔で今日もダンジョンに潜る。


 ====================




 違うんです、アレは。ていうか、今までスルーしてたけど、俺の地上での生活まで知られてるって怖くね? ナビって一体なんなんだろう。




 ====================


 <腕力強化LV1>


 読んで字の如く、所持者の腕力を強化するスキル。パッシブスキルに分類され、ダンジョン内では常時発動している。物を持ち上げる力やパンチ力などが上がるため、持っていて損はない。

 成長限界はレベル7


 ====================




 これまた持ってて損はないシリーズ。

 というワケで。

 最後にレベルアップのご褒美もあったし、午前の部としては上出来のアウトプットを携え、地上へ帰還した。

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