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「「閃光」は話を受けるそうよ」
夜のいつもの報告会で、手紙の内容をセリアーナが話し始めた。
「私の専属になり、来年の帰還時に一緒にゼルキスに向かうんですって。アレク、セラ、お手柄ね。それと一度顔を合わせたいから、都合のいい日を教えて欲しいんですって。…明後日の夜でいいわ。セラ、朝にでも伝えて来て頂戴」
「すぐじゃなくていいの?」
「予定があるのよ。二つ名持ちとは言え、平民の為に予定を変えられないわ」
「ほほぅ…」
まぁ、確かに大物ではあるけれど、あくまで専属になるってだけだし、セリアーナにとっては他の予定を変える程じゃ無いのか。
マジかー…。
「そんな顔しなくても相手もわかっているはずよ。それよりも気になるのは、一人連れてきたいって書いてあるのよね。誰かしら…心当たりはある?」
首を振り、無いと言った。
まぁ、俺の知ってる事なんてやたら強くて一人であちこちに行ってるって位だ。
二人はどうだろう?
「「閃光」はサポートを雇ったり、現地で組んだりはするそうですが、基本的に一人で動くそうで、特定の誰かと組んでいるとは聞いたことがありません。ちょっと思いつきませんね…」
「私もです。…冒険者なのでしょうか?」
「ああ……確かにその可能性もあるわね。まあ考えても仕方ないわ。セラ、聞けるようなら明日聞いておいて頂戴」
「はーい」
それにしても誰が来るんだろう?
…奥さんとか?
◇
「普通だな…」
冒険者地区の中央広場側にある3階建てのボロ…趣のある宿屋。
ここにジグハルトが泊まっている。
壁に値段の書かれた看板がかかっているが、一泊銀貨2枚とある。
日本円で約2千円。
サービスの差はあるだろうけど、仮にも一国の王都でこの値段。
冒険者ギルドから一つ先の通りに入ってすぐの所に立っているから、冒険者にとっては便利なんだろうけど、それだけって感じだ。
俺達が王都まで来た時は、馬車の中でこそ【隠れ家】を使っていたが、それ以外では宿を一軒借り切ったり、領主の館に泊まったりと、お大尽っぷりだった。
やろうと思えばできるだろうに、本当に贅沢に興味が無い人なんだな。
「ま、いっか。ごめんくださーい」
「ああ?ガキが何の用だ?」
「ぉぅ…」
中は1階が食堂になっており、入ってすぐの所にテーブルが並びその奥に階段が見える。
そこから先が宿泊エリアなんだろう。
割とありがちな作りだ
ゼルキスでのお使いでいった事のある宿屋もこんな感じだった。
ただ、強面のおっさんにガンつけられることは無かった。
酒とカビ臭さが漂う中に、席に着いたおっさん達が数組いるが…西部劇の酒場のシーンとでもいうべきか?
どうしよう…決闘でもする?
「ミュラー家か…。ジグハルトか?」
奥からお爺さんがのっそり出て来たが、俺のエプロンを見て用件をわかったようだ。
手紙は宿の子供が届けていたと言ってたし、この宿の主かな?
「はい。ジグハルトさんにセリアーナお嬢様から返事を言付かっています」
「ふん。3階の赤い札のかかっている部屋だ」
そう言うなりまた奥に戻って行った。
「あ、はい」
ジグハルトの名前が出たからかおっさん達がヒソヒソ話しているが、この人達は何も聞いていないんだろうか?
ならただの無関係の怖い人か…。
◇
歩いて上ったら何回かこけてそうな階段を通過し3階に着いた。
2階の廊下で倒れている人がいたが、酒の臭いがしたし酔っ払いだろう。
この宿屋の方向性がちょっとわかった気がする。
それはさておき、ジグハルトが泊まっている赤い札の部屋は一番奥にあった。
角部屋…ちょっとプロっぽいな!
「入れ」
「ひょあっ⁉」
ノックを今まさにしようとしたところで、部屋の中からジグハルトの声がした。
じーさんも似たようなことをしていたが、やはり何かを感じているんだろう。
ビビらせおって…。
「お邪魔しまーす」
部屋にはいったが、窓を閉じているため薄暗い。
「おう。わざわざ朝早くに悪いな」
そう言いながらジグハルトが窓を開けた。
陽の光が入ったことで部屋の様子が見えた。
何でかパンツ一丁のジグハルトと…。
「ひゃっ⁉」
ベッドわきに置かれた椅子に座る、顔の左右半分が白と黒で分かれている凄いのがいた。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




