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冒険者って職業にはゴールと呼べるものがいくつかある。
一つ目は、クランを作り拠点を決め、その土地の防衛を担い、顔役となる事。
セリアーナが引っこ抜いたけれど、「ラギュオラの牙」は恐らくこれを目指していたんだと思う。
ドンマイ!だ。
ただ、新領地での開拓でそれを達成できるかもしれないな。
二つ目は、貴族に専属として雇われること。
各地のダンジョンがフリーパスで、聖貨の徴収も優遇されている。
これは個人でも目指せることから競争率は高いと聞く。
アイテムやスキルといったアピールポイントがあると目に留まる可能性が上がるため、それを狙って聖貨を貯めこんでいる冒険者も多くはないがいるらしい。
三つ目は貴族になる事。
何らかの功績を上げ、叙爵される。
領地を得られるかは別にしても、子供も貴族になるのでこれを目指す者も多い。
ただ、これは難しい。
何と言っても、そもそもそんな功績を上げる事態に遭遇することが狙ってできることでは無いし、仮に遭遇しても、解決できるかもわからない。
命がけだ。
とはいえ、強大な敵を倒した先にあるというのはわかりやすいのだろう。
冒険者に憧れる平民の男の子が思い浮かべる冒険者ドリームは、大体これ。
西部ではこれに傭兵が加わるが、大体似たようなものだ。
では、やろうと思えばこの三つ、どれも達成できるジグハルトの目指すものは?
「強さ?」
「うん。まぁ、強さって言うよりかは極めたいんだと思う」
「…?」
理解できないって顔だ。
でも仕方が無いと思う。
例えば騎士団や魔導士協会等各国の特色はあっても、個人での流派というのは無いらしい。
王都に来てから気づいたが、訓練場はあっても、個人道場は無かった。
武術大会なんかはあっても、仕官へのアピールや賞金目当てだったりで、最強を目指すって感じではない。
ジグハルトの冒険者としての活動はここ14~5年の事で、元は西部の傭兵で既にその頃から最強とか呼ばれていて、二つ名もその時に付いたものだ。
西部の情勢が落ち着き、戦場が無くなった事で冒険者に転向し、それ以来特に贅沢をするでもなく、各地のダンジョンの下層、深層を探索したり、魔王種の噂を聞けば出向いたりしているらしい。
戦闘狂の可能性も無いとは言えないが、魔物の特性や下層の様子や、あまり公にすべきではない、魔法についても色々教えてくれたし、短時間だが話した印象では、違うと思う。
自身を強化することにはまっている。
求道者とか達人って呼び方をするとかっこいいだろうか?
そんな印象だ。
で、自身の強化が限界まで行ってしまったら?
ゲームならレベルも熟練度も限界まで育てたら、次は装備品の選別だ。
この世界でならアイテムやスキルがあるが、アレクの情報によると、彼がこれまでアイテムやスキルを使ったという話は無い。
下層の魔物や素材をごっそり取ってきても浮かない顔をし、聖貨のせの字も出さなかった。
きっと得られなかったんだろう。
じーさんから聞いた、弱い者の方が聖貨を得やすいって話が本当なら、あそこまで強くなってしまったら彼より強い魔物なんてそうそういないだろう。
魔王種や、それこそ魔境の魔物位だ。
その辺を考慮して話を持って行けばいけるはずだ。
「…そういうものなの?」
結構熱弁を振るったんだが、うちのお嬢様の反応は今一芳しくない。
この世界では、今は個人より集団での強さを優先している。
価値観の違いだろうか…おのれ異世界。
「俺は少しはわかりますね」
どう説得を続けるかを考えていたところ、アレクが加わってきた。
「大抵の奴は剣を習ったばかりの頃は漠然と最強を目指したりしますが、そのうち折り合いをつけるもんです。…確かに「閃光」ほど強ければ最強を目指せるのかもしれません」
元少年だけあってこっちは伝わったのか、感慨深げに語る。
それを聞いたセリアーナはチラっとエレナを見るが、彼女は首を傾げている。
男女の差か身分の差かはわからないが、理解してもらえないようだ。
「まあ…いいわ。でも話は出来るの?」
「魔人の事を聞きたがっていましたし、そこは上手くやります。な?」
グッドだ、アレク。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




