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結局上層入り口の手前まで進んだが、やはりどこも人だらけで一度も戦闘をすることは無かった。
一応許可は出ているから探索届は上層までで出しているが、前行った時は強力な保護者が一緒だったが今日は一人。
どうしたものかと少々迷いはしたが、アカメの目があれば不意打ちを受ける事はそうそうないだろうし、気をつければ大丈夫なはずだ。
行ける行ける。
そう判断し、上層へ足を踏み入れた。
まぁ、浮いてるから踏まないんだけどね。
はっはっはっ……はぁ…。
【妖精の瞳】の検証としてはその判断は正しかったと思う。
生物の魔力や生命力だけでなく、魔法を発動する際の魔素まで見えるとは思わなかった。
上層に踏み入ってすぐの所で戦闘が行われていたが、そこで魔法が使われた事で気づくことが出来た。
魔法ってのは自身の魔力を使うが、より効率的に、かつ強力なものを使う場合は周辺の魔素を利用するらしい。
周辺の魔素を自身の魔力と同調させて、一気に吸い寄せ自身の魔力と混ぜ合わせ、魔法を発動する。
魔法が発動した後はまた魔素に分解されて辺りを漂うそうだ。
強力であればあるほどその規模は大きくなるそうだが、魔法を使える人でも難しく、発動に失敗するだけなら運がいい方で、場合によっては自爆することもあるらしい。
エレナも簡単には出来ないと言っていた。
それを連発できるルバンは凄いって話だが…。
上には上がいる。
◇
上層に入った俺は、シカ2頭を倒しつつさらに先を目指しコソコソ進んだ。
そして、広間に一頭だけポツンといたイノシシを見つけ、それを倒そうと突っ込みかけた時、突如魔法発動前の魔素が広間を埋め尽くした。
【妖精の瞳】はこの魔素と魔力を同調させた段階で見えるようになる様だ。
事態を把握しようと高度を天井まで上げ周辺を見渡すと、広間全体がカメラのフラッシュの様に一瞬だけ光った。
「動くなっ‼」
一瞬とは言え強烈な光に目が眩み、思わず背を向けようとしたところ、男のバカでかい声が広間に響いた。
【妖精の瞳】は俺の目で見ているわけじゃないから、目が眩んでいようが関係ない。
声のした方に向けてみると、とんでもないのがいた。
赤と緑の膜が、数センチどころか30センチ位はある。
道中見かけた魔物でも一番厚いので10センチは無かったはずだ。
…マジで?
と戦慄いていると、さらに先程以上の魔素が集まっているのがわかった。
……マジで?
程なく視力が戻り、魔法を使おうとしている男の方を見ると、俺に向け手のひらを突き出している。
動くなって事だろう。
天井に張り付いているし、いざとなれば【隠れ家】に逃げ込める。
折角だし、どんな魔法を使うのか見させてもらおう。
そういえばさっきの魔法は何だったんだろうか?
閃光弾なんてのもある位だし、目くらましも意味が無いとは思わないが、その割にはもうすっかり視力が戻っているのに、次が来ない。
どういうことだと思い、俺が狙っていたイノシシへと目を向けると、何やら地面から鎖の様な物が生え、体に絡みついている。
目を凝らしその鎖を見ると、魔力を感じる。
これか?
足止めをして、次に止めの一撃を放つ。
なるほど。
でも、こんな離れた所にいる一体だけの為に、あれだけの魔力を使うとは考えにくい。
こいつだけじゃ無く、他の魔物にもかかっているのかもしれない。
他の魔物も探してみようと辺りを見回したその時、カッ!と先程以上の光が走った。
そして間髪容れず、轟音が鳴り響く。
丁度雷が近くに落ちた様な感じだ。
「ほぎゃぁぁぁああぁっ⁉」
もちろん俺の悲鳴のデカさも負けていない。
丁度あの男に目をやったタイミングだったから、モロに光を見てしまった。
アカメの目と【妖精の瞳】の両方を発動していたから、光だけでは無く魔力も感じてしまったのかもしれない。
これは強烈だ。
でも、お陰でこの男が何者かわかった。
こいつが「閃光」か。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




