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ガチャを引いた翌朝、ダンジョンに潜るべく冒険者ギルドに向かった。
「おはよーございまーす」
人混みをすり抜け、受付前に辿り着き、挨拶をする。
「おう。セラ嬢か」
「聞いてはいたけど多いですねー」
記念祭の最中は、ダンジョンは閉鎖されていた。
死者が出た時に捜索する冒険者を集められるかわからないし、兵を動かすと観光客を刺激するから、それならいっそ閉鎖しよう!となっているらしい。
冒険者達もその3日間は休養日とし、次の冒険に向けて英気を養うそうだ。
で、次の冒険というのが、記念祭の終えた翌日。
つまり今日だ。
記念祭の間は依頼の受付も停止していたからだろうか、冒険者以外にも商人らしき者達の姿も多く見える。
「いつもの事だな。それと今年は少し事情があってな。『閃光』って知っているか?そいつが下層で採集に籠っているんだが、帰還するのが今日で、それ目当てだな。記念祭の間は本来ダンジョンは閉鎖しているが、あのレベルになると特別扱いさ」
「なるほどー」
「閃光」の二つ名を持つ、同盟内でも屈指の冒険者だ。
それだけならルバンと同格だが、より戦闘に特化しているとかで、貴族の招聘や叙勲なんかも断り戦闘に明け暮れているらしい。
最近は王都のダンジョンによくいるようで、アレクが一度会ってみたいとか言っていたが…。
俺もちょっと見てみたい。
「上層までか…いつもより人が多いから、誤射に気を付けるんだぞ」
探索届を出しダンジョン入り口に向かうと注意をされた。
まぁ、俺はするよりされる側だが、…あれは痛かった。
「はいはーい」
まぁ、気を付けるにこしたことは無いと頷き、手を振りダンジョンへ向かった。
◇
【妖精の瞳】
昨日引いた、耳に付けるアイテムだ。
発動すると、頭上に乳白色の球体が現れ、更にそれに瞳が開き、血走ったような模様が浮き出る。
ちょっとしたどころか、ガチのホラーアイテムだ。
効果は、まだ何とも言えない。
昨晩使用したところ、人体の輪郭に沿って、赤と緑の膜の様な物が見えた。
エレナが一番厚く…と言っても数センチ程度だが、次いでアレク、セリアーナの順だったことから、恐らく魔力と生命力がそう見えたんじゃないか?と仮説を立てている。
赤が魔力で、緑が生命力だ。
今日のダンジョン探索の目的はその仮説の実証検証だ。
魔力の有無だけならアカメの目でもわかるが、強弱、果ては生命力なんかは俺にはわからないし、もちろんそれが全てとは言わないが、それでも戦うか逃げるかの目安にはなる。
「そのつもりだったんだけど…まいったなぁ…」
冒険者が多過ぎて、魔物がいない。
皆はりきり過ぎだろう。
冒険者でも【妖精の瞳】の検証にはなるんだが…、魔物と違い戦うわけにはいかないから、強さが…。
「こまった…」
普段は人がいない俺のお気に入りのポイントまで人がいた。
何というか、ネトゲのイベント期みたいな感じだ。
「おはようございまーす」
どうしたもんかと思っていたら、丁度魔物を倒し終えた冒険者パーティがこちらを見ており、その中の一人と目が合った。
折角だし情報収集だ、と両手を上げて近づいていく。
「おう。確かミュラー家んとこの子だよな?」
「よくご存じで。今日は人が多いですねー」
「皆祭りで金使ったからなー…。それに何日もサボってたから体が鈍ってるから、浅瀬で軽く慣らしをしたいだろうよ」
「あはは。うちのアレクもお酒ずっと飲んでましたよ」
中々気の良い人で、色々話してくれる。
そうか…。
数日程度とは言え、命がかかっているんだ。
いきなりハードな狩場に行くんじゃなくて、楽な所に人が集まるのも仕方ない。
リハビリは必要だよな。
「おっと、終わったみたいだな。じゃ、俺達は行くぜ」
後ろで他のメンバーが魔物の処理を行っていたが終えたようだ。
「はーい。それではお気をつけてー」
「おう。お前さんもな」
互いに手を振りわかれる。
平和な世界だ。
しっかし、どうすっかな…。
話を聞いた感じ今日は何処もそんな感じみたいだ。
一応奥まで行ってみるかな?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




