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「ただいま」
【隠れ家】に荷物を置き、外へ出るとアレクが目隠し代わりに立っていた。
もっとも、入って、置いて、出る。
数秒だ。
「おう。早かったな」
「ドアの横に置いただけだからね。っと、ありがと」
俺が肩に座ったのを確認し歩き始めた。
とりあえず商業地区は一通り見て回ったが、これからどうするんだろうか?
「アレク!」
おや?
「ルバンか」
声のした方を見るとルバンが手を振り近づいて来ていた。
恰好は剣や鎧こそしていないが、普段の冒険者スタイルだ。
この人一応貴族なんだけどいいんだろうか?
「何?友達になったん?」
前はアレクシオと呼んでいたが今日はアレクだ。
一緒にダンジョンへ行く事が無かったが何かあったんだろうか?
「あー…こいつのとこも来年からウチに来るからな。同僚ってやつだな」
「ぉぉ~…」
そういえば魔人のインパクトで忘れていたが、もともとそういう話だったな。
「セラ嬢は珍しい恰好だな。よく似合っているよ」
「ありがと…」
ちゃんと褒めるあたりこいつは紳士だな。
「で、メンバーはどうした?1人なのか?」
何となく一緒に歩いているが、アレクの言葉にそういえば、とあたりを見るが3人の姿が無い。
一緒に見て回らないのかな?
「俺は少し冒険者ギルドに用事があってね。3人は場所取りに行っているよ。そうだな、お前なら聞いているかもしれないが…」
そこで区切り、辺りを憚るように声を潜める。
「今日の処刑で神国の国宝の【断罪の長靴】。あれが使われるそうだ」
「「…」」
「キーラの家経由で入ってきた情報で、まず間違いない。俺も話には聞いたことがあるが…どんな代物かはわからないが、見て損は無いはずだ」
それはどうかな…?
「それはもうすぐなのか?」
「ああ。処刑は1時からだが、急遽ねじ込まれたそうだからな。恐らく最後の方じゃないか?」
ルバンが時計塔の方を見ながらそう言うが、さてどうしよう。
「俺は一応行っておいた方がいいな。セラ、お前はどうする?」
「…止めとく」
「そうか。なら先に屋敷に行こう」
「セラ嬢には少し刺激が強いか。アレク、後で合流しよう」
そう言うなり冒険者地区の方へと向かっていった。
俺達は貴族街へだ。
途中の広場で朝には無かった舞台の様な物が出来ているのを横目に通り過ぎる。
処刑に使うんだろう。
ラウド商会の人間を始めとした外国人の処刑が行われるのは聞いていたんだ。
その為に本店のあるルード王国から引っ張って来たそうだし。
敢えてこの日に行うことで、国威高揚とかそういう狙いがあるんだろう。
俺はそれを野蛮とは思わない。
ただ…。
「踏むのかな?」
「踏むんだろうな」
昨晩、城で披露するから寄こせと言われ【緋蜂の針】をセリアーナに渡した。
てっきりパーティーか何かでの事と思っていたが、使わなければただの赤いブーツだし、そりゃ使うよな。
しかし…多少なりとも俺も関わっていたことだし、何というか尻拭いを押し付けてしまった様な申し訳なさを感じる。
「帰ってきたら労ってやれよ」
察したのかアレクが口を開く。
よく気が付く男だ。
◇
民衆の前での処刑の執行役。
その大役を務めたセリアーナはさぞ疲労したろうと思っていたのだが…。
杞憂だった。
アレクに処刑の様子を聞いたところ、嬉々として踏みつけていたらしい。
今後開拓を主導していく立場だし、力を見せつける事は悪い事じゃ無いんだろうが、俺とはメンタリティーが違い過ぎる。
あぁ、でも、エレナと揃って酔いつぶれてベッドで寝ている。
普段は、酒を口にしてもここまで酔うことは無いのだが、ハイになり過ぎていたんだろうかね?
明日にでも【ミラの祝福】を使ってやるか。
…二日酔いに効くかな?
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・11枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




