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「あら、これは『ミラの選択』ね」
「ほ?」
夜、謝罪の品を皆に見せていたのだが、絵を見るなりセリアーナはタイトルがわかったようだ。
「有名な絵なの?」
赤いドレスを着た女性に、左から王子様っぽい男と煌びやかな恰好のおっさんと裸のマッチョが跪いている絵だ。
何じゃこりゃ?
以外の感想は持てなかったが…お高いのかな?
「そのモチーフが、よ。成人した女性に家族から贈られることが多いわ。権力や財力に惑わされないようにって意味ね」
「ほうほう」
なるほど。
教訓めいたものなのか。
この右のマッチョは何なんだろう?
わざわざ言わなかったって事は、不貞とか?
「でも、なんで俺に?」
「絵画としても有名だし、【ミラの祝福】の事を聞いたからじゃない?お前相手に、それも謝罪の品で意味を込めるほど馬鹿ではないでしょう」
中々辛辣だが、まぁ確かに。
「そういえば明日からの記念祭はお前はどうするの?私とエレナは城へ行くけれど」
「ん?部屋でゴロゴロしとくよ?」
「…平民は祭りを楽しみにするものじゃないの?」
まぁ、王都全体がちょっと華やいだ雰囲気だよね。
ルトルの街にいた頃もそんな感じだった。
でも…。
「この時期っていつも酒場で朝から晩まで皿洗いさせられてたんだよね。全然客足は減らないし…こいつら死なねぇかなっていつも思ってた」
何か思い出したらムカついてきたな…。
「…アレク、貴方明日連れて行ってあげなさい」
「わかりました。酒は飲めませんね…」
肩を竦めつつも頷くアレク。
「来年にはゼルキスに戻るんだし、王都の記念祭を見るのはもしかしたら最後の機会かもしれないわ。連れて行ってもらうといいよ」
嫌そうな顔をしている俺にエレナが諭すように言ってくる。
まぁ、最近やらかしたばかりだし、ここは大人しく聞いておくか。
「ああそれと」
祭りに行くことを了承しようとしたら、何かを思い出したようにセリアーナが話し始めた。
「明日はドレスを着ていきなさい。謝罪の品なのだからちゃんと使わないと駄目よ?」
「……は?」
◇
正式名称は知らないが、要は建国記念のお祭りだ。
全部で3日間あり、王城では国宝である神剣が披露されたり、色々なイベントがある。
が、それを見るのは貴族や外国の要人、後は何か功績をあげ招待された者のみ。
あくまで貴族のイベントだ。
では、平民は?
そちらのフォローもしっかりある。
この3日間、普段は何回かの審査を経ての許可を取る必要があるが、この期間は申請するだけで露店を出せるようになる。
さらに、これは露店だけでなくすべての店が適用されるそうだが、この期間の売り上げは税金が免除されるらしい。
どんな徴税システムなのかわからないが、1つ分かったことがある。
俺が忙しかった理由はこれか。
「どうかしたか?」
ぐぬぬ…と唸っていたのが聞こえたのかアレクが声をかけてきた。
「いや、人が多いなって」
貴族街から出て商業地区に来ているが、普段食事を出している店はもちろん、そうでない店も軒先で何かしら広げている。
それを目当てに、まだ昼前なのに凄い人通りだ。
「流石に他所の領地からは来ないだろうが、王都圏から集まるからな。降りるなよ?はぐれたら見つけられない」
「はいよ」
ちなみに俺はアレクの肩に乗っている。
赤いドレスに赤い帽子、赤い靴。
ご令嬢スタイルだ。
昨晩聞いたのだが、ミラは大体赤い服で描かれているらしい。
今俺が着ているのはどれも頂き物だが、そこらへんも絡めているのかもしれない。
短い時間でよく用意出来たものだ。
彼らの誠意は伝わった。
とは言え全身赤尽くめ。
ド派手だ。
いつも以上に人が多い中でこの格好での【浮き玉】の使用は目立ち過ぎるからと、許可が出なかった。
結果、【浮き玉】を抱えてアレクの肩に座る事になった。
【浮き玉】で重さは無いから負担は無いと思うが、世話をかけてしまう。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・11枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




