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誘拐事件から3日が経った。
その間に判明したことがいくつかある。
まず俺を攫った連中が拠点にしていた建物と村。
村自体は関係ないものの、取引用の魔物を調達する狩場の一つだったらしい。
帰還したその朝に騎士団から1部隊出動し、その場で捕縛に成功した。
連中は、冒険者では無く西部の傭兵で、もともと春の入学シーズンに商人の護衛としてメサリアにやって来ていた。
その後いくつかの狩場で魔物の捕獲をし、王都に運び、さらに記念祭が終わった後にまた護衛として西部に帰還する予定だったらしいが、魔物を捕獲し王都に運んだまではよかったが、肝心の魔物の取引が潰される事態になり、予定が空いたところ、ラウド商会より俺の監禁を依頼されたそうだ。
魔物の捕獲自体は犯罪では無いが、王都への持ち込みや俺の件もあり、彼等も何らかの罪に問われるだろう。
バルゴ達はまだ見つかっていない。
やはり戻らずそのまま姿をくらました様だ。
【隠れ家】のことを明かして録画を見せれば証拠になるかもしれないが、それは止めておいた方がいいだろうとなった。
俺も中に入れたくないしそれでいいと思う。
恐らく教会経由で加わったのだろうが、この件には教会も乗り気ではなかったようで静観しているようだし、俺を狙ってくることは無いだろう。
そしてルード王国だ。
うん。
彼らは、まぁ…災難だとしか言えない。
俺の名前を記したのは、確かにラウド商会の息のかかった者がそそのかした様だが、セリアーナが俺を使い貴族と縁を深めている事を知り、その援護になるからと深く考えずにいたらしい。
第4王子の婚約相手はまだ公表していないので、既にセリアーナに決定している事は知られていないが、彼女が最有力候補なのは周知の事実だ。
仮にそうならなかったとしても、ミュラー家と繋がりを持つのは益になるって判断したのだろう。
まぁ、こんなことになるとは思いもしないよな…。
ルード王国としては、ミュラー家とはもちろんメサリア王国とも揉めたくない。
例えば俺の捜索や救出、犯人の捕縛等に協力できれば、まだ面目も立ったし挽回も出来ただろう。
しかし、俺は自力で帰還するし早朝には騎士団が出動するしで、何もできなかった。
なら後は平謝りしかない。
「どうぞ、お納めください」
長い謝罪の言葉に飽きてきたが、ようやく終わった。
ちらりとじーさんを見ると頷いている。
受け取って問題無いらしい。
「はい。ありがたく頂戴します」
じーさんの執務室の応接スペース。
そこの机に広げられた俺への謝罪の品。
ドレスに宝石にお菓子に、デカい絵。
…現金は無いのか。
「我が国も貴国と事を構える気は無い。調査にはまだまだ協力してもらうが、まあ悪いようにはならんだろう」
鷹揚に構えているじーさん。
「ありがとうございます。協力は一切惜しみません」
頭を下げ即答える、相手。
平身低頭というやつだ。
この人、大使なのか外交官なのかどれに該当するのかわからないが、本国ではかなりの地位にいる人らしいんだけど…、前当主とは言えじーさんの今の爵位は男爵なんだよね。
にもかかわらず、この腰の低さ。
国力の差が出ている。
逆に俺が申し訳なくなって来る。
早く終わってくれないかなぁ~…。
◇
「堅苦しいのは苦手か?」
「どうにもねぇ…」
謝罪が終わり相手は帰って行った。
俺達は見送りもせず、そのまま部屋に。
上下というか、白黒を明確につけるためらしいが、どうにもこういうのは…。
孤児院の院長とかみたいに、明確に敵意を持てれば気にならないのだが…お腹痛い。
俺、意外と小者なんだな。
「なに、そうそうあることでは無い。しかし、随分な品だな。ルードも話が国同士になる前に終わらせたかったのだろうな」
「大人は大変だねぇ~…お菓子はみんなで食べるとして、後どうしよう?」
ごそごそ謝罪の品を漁りながら利用法を考える。
「腐る物でも無い。【隠れ家】か?あそこに収納しておけばいい。酒があれば私がもらってやるのだがな」
箪笥ならぬ【隠れ家】の肥やしか…。
あげる人もいないしどうすっかな。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・11枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




