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「…むぐっ⁉」
何かガツンと来た気がする。
脇腹が痛いしぶつけたかもしれない。
ベッドから落ちたんだろうか?
いつ寝た…?
いやまて、んなはずないぞ?
「むー」
これ、猿轡か?
もしかして手足も縛られてる?
それにこの感触…袋に入れられているんじゃ…。
ちょ…ちょっと何があったか思い出そう。
セリアーナの招待されたパーティーにアレクとエレナも一緒について行ったんだよな。
北の外国人居住地区にある、貴族の屋敷だった。
教会もあるしそっちには近づくなって言われていたから、今まで遠くから眺める程度だったけれど、初めて行ったが、大きい建物だらけだった。
他国の王都に屋敷を構えるんだから、貴族はもちろん平民も富裕層なんだろうと考えれば納得できる。
で、肝心のパーティーはルード王国の王家が所有する屋敷で行われた。
会場で最初は何組かに紹介されたけれど、それが終わったら控室でぼーっとしていた。
ただ座ってるだけってのも退屈だったから、最近身に付けたアカメの能力のオン・オフを切り替える練習をしていて…。
確か屋敷の使用人に呼ばれたんだよな。
アレクが呼んでいるって。
それで、その人について行って…。
あれ?
これ…誘拐?
ガタゴトしているし、馬車か何かか?
どっ…どうしよう⁉
外国の貴族の屋敷へ行くから、とアイテムなにも身に着けていないし、ピンチ⁉
「むぐっ⁉」
い…痛い。
脇腹がズキズキ痛む。
これ折れてるんじゃなかろうか?
【隠れ家】にはポーションとか置いて……。
えーと…。
オフにしていたアカメの能力をオンにし、周りの様子を探るが、馬車を操っている人も含めて5人いるが、皆少し離れた所で馬に乗っている。
馬車の中にはいないのか。
まぁ、むぐむぐ言ってても何もなかったから、そんな気はしたが…。
それなら気兼ねなく【隠れ家】を使える。
◇
【隠れ家】を発動し中に無事逃げ込むことが出来た。
ついでに【祈り】も発動する。
このレベルの怪我だと気休め程度だろうが、やらないよりはずっとましなはずだ。
「むぐ~…」
とりあえず、拘束をどうにかしないといかんね。
さっきからアカメに指示を出しているが、どうにもうまくいかない。
魔力が通っていないと触れる事は出来ないらしいし、仕方がないか。
魔力は硬いものは通しやすく、柔らかいものは難しい。
俺も金属なら時間はかかるが何とか出来るようになったが、どうせ何を食らっても致命傷だし、と地味な訓練をサボっていたのが仇になったか。
「んぐ」
目に力を込め部屋の奥を見ると、魔力のこもったアイテムが見える。
ブックスタンドにしている魔鋼まで見えた…あれ魔力こもってんのか。
「んぐっんぐ…ぐっ⁉」
アイテムを置いてある棚は部屋の奥だ。
何とかそこまで行こうと、芋虫みたくズリズリ這ったが…これは脇腹に響く。
それに袋が滑っているのか全然進まない。
…転がるか。
「んぐぐぐぐっ…」
ゴロゴロ部屋の奥を目指し転がっているが、これは痛い。
手足を縛られているから上手く衝撃を殺せないし、顔は打つし…。
「むふー」
鼻から冷たい何かが垂れているが、気にしない。
何とか棚の前に辿り着けた。
アカメ君、咥えて持って来てくれよ…!
アイテムなら魔力がこもっているしいけるはず、と念じる。
これが駄目ならキッチンまで転がって包丁にチャレンジしないといけない。
「‼」
上手くいった!
【影の剣】を咥えたアカメが手元に戻って来て、そのまま指にはめようとしている。
凄いぞ、アカメ!
はまったことを確認し、危ないからアカメを影の中に隠れさせる。
【影の剣】は魔力に潜り込んで断ち切る。
ただ、魔力抜きでもやたら切れる刃だ。
【影の剣】を伸ばし、スパンッ!スパスパスパッ!と袋と縛っているロープを切る。
「わっはははははっ‼」
猿轡を切る時はちょっと怖かったが、自由の身だ!
脇腹に響くが思わず高笑いをしてしまう。
「は~…痛い痛い……なるほど」
自分の格好を見るが、パンツは穿いているが、それだけだ。
珍しく履いていた靴下すらない。
アイテムでも探していたのかな…?
しかし…メイド服駄目にするの、王都に来てからこれで3着目か。
俺に非はないと思うが、流石に申し訳なくなってくるな。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚




