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「セラ君、どうかしたのかい?」
施療を受けるエリーシャを横目に、セリアーナとお茶を楽しんでいたリーゼルが、俺に様子を尋ねた。
鏡が無いからわからないが、きっと何とも言えない顔をしているはずだ。
「いや…なんというか…」
この状況を上品に伝える語彙力が俺には無い。
どうしようか…。
俺の葛藤を察したのかセリアーナがリーゼルに目配せをしている。
「何かあるのなら言葉は気にせず言ってくれ」
多分彼はエリーシャに何かあるのでは?と考えての発言なんだろう。
あるといえばあるが、ちょっと違う。
「このねーちゃん、さっきからオレの尻ずっと揉んでんだよね。どーにかしてくんない?」
「……姉上?」
愕然としているイケメン。
その隣で口を隠し笑いを堪えるセリアーナ。
エリーシャ付きのメイド達は微動だにしない。
そして、この状況でも彼女は手を止めない。
そんなにこの薄い尻を揉んで楽しいんだろうか?
「失敗しても知らないぞー?」
‐⁉‐
流石にそれは嫌なのか一瞬体全体が震えたと思ったら、手が止まった。
◇
「退屈だったのよ」
施療を終えた後も何故か体勢を変えず、膝枕のままだ。
お姫様的にこれは有りなんだろうか…?
で、なんで尻揉んでたの?というリーゼルの問いの返答がこれだ。
「まぁ…口と目を閉じといてって言ったからね…」
気持ちはちょっとわかるから一応フォローをする。
リーゼルは額に手を当てている。
何となく彼の立ち位置というか、力関係が見えてくるね。
色々振り回されているんだろうな…。
「姫様、こちらを」
セリアーナにもきっと振り回されるんだろうと、リーゼル君を少々憐れみを込めた目で見ていたら、メイドの片方が手鏡を持ち、エリーシャに見せていた。
「あら!全然違うわっ!」
俺にはどこが変わったのかよくわからないが、満足頂けたらしい。
声も弾んでいるし、メイド達も喜んでいる。
チラっとリーゼルに目をやれば、サッと顔をそらした。
こいつもわかってねーな。
「リーゼル……。エリーシャ様、最近睡眠をとられていなかったのですか?」
「今年は学院に2人も王族が入って来たでしょ?記念祭は例年よりも参加予定者が多くて、覚えておく事が多いの。ただでさえサリオンとの繋がりを求めて挨拶に来るものが多いのに…お陰で寝る暇が無いわ」
睡眠不足だったのか。
チラっとリーゼルを見るとまたも顔をそらした。
やっぱ気づいてなかったのか。
「リーゼル。お前は大丈夫なの?セリアとの婚約を発表していないから、挨拶が多いでしょう?」
「他国の商人は自国の姫君を推そうとしていますが、他は静かなものです。僕の事は様子見で、姉上達の動向に関心が集まっていますね」
「セリアは?貴方も縁談の一つや二つ来ているでしょう?」
「確かにあるようですが、私の場合はまずおじい様やお父様に行きますから…」
「忙しいの私だけじゃない…」
仲間がいないことに、口を尖らせぼやくエリーシャと、それを笑う2人。
将来小姑関係に不安は無さそうだ。
ところで、足が痺れてきたんだけど、まだ退いてくれないのかな?
◇
「今日は姉上が済まなかったね。セラ君」
「いえいえ。大丈夫です」
帰りの馬車の中、リーゼルが今日のことを謝罪してくるが、それに軽く答える。
首に下げている財布がいつになく重たい。
お金がいっぱいである。
施療は他と変わらず5枚で受けたのだが、結果に満足したリーゼルが更に5枚の上乗せと、エリーシャも5枚くれた。
合計15枚。
散々ケツ揉まれた甲斐があったってもんだ。
急に決まったことでこの額をポンと出すなんて、王族ってお金いっぱい持ってんだなと思ったが、王子・王女それぞれに年間予算が割り当てられており、庇護する芸術家や職人への支援や、王領地の視察時に使ったりするのだが、今年は学院があり大分余り気味だとか。
余った分は返却することになっており、折角だから使ってしまおうという事らしい。
豪勢な事だ。
とは言え、王族はもうご勘弁願いたい。
リーゼルの執事カロスや、エリーシャ付きの2人のメイドは、効果はわからないがアイテムを持っていた。
そんなのがずっと俺の動きを注視しているのだ。
もちろん変なことをするつもりは無いが、流石に気疲れした。
ちょっと何日かのんびりしようかな。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚




