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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
17章・ようやくダンジョン探索再開!

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「ここはいい! 行ってくれ!」


「おう!」


 何かに気付いた男は俺にそう言い、俺も即座に応えて彼のいう方に向かって【浮き玉】を発進させた。

 ……そんなカッコイイやり取りをしたはいいが、俺はまだ何が起きたのかを把握していない。

 俺が気付けない事に気付いたってことは、彼もさすがは腕利きってとこか。


 さて、そちらに向かうよりも、まずはとにかく状況を把握しようと高度を上げた。

 この南の戦場では、今もあちらこちらで混戦が繰り広げられているが……そのさらに南か。

 あの辺は一の森の端にあたる場所で、ちょうど一の山から流れてくる川があるし、およそ魔物が溜まる様な場所でも無いが……。

 だが、下を見るといくつかのパーティーがそちらを警戒しているのか、南寄りに移動をしているし……何かが来るのは間違いなさそうだ。


「あ、リーダーもいる……ん?」


 そちらに向かいながら周囲の様子を探っていると、リーダーの姿を発見した。

 とりあえず彼の下に降りて話を聞こうと考えて、高度を下げ始めたところ、森の端に何やら暗い光点がいくつも見えた。

 緑と赤は【妖精の瞳】によるものだが……あの暗い光は……!?


「やばい! リーダー! 魔王種! こっち来た!」


 久々な上に辺りが暗いから判断するのに少々時間をかけてしまったが、あの黒い光。

 あれは魔王種だ。

 なんだよ!?

 こっちに来ないんじゃなかったのか!?


「ああ……この感じは間違いないな! おいっ! デカいのが来たぞ!」


 やっぱリーダーは魔王種との戦闘経験があるようだ。

 彼は、魔王種を倒したら領地でどんな待遇になるかを、周りの者に大声で伝えて鼓舞していた。

 その甲斐あってか、不意打ちに近い魔王種の登場にも、動揺せずにいる。


 俺もちょっと落ち着こうかな……すーはーすーはー……。


 見た感じ、やはり予想通りオオカミの魔王種で、俺が以前倒したことがあるのと大差ない強さだ。

 その代わり、取り巻きのオオカミは率いる魔王種に近い強さを感じるが……数は少ない。


 あの時は俺の方が不意をついて、強さも何も発揮する前に倒したから、オオカミの魔王種とまともに戦うのは今回が初めてだ。

 俺の方はいつもの仲間も側にはいないし大分勝手は違うが……。


「迎え撃つぞ!」


「「おう!!」」


 ゴツイ盾役たちを前面に置いた布陣を済ませて、迎撃の合図を出すリーダーとそれに応える周囲と、冒険者たちはやたらやる気に満ち溢れている。

 これ俺の出番あるのかな……ってくらいだな。


 こちらの戦意を感じたのか、魔王種もやる気になったようだ。

 自身が先頭に立って取り巻きを率いながら進路をこちらに取った。

 アカメたちの目では色まではわからないが、取り巻きはオオカミ種の中でも随分体が大きく思える。

 むしろボスオオカミの方が体が小さいんじゃないか?

 強さも大差無い。

 これは取り巻きの方が厄介そうだな。


 俺は見えているが、下の連中はどうだろう。

 上から明かりの魔法でも使うべき……。


「っ!?」


 冒険者たちの前方上空が急に明るく光り、思わず目を閉じてしまう。

 俺が使わずとも、織り込み済みだったか。

 下の連中が魔法を使ったんだろう。


 丁度俺が浮いている場所と同じくらいの高さに浮かぶいくつもの明かりに、感心してしまう。

 明かりの魔法は初歩的なもので、魔法の訓練を積んでいない者でも勘が良ければ使う事は出来る。

 それでも、これだけ揃えているんだから大したもんだ。


「はぁー……これ本当にオレのやる事なさそうだな……」


 もっとも、何も無いならそれが一番だな。

 下手に参戦しないで、このまま上に留まっておこう。


 さて、魔法で照らされた範囲に魔王種の一団が侵入した。

 向こう側にも動きがあり、そこまで先頭を駆けていた魔王種が取り巻きの中に納まり、代わりに一際体の大きいオオカミが先頭に立った。

 そして、こちらに向かってさらに加速する。


 魔物は同じ種類でも強力な個体ほど体が大きくなる傾向にある。

 先頭もだが、この取り巻きたちはどれもウシくらいの大きさはあるし、魔境基準のオオカミでも強力だ。

 恐らく、体当たりでこちらの陣形をぶち抜いて来るだろうが……下の連中には【祈り】をかけてはいるものの、耐えられるかな?


 だんだん不安になってきたので、念のため上空で【影の剣】と【緋蜂の針】を発動して、下を見守っていた。

 そして、いよいよ先頭と盾役がぶつかり……はしなかった。


 魔法か加護か恩恵品か。

 ぶつかる瞬間に先頭のオオカミの足元が弾け飛び、その衝撃でバランスを崩し地面に転がった。

 相当な速度が出ていただけに、そのまま盾役の奥に控えるパーティーの下まで滑っていき、そしてその彼等の槍でブスブスっと……。

 先頭のオオカミ以外も転げこそしなかったが、足を止めてしまっている。


 武器である速度を活かした突進をあっさり防いでしまった。

 これは本当に呆気なくいくんじゃないか……?

 いや、でもまだ油断はしちゃいけないな。

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】・15枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・33枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・9枚

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― 新着の感想 ―
[一言] さすが鍛えられてるなあ
[良い点] 更新乙い [一言] 倒しきるまでは油断大敵
[気になる点] 魔王種って強いんか弱いんかわからんな ピンキリなのかね?
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