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「……わぉ」
リーゼルの執務室の中で働く者は、昨日よりもさらに増えていた。
冒険者ギルドに商業ギルド……後はいつもは本部に詰めている騎士団の連中かな?
騎士団の制服を纏ったおっさんたち……おっさん率高し。
セリアーナとエレナもいる事はいるが、冒険者ギルドのおっさんたちと何かの協議を行っている。
入室した際にこちらに一瞬顔を向けたが、すぐに協議に戻っていた。
忙しそうだ……。
「姫、あちらへ」
おっさん率の高さに気圧されて、入ってすぐの所で動きを止めていると、テレサが奥の応接スペースを指した。
そちらでは、ジグハルトとフィオーラがテーブルに地図や何かの資料を広げている。
彼等もお仕事をしている様だが……周りに人はおらず、スッキリだ。
「おはよー」
テレサは何か用事があるのか奥の部屋に行き、俺だけとなったが、近付き彼等に向かって挨拶をすると、2人も顔を上げて返してきた。
「よう」
「おはよう。でも、もう昼過ぎよ?」
「オレはさっき起きたの……」
フィオーラのつっこみを躱して、空いている席に座った。
「これ、リアーナの地図?」
テーブルの上に広げられた地図は、街の位置と森、街道が載っているリアーナの簡易地図の写しだ。
よく見ると、領都やアリオスの街の周辺の何ヵ所かに印がつけられている。
この位置は確か……。
「あ、魔物の群れがいる所の予測位置か」
森の奥の少し開けた場所だったり、水場があったり……群れが留まりそうな位置だな。
俺自身は行ったこと無いが、冒険者ギルドで魔物に気を付ける様にって言われているポイントだ。
「よくわかったな。まあ……魔物相手じゃ攻め込むわけにもいかないが、それでも大体の警戒の目安にはなるだろう? 襲撃を凌いだ後に調査隊を送りもするしな」
「ほうほう……ウチの方はまぁ……いいとして、アリオスの街の方は大変そうだね。……アレク大丈夫かな?」
領都が警戒するのは、東の拠点の1キロ程南にある開けた場所だ。
一の山から繋がるルートですぐ側に水場もあり、よく魔物が集まる場所と言われていて、狩りのポイントにもなっているが、反面襲われやすい場所でもある。
さらに、多少規模は小さくなるが、魔物が群れるのに丁度いいポイントへのアクセスもいい。
襲撃時にボスが留まるとしたら、ここが最有力だ。
ただアリオスの街側は……北東部に広がる森の何ヵ所もそのポイントがある。
どこも条件は同じようなもので、これを全部警戒するの大変じゃないかな?
「あいつなら上手くやるだろ。なあ?」
だが、心配する俺に対しジグハルトは気楽な様子で答えた。
そして、地図に夢中になっていて気づかなかったが、いつの間にやらオーギュストがこちらにやって来ていた。
「あら団長……おはよー」
「ああ、おはようセラ殿。それで……アレクシオの事だったか? 確かに、警戒範囲はこちらより広いし、その割に正規兵の数も少ない。だが、魔物の強さはこちらほどでは無いし、アレクシオなら冒険者を上手く統率できるだろう。簡単にとは言わないが、心配はいらないさ」
「……ほぅ。なんかさ……アレクって評価高いよね。いや、あのにーちゃんが優秀なのは知っているけれど……」
なんかオーギュストだけじゃなくてリーゼルもだが、アレクに関しては丸投げって感じの事が多い気がするんだよな。
普段は結構細かいんだけど……なんでだろ?
「それは彼が平民出身だからですよ」
そう首を傾げていると、後ろからテレサが声をかけてきた。
振り向くと、手に箱を提げている。
アレを取りに行っていたのか……。
それはともあれ、平民出身だと評価が上がるんだろうか?
◇
アレクが平民出身ってのと彼の評価が高いことにどんな繋がりがあるかって言うと……割と納得できる理由だった。
他国出身とはいえ、ゼルキス領でそこそこ長く過ごして実力を広く認められている冒険者。
そして、貴族のお嬢様と結婚して新公爵領の騎士団の一角を担うまでになった。
その背景が重要らしい。
共通項とでも言うんだろうか?
この国の高位貴族出身で、順当に騎士団の幹部の座に収まった者よりも、平民からスタートした者の方が自分と重なる境遇もあって、言う事を聞きやすかったりするそうだ。
特に冒険者ともなれば、自分に自信があるものも多い。
今回のように対魔物の場合だと、騎士団が指揮を執っても自分たちの方が専門だと反発する事もある。
それを押さえるには、その指揮を執る者に身内意識、仲間意識を持たせると上手くいく。
「この役割は、他の者には務まりません。もちろん、アレクが優秀だからこそ任せられるのですが」
テレサの言葉に、オーギュストは頷いている。
一方ジグハルトは、何とも言えない顔だ。
彼の場合はなぁ……。
結婚こそしていないが、アレクと似たような背景を持っているが、如何せん強すぎる。
このおっさんに自分を重ねられるものはいないだろう。
簡単な魔法ならともかく、魔物の群れを消し飛ばせるほどの魔法を撃ちまくれるとなると、もう物語の住人だ。
一緒に協力して戦うよりも、ただただ従い眺めるだけになってしまう。
ジグハルト自身は、結構仲間を率いて戦うってのも好きらしいが、今回のような場合は向いていないんだろうな。
ドンマイ、ジグハルト。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】・15枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・33枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・9枚




