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セリアーナたちの子供の誕生日は、内輪だけで集まり静かに祝われた。
まだ1歳とは言え、公爵様の長男長女とその片腕候補。
将来を見越して、遠方からも足を運ぶだけの価値はあるが、もう冬という事もあり、リーゼルが客の来訪を断っている。
まぁ、冬の移動は危ないもんな。
自分の子供のお祝いにやって来て命を落としたなんて聞いたら、気分良くないだろう。
今後もその方針で行くそうだ。
その代わり、翌年の記念祭でしっかり祝うことになるらしい。
そう言えば、今年も記念祭で集まった時にお披露目とかやっていたな。
特に不自由なく生活しているとついつい忘れがちだが、何だかんだでこの領地は国どころか、大陸の人類生息圏の最東端だ。
船を使った水路があるとはいえ、それもまだ限られた者しか使えないし、訪れるにはそれなりに覚悟がいる。
まぁ、その辺の問題はリーゼルや周辺領主に任せるとしよう。
さて、プレゼントとして俺が用意したヘビグッズだが、懸念していたようなことは無く、そのまま彼等の物となった。
寝る時だけじゃなくて、起きている時も掴んだり引きずったりと、3人とも中々気に入ってくれたらしい。
贈った物を喜んで使ってもらえるってのは嬉しいものだ。
嬉しいものなのだが……子供とは言え人が使っていると、ちょっと自分も欲しくなるな。
◇
子供たちの誕生日から数日経った今日。
中央広場から一本奥に入った所で営業をしている、ある店を訪れた。
ここは主に寝具を取り扱っているのだが、客層は貴族や裕福な者がターゲットの、ハイソなお店だ。
店の前には寒いだろうに、シャツの上からベストを着た年の頃50歳ほどの男が、立って俺を待っていた。
オーナーは別にいるが、この店の現場の責任者がその彼だ。
その彼に、事前に今日行くとは伝えていたが、昼頃に……とだけしか伝えていないが、あの格好でずっと待ってたのかな?
着込んで着ぶくれした格好で出迎えるっていうのは確かに不格好だが……根性だな。
「こんにちわー」
「セラ様。お待ちしておりました」
その彼は、ピシっと一礼すると寒そうな素振りを見せずに、店の中へと先導した。
この店は、中に入るとすぐに商談用の応接スペースが広がっている。
1階が商談用のスペースで、2階3階が工房になっているそうだ。
まぁ、寝具と言っても扱う物は、布団やマクラやシーツ等の軽い物ばかりだからな。
これが、ベッドや棚などの家具だったり武具なんかだと、重くてかさばったり保管に気を使ったりもするから、工房と倉庫が一体化しているデカい建物が必要になる。
そうなると、どうしても店の場所も街の中心地から外れた場所になってしまう。
職人街が街の端にあるのはそのためだな。
扱う品の性格が違うしそれぞれ利点があるから、一概にどっちが良いとは言えないか。
さて、工房についての考察は脇に置いて、店の中を見渡すと、執事風の男や裕福な商人風の男が複数商談を行っている。
前来た時は、時間帯も同じだったがお客はそこまで居なかったが……繁盛しているみたいだな。
「どうぞ、こちらにおかけください」
通されたのは、奥の一際豪華な席。
特別席だな。
前回もそうだったが、ここにはセリアーナやリーゼルのお使いでじゃなくて、俺の個人の用事で来ているんだが……店側の気持ちはわかるが、少々心苦しい。
領主御用達ってことには多分ならないと思うんだよな。
まぁ……ここに通される間、店に来ていた客たちが俺の事を見ていたし、少しは宣伝になっているかもしれないか。
「それでは、本日はどのようなご注文でしょうか?」
席に着くと、他の席の様に雑談することなく商談に移った。
前回急かした事を覚えているんだろう。
手間が省けてよかったよかった。
それよりも、彼はお偉いさんなはずなのに、このまま商談の席に着くんだろうか?
あれかな……担当的な……?
およそ一般的な注文はしないであろう俺でいいんだろうか……って気がしなくもないが、むしろ我儘が通りやすくて良いのかな?
うん……ここは甘えておこう。
「今度はクッションをお願いしたいんだ。こんなやつ」
ゴソゴソとポーチから紙を取り出し、テーブルの上に広げた。
彼はそれを手にして、目を通している。
注文の仕様書は俺が丁寧に書いた物で、特に分かりにくいところは無いはずだが……。
「これは……猫でよろしいですか?」
「うんうん。黒猫と白猫ね」
……なるほど、絵がわからんかったのか。
俺の注文はイラスト調の猫の顔のクッションだ。
サイズは座布団サイズで、黒と白の2個。
先日注文したヘビのも良かったが、同じ物ってのも芸が無いし、自分でデザインしたのだ。
「なるほど……承知しました。素材はどのようにされますか?」
「オレが座るから、あまり硬くないのが良いな。それ以外はお任せするよ」
この世界じゃ、デフォルメ調のデザインは見かけないから少々彼も混乱していたが、説明を聞き納得したのか話を進めていく。
まぁ、特注とはいえクッションだ。
座るのに負担にならなければそれでいい……って事で、基本的に店側に任せる事にした。
大きな物じゃ無いし完成までさほど時間はかからない様で、完成したら屋敷に届けてくれるらしい。
特注なのに職人にお任せで、そして完成したら届けてもらう……ちょっと贅沢だな!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・21枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・31枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・9枚




