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「…………ぬぐ」
ベッドの上をコロコロと転がり真ん中まで移動すると、大きな欠伸を一つして体を起こした。
「……今何時だ?」
壁にかかった時計を見ると10時を少し過ぎている。
思ったより早く起きたな。
「さむっ!?」
布団から出ると部屋の寒さに思わず声を上げてしまった。
一瞬で目が覚めたぜ……。
この部屋は当然魔道具の暖房が設置されているが、微妙な季節だからまだ点けていなかったが……そろそろお世話になる時期かもしれないな。
とりあえず何か羽織るか……。
ベッドの下に転がしている【浮き玉】に乗って、タンスに向かおうとした時、寝室のドアがノックされた。
向こうにいた者が俺が起きた事に気付いたようだが……セリアーナじゃ無いな。
エレナかな?
「どーぞー……あれ? テレサ」
「おはようございます。姫」
部屋に入って来たのは、いつも通り一分の隙も無いキッチリした格好のテレサだった。
この時間だといつもは仕事に取り掛かっているのに……今日はお休みなのかな?
そんな事を考えている俺を他所に、彼女はタンスに向かい中からストールを一枚取り出した。
「どうぞ」
そして、それを俺の肩にクルリと……。
「あ、ありがと」
羊毛か何かで編まれていて程よく暖かい。
良いチョイスだ。
「あちらでエレナが朝食の用意に取り掛かっています。参りましょう」
「はーい」
◇
先日エレナを誘いに行って以来、何だかんだで彼女もセリアーナの部屋に朝から晩まで入り浸っている。
これまで、彼女への客がある時なんかは自分の屋敷に戻っていたが、セリアーナの方もだが、この時期は調整したら突発的な客ってのは本当に無いからな……。
そして、エレナだけじゃなくて、フィオーラもこの部屋に通うようになった。
彼女の場合は、仕事に天候は関係ないのだが、街の住民に合わせて、彼女の部下たちに休暇を与えたらしい。
そのため、ジグハルトもダンジョンに通っている事もあって、地下の研究室も今は閉めている。
作業自体は一人で出来る事もあるそうだが、やはり1人であの施設を使うのは効率が悪いそうで、フィオーラも自宅で休んでいたそうだが……飽きたらしい。
その事は知らなかったが、セリアーナが彼女に声をかけると、二つ返事でやって来た。
なんとも暇を潰すのが下手な3人だ。
この3人は、別に部屋に集まっていても何かを一緒にやるって事も無いんだよな。
それぞれ本を読んだり、手紙を書いたり、たまにお喋りしたりと……好きな事をしていた。
そして、今日からそこにテレサも加わった。
この雨季の間のテレサの主な仕事は、ダンジョンや領内の対魔物対策で狩場に出ている、2番隊の兵たちの補給に関しての折衝だった。
だが、それも落ち着き、流石にずっと働き詰めだからって事で、リーゼルとオーギュストから休暇を取る様にと言われたんだとか。
テレサは仕事が趣味みたいなもんなんだよな。
それを止められたため、こちらに合流したってところか……まぁ……適度な休息は必要だよな。
しかし、セリアーナの部屋はすっかり溜まり場になっているな。
お洒落にサロンとでも言うべきだろうか?
もっとも、今日は大分その言葉に似つかわしくない光景が広がっている。
セリアーナの執務室は、土足厳禁になっている。
ドアを開けて部屋に入った所で靴を脱いでスリッパを履く。
そこも6畳近いスペースがあるので、使用人等の中に入らず呼びに来ただけの者は、中には上がらずそこから用件を告げたりする。
そして、部屋の中は毛足の短い絨毯が敷かれて、日々掃除が徹底されている。
まぁ、何が言いたいかって言うと、セリアーナの部屋はとても清潔で、マットを敷いてはいるがそのまま絨毯に座っても問題無いって事だな。
相変わらず続けている日課の柔軟……数年前にマットを入手してからはヨガになっているが、手持ち無沙汰になった俺は、それをテレサと一緒に始めた。
セリアーナとエレナは日頃から見慣れているが、フィオーラには奇異に映ったんだろう。
興味を示し、彼女も参加している。
「セラ、軽く背中を押して頂戴」
「ほい」
フィオーラの声にそちらを向くと、足を90度ほど開いて体を少し前に傾けている。
いつもはローブやスカート姿だが、今はテレサから借りたパンツ姿だ。
その彼女の要請に応えるべく、ペタペタと彼女の後ろに歩いて行き、背中に手を置いた。
「押すよー。おいっちにーさんっしー」
「っ!?」
掛け声とともに、背中を押していく。
日頃から何かと【ミラの祝福】を彼女にかけているし、怠惰な生活をしているわけじゃ無いから、年齢に反してウチの女性陣の中では、一番女性的なスタイルをキープしている。
だが、それでも普段からあまり激しい運動はしていないからか、関節は硬い様で、小さな悲鳴を漏らしている。
「……お前のソレも随分長いわね。私と出会う前から続けているんでしょう?」
セリアーナの呟きが耳に届いた。
そういえば、このねーちゃんは誘っても乗って来ることは無いな。
「ずっとだねー。セリア様もやる?」
フィオーラの背中を押すのを止めて、右足を真上に上げて片足で立つ……いわゆるI字バランスを決めながらセリアーナに答えた。
筋力とか運動能力とかは自信無いが、柔軟性とバランス感覚だけは自信あるんだ。
「……足を閉じなさい」
今日も誘ってみたが、セリアーナは半眼でそう言った。
「ぉぅ……」
足を開くのが嫌なのかな……?
「普段っ、動かしていない箇所をっ、動かすからっ、悪くはっ、無いわよ?」
前屈を頑張りながらフィオーラがフォローをするが、効果は無い模様。
まぁ、そのうち気が向いた時にでも一緒にやろうかね。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・15枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




