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カチャカチャとキッチンから食器の立てる音が聞こえてくる。
同じくキッチンから漂ってくるお茶の香り。
なんでセリアーナにお茶の用意を任せて俺はリビングにいるんだろう……?
「なんか手伝うー?」
「必要無いわ」
キッチンに向かって、手伝いはいるかと声をかけるが、必要無いらしい。
まぁ、お茶を淹れているだけだしな……ここで飲むわけじゃ無いし、手伝うと言っても運ぶくらいだし、必要ないか。
ちなみに、茶葉やカップ類は片付けがひと段落した際に、セリアーナの部屋から取ってきた物だ。
彼女の部屋にもキッチンがあるが、【隠れ家】の方が使いやすい様で、こちらを利用している。
だが、【隠れ家】内の食器類も徐々に充実してきてはいるが、まだまだ彼女のお眼鏡には適わないようだ。
俺が使いやすい物を選んでいるし、仕方ないかな。
ふむ……と納得して、リビングを見渡す。
片付けを始めるまでは、素材や木箱があちらこちらに積んでいたが、残しておきたい素材は別にして、近いうちに処分して問題無いものは、すぐ動かせる様に一ヵ所に纏めている。
物自体は減ったわけでは無いが、なんというか【隠れ家】全体がスッキリしたな。
雨季が明ける頃にはダンジョンも落ち着いているらしいし、そうなったら俺も探索を再開する。
そしたらまた素材が増えてくるだろうけれど……果たしてこの状態をキープできるだろうか。
「ぬぬぬ……」
「なにを唸っているの」
「ぬ? いや、部屋綺麗になったなーって」
セリアーナの声に顔を上げると、トレーを手にこちらにやって来ていた。
「片づけたのだから当然でしょう? さ、行くわよ」
「へーい」
【浮き玉】に乗ると、彼女の前に出て玄関に向かった。
◇
セリアーナの部屋に戻ってお茶を飲んでいるが、その間は特に何かを話したりってことは無く、それぞれ適当な本を読んでいる。
俺が読んでいるのは、領都の冒険者ギルドが領内の各街にある支部向けに発行している、領地に出現する魔物と、その生息地が纏められたものだ。
非売品ではあるが、先日ゲットした。
もっとも、載せられているのは領都以西で、魔境の魔物情報は無い。
今後の冒険者の働きにかかっているんだろう。
とはいえ、これはこれでなかなか興味深い。
基本的に、俺は狩場以外での戦闘は行わない。
なんといっても移動は【浮き玉】を使って空を飛んでいるからな。
たまに馬車を使う事もあるが、そういう時は大体護衛付きで、魔物が現れても彼等が倒している。
その為、領内にどんな魔物がいるのかってのを、実はあまり知らなかったりする。
「随分真剣に読んでいるけれど、面白いの?」
「……ぬ? うん。面白いよ」
興味深く、ついつい真剣に読んでいたのだが、その様子がおかしいのか、セリアーナがからかうような口調で言葉をかけてきた。
騎士団の資料で似たような物はあるが、アレはあくまで集団で一掃するための資料で、正面から対峙する用の資料じゃ無いんだよな。
こちらの方が見応えがあって、ずっと面白い。
しかしだ、俺が読んでいる本は確かに一般的なものでは無いと思うが、セリアーナが読んでいるのも中々どうして……。
「セリア様こそ、それ面白いの?」
「悪くは無いわね。そもそもこれはお前の物でしょう? 何のために手に入れたの?」
「……何のためって、レシピ本なんだし料理するためじゃない」
それを聞いたセリアーナは、フッと笑っている。
セリアーナが読んでいるのは、俺が王都やゼルキスなんかで入手した料理のレシピ本だ。
もっとも前世のように、詳しい作り方や正確な分量などが載っているわけではなくて、なんとなくのふんわりした情報しか書かれていない。
他所の情報が手に入りにくいこの世界では、これでも貴重らしくて、お値段はそこそこした。
だが……まぁ、折角手に入れたはいいけれど、【隠れ家】に積んでいたままだった。
それを、掃除中のセリアーナが発見して、今に至っている。
彼女が笑ったのは、料理をしない俺が買っていたからかな?
料理なー……。
1人で移動する時なんかは自分で作るが、1人分だから失敗しないような物ばかり作ってるんだよな。
中々新しい物にチャレンジする機会は無い。
一応簡単には目を通してはいるが、あまり内容は覚えていない。
そういえば、その本にはどんなのが載っていたっけ?
「折角買ったのに残念だけれど、これはあまりお前に向いた料理は載っていないわね。私も作ろうとは思わないわ」
セリアーナの方を見ていると、視線に気付いたのか、本を掲げてそう言った。
「どんなのが載ってたっけ?」
「大型の獣の捌き方や、その場での調理法ね。狩猟が中心の山村の様子も書かれているわ。自分がそこで暮らしたいとは思わないけれど……色々な暮らしがあるものなのね」
と、感心している。
「……ぉぅ」
なんとも豪快な……確かに俺向きでは無いな。
そして、それを聞いて何となく内容を思い出した。
確か、その料理はどんな場所で食べられているのかって、筆者の簡単な説明が一緒に載っていたんだ。
セリアーナはそれを読んでいたんだな……。
その後も1冊2冊と読み進めて、果てには互いの読んでいた物を交換したりと、そんな事を続けているとすっかり夜になった。
【隠れ家】の片づけと読書だけで1日潰せてしまったな……もったいないとみるか、有意義とみるか……悩ましいところだ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・15枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




