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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
16章・ようやくダンジョン一般開放!

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「どうしたの?」


 ホッと一息ついた事を訝しんだのか、セリアーナが胸元の俺に声をかけてきた。


「ん? ちゃんと街の中に留まってくれたなって」


 セリアーナは冒険者ギルドから真っ直ぐ南に直進していたが、街壁の手前まで来るとそこでストップして、お次は壁周りに東に進み始めた。

 壁の上には街の外を見張る兵がいるが……俺たちには気付いていないな。

 やはりこの世界の人間は、空への警戒が甘い。


 この周辺は彼女の視察予定に入っているのか速度は大分ゆっくりで、俺も下を見たり返事をする余裕がある。

 ってことで、先程の問いかけに答えたのだが……。


「お前は私をなんだと思っているの……」


 彼女的には心外だったのか、2本の指で俺の頬を引っ張っている。

 まぁ、軽くだから痛くは無いが。

 2度3度それを繰り返すと満足したのか、セリアーナは指を放して下を見始めた。

 今まで彼女がこっちの方に来たのは、【ダンレムの糸】の試射で外の訓練場を利用した時くらいだったかな?

 物珍しいのかもしれない。


「まあ、いいわ……。セラ、お前はこの辺りも普段から通っているのでしょう? 何か変化はあるかしら?」


「変化ねぇ……」


 いつの間にやら領都の東の端、東門が見える場所にまで来ている。

 セリアーナはそこで停止すると、街の様子を聞いてきた。


 改めてそこから街の様子を見てみる。


 元々この街は、冒険者ギルドがあった場所が東の端だった。

 だが、さらにそこから東に東にと拡張を続けていき、いまでは冒険者ギルドは東の端どころかむしろ中央寄りにまでなっている。

 さて、その拡張した東側は南北に分かれていて、北側は商業ギルドと職人たちが押さえているが、南側は冒険者ギルドが押さえている。

 そこはダンジョン産の素材を取引する場所にする予定だったが、今までは手を着けず空き地のままだった。


 だが、春にダンジョンがこっそり開通されて以来、ちょっとずつ大きなホールのような建物が建ち始めて今では何棟か完成している。

 そして、先日正式にダンジョンが開通した事を公表され、一般開放もした。

 ちょうどその頃から馬車が何台も出入りしていたのを覚えている。

 商業ギルドの連中かな?

 これまでは建物こそ完成していても、人の出入りは無かったからな。


「……馬車の数が増えてるくらいかな?」


 俺がわかる変化といったらそれくらいか……?

 ちょうど今も敷地に入っていった。


 その馬車だが、普通の荷馬車や辻馬車という訳じゃなく、ちょっと良い馬車な気がする。

 かと言って貴族用ってわけでも無いし、どこぞの商会の持ち物だろう。

 その割には護衛がいないが……まぁ、仮にも領都だしな。

 ゾロゾロ引き連れて移動するわけにもいかないんだろう。


「……大したことは知らないのね」


「東門とその周辺。冒険者ギルドといくつかの工房……この街でオレが出入りする場所ってそれくらいだしね……」


 上空を通過する事はあっても、わざわざ留まったりはしないから、あまり街のことは詳しく無いんだよな。

 むしろ直接各ギルドの幹部陣と面会したりしているセリアーナの方が、街については詳しいんじゃないかな?


「それもそうね。まあ、いいわ」


 そう言うと、セリアーナは口を閉ざして下の様子をジッと見ている。


「……街に少し変化を起こしたけれど、冒険者地区に異常は無いようね」


 そうすることしばし、どこかホッとした様子で口を開いた。


 ……屋台を勧めたのはセリアーナだし、ひょっとして気にしていたとか?

 だから、この雨の中わざわざ街に出たのかな?


「もうここはいいわね、次に行くわよ」


「わっ!?」


 意外と普通っぽいところがあるなと、思ったのもつかの間。

 すぐに【浮き玉】を加速させた。

 この切り替えの早さよ……。


 ◇


「先程のお前じゃ無いけれど……馬車の数が増えているわね」


「そうだね。普段はもっと少ないんでしょう?」


「ええ。雨季の間は貴族はあまり外に出ないから……。今のところは事故も起きていないようだけれど、注意させておきましょう」


 東門からさらにグルーっと壁沿いに北に向かって移動を続けながら、街の様子を2人で見ていたが、とにかく馬車の多さが目についた。

 今も変わらず雨足は強いままで、道を行く人の姿はほぼ無い。

 だが、その分馬車が多いこと多いこと……。

 乗っている者は濡れないが、当然この雨の中走らせたら馬車も馬も濡れて消耗してしまう。

 それだけですぐにどうこうってことは無いが、それでも雨季の間は馬車の利用も減るのが常らしいが、お構いなしだな。

 リアーナ領の領都になった事で大分発展してきたとは言え、それでも住民の大半は田舎のおっちゃんおばちゃんで、まだまだ鄙びた街だったが……ダンジョンが出来ただけで一足飛びに一端の大都市だ。


「さて……後は……」


 街の様子を見ていたセリアーナは、顔を上げると西を向いた。

 ここから西は、教会に孤児院、治療院。

 さらには、西部側の冒険者たちが屯っている宿といった、西部側の施設が固まっているエリアだ。


「あっちに行くのは止めない……?」


 セリアーナがどう判断するかはわからないが、見たところ特に危険そうな存在はいないが、だからといってフラフラ近付くのもどうかと思う。

 が、セリアーナは俺の言葉を聞いているのかいないのか、ジッとそちらを睨んだまま【浮き玉】を滞空させている。

 何か気になるものでも見つけたのかな?

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・15枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2人でカチコミデート!? [一言] セリア様、今まで浮き玉に乗った時の自身のスピード狂ぶりを顧みるのです…… え? あれくらい普通?
[一言] 手綱、握れてるかなあ…… 雨具にはなってると思いますが 更新キリ番555 話数551蓬莱
[一言] 何か怪しい物を見つけたのかな?
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