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さて、セラの治療はまだ時間がかかるようだしどうしたものか。
辺りに魔物の気配は無いし、さすがに2体目の魔人は出たりしないだろう。
目が覚めるまで待つか、それとも帰還をするか。
「アレクシオ、マリーダ、お前たちはここで2人を守っていてくれ。ミーア、もう動けるな?俺達はセラの倒した魔物の処理を行おう。それまでに目が覚めていたなら問題無いし、そうでなければ担いでいけばいい」
どうするか迷っている間にルバンが方針を決めた。
この決断の早さ。
流石は二つ名持ちだ。
「わかった。そっちは任せる」
返事を聞くと2人はセラの戦っていた場所へと走っていった。
あの様子ならミーアの傷も問題無いのだろう。
先程までの魔人との戦いを思い出す。
体力、筋力、どちらも上級妖魔種に匹敵し、そして更に頑強な武具に身を包み、高い技術までも持っていた。
それでも何とかパターンを見つけ、オレが囮になることで隙を作りだし、ルバンの魔法で足元の地面を砕き、そこをミーアの加護を発動した一撃で崩し膝をつかせることに成功した。
だが、そこから止めを狙ったミーアがカウンターを食らい、逆にこちらが決め手を欠いた状態で徐々に追い詰められていった。
まさか上半身が180度捻じれるとは思わなかった。
油断とは言えないが、魔物と同じ生物と考えたのが甘かった。
もちろん立て直しさえできればまだまだ戦えたが、セラの今の状況を考えると【祈り】も早々に切れ、いずれ破綻していたかもしれない。
あいつの体力を考慮していなかった。
初手で撤退させギルドに救援を求めるべきだった。
「……シオ、アレクシオ!」
「ん?あ、ああ…どうした?」
いつの間にかマリーダが近くに来ていた。
反省するのはいいがそっちに気を取られ周囲の警戒をおろそかにしてしまってはいけない。
普段ならしない様なミスをしている当たり、俺もまだ平静じゃ無いようだ。
「キーラが診ているし、あの子なら大丈夫だよ。それより、コレ」
彼女の後ろを見ると魔人が使っていた、盾と棍棒が置いてあった。
中身や鎧は消滅したが、その2つは残っていた。
ミーアの一撃やルバンの魔法すら弾いてなお、傷一つ付かなかったことから考えて、恐らく高純度の魔鋼製だろう。
棍棒は三角錐を逆さにしハンドガードが付いた様な形で長さは1メートル程。
重さもあり、対人、対魔物どちらでも使えそうだ。
盾は、帝国の重装兵が持つような子供の背丈ほどもある大楯だ。
体の大きい魔人が持つとそこまで違和感が無かったが、改めてみると大きい。
「あんたのメイス、ミーアが折っちゃったし貰っちゃえば?」
「あれも魔鋼の合金製なんだがな…折れるとは思わなかった。まあ、これも魔人討伐の証明だしギルドに提出するべきだな」
自分が盾に専念し使わないことから、打撃力を重視し俺のメイスを渡していたが、この棍棒と打ち合い、砕けこそしなかったもののへし折れた。
嘘だろ…?と、戦闘中とはいえ思わず呆然としてしまった。
「魔人かー、3人は討伐隊に参加したことあるけれど、私は初めてだったんだよね。あそこまでとは思わなかったよ……」
「以前戦ったのよりもずっと強かったわ。王都ダンジョンだからかしらね?」
マリーダのボヤキにキーラが答えた。
治療が終わったんだろうか?
「終わったわ。傷はもう無いけれど、まだ起きそうにないしこのまま寝かせておきましょう」
視線を察したのか、セラの状況を教えてくれた。
「そうか。なら後はどうやって運ぶかだな。【浮き玉】もそこそこ重さがあるし…ん?」
魔物の処理に向かった2人が近づいてくるのがわかった。
何か大きなものを手にしているが、遺物か?
「片づけてきたぞ。そっちは…まだ起きていないか」
「ああ。それよりそれは、オオジカの角か?」
遠目だとわからなかったが、近くで見ると何かの角のようだ。
この階層で出る魔物でそんなのを落とすのはオオジカだけだ。
もしそうなら、今回の探索の目的も達成したことになる。
「彼女には頭が上がらないな…。さて、どうする?今は魔物もいないし移動を開始したいが、行けるか?」
「ああ。魔人の遺物は俺が持とう。盾も背負えば何とかなる。ただ、セラはどうする?【浮き玉】もあるから2人いるぞ」
「そうだな。キーラ、背負ってくれ。その【浮き玉】か?それはマリーダが、先頭はミーアが。アレクシオは2人についてくれ。俺は間に入る」
ルバンの指示に3人は頷く。
俺も問題無い。
「よし、さっさと帰ろう」
セラ・【隠れ家】【祈り】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・13枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【】・【赤の盾】・1枚




