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「む……。閣下、あそこが上層へ繋がる道のようですな」
魔物を蹴散らしながら進むことしばし、浅瀬の端にある上層への通路が見える位置までやって来た。
1時間かからなかったかな?
突破を急いだわけじゃ無いし、出くわす魔物をことごとく倒してきたにしてはいいペースだ。
「そうか。セラ君、周囲や通路の奥に魔物の気配はあるかな?」
「ぬーん……。なんも無しです」
周囲を見るが何もいない。
もちろん通路の奥にもだ。
この階層の魔物を殲滅したわけじゃ無いからまだまだ魔物自体はいるんだが……どうにもこうにも近づいてこようとしない。
格上が集まっていると襲ってこないんだよな。
初探索の時もそうだった。
今日はダンジョン内には俺たちしかいないし、階層に空きがある時はこんな動きをする。
もっと狩場に人がいて、逃げる場所が埋まっていると、他の群れと合流したりもするが……今日は逃げるだけだな。
「そうか。それじゃあ、当初の予定通りあそこまで行ったら引き返そう」
その言葉に短く返事をする一同。
戦力的にはもっと先を目指せるだろうが、今回は探索や調査が目的じゃ無いし、とりあえず浅瀬を一回りと決めていた。
その予定に変更は無いようだ。
「帰路で魔物が湧いてしまうかもしれないが……引き返すのは軽い休憩をとってからにしよう」
浅瀬の森部分を抜けて通路の前に辿り着くと、リーゼルはそう宣言した。
◇
さて、リーゼルが言ったように今は通路前の壁を背に休憩をしているのだが、前はそこに切り倒された木が何本か並べられていた。
休憩用に冒険者たちが設置していたんだろう。
だが、今日はそれが取り除かれていて、皆は立ったままだ。
流石に自然にそんな物が出来るわけ無いし、事前に取り除いていたんだろう。
……ここから下の階層にも、ちょっとした休憩用のスペースが出来ているが、そっちはどうなんだろう?
そこまでは行かないし残したままなのかな?
森部分も、普段ならあちらこちらに戦闘跡が残っているが、綺麗になっている。
その分、視界は悪くなっているな……一般開放初日はその辺を気を付けてもらいたいな。
「セラ、どうだ?」
休憩中の索敵も俺の仕事で、上に留まって周囲の様子を探っている。
そもそもずっと【浮き玉】に座っているだけで、消耗は無いもんな。
で、その俺に下からアレクが声をかけてきた。
下を見ると、それぞれ装備の点検をしている。
そろそろ出発か。
「んー。端の方にいるね。こっちを探っているっぽいけど、近づいては来てないよ」
魔物の様子は道中と変わらず、俺たちから距離をとろうとしている。
ただし、移動できる範囲にも限りがあるし、ある程度近づくと襲ってくるんだよな。
外の魔物だと逃げる時はどこまでも逃げていくが……その辺がやっぱ違うな。
「閣下。帰りは我々に戦闘を任せてもらえませんか? 他所と魔物の差は無いようですが、それでも実際に戦ってみなければわからぬ場合もありますから」
準備を終えたユーゼフが、リーゼルにそう申し出た。
ここまでは戦闘には参加しなかったからな……。
「ふむ……そうだね。君たちは構わないかい?」
「ええ。実際にここでの戦闘を経験してもらうのもいいでしょう」
リーゼルがリアーナ組に問うと、オーギュストが代表して答えた。
「わかった。なら、帰りは3人に任せよう。よろしく頼むよ」
「はっ!」
どうやら、帰りはユーゼフたちが担当することになりそうだ。
王都の偉い騎士サマの戦闘か……外での集団戦闘は見た事あるけれど、ダンジョンだとまた違ったりするんだろうか?
オーギュストは元中央の騎士だし、彼みたいな戦い方かな?
ちょっと楽しみだ。
◇
「ぬおおおおっ!!」
「はああっ!!」
「せぃやああっ!!」
……うるさい。
ユーゼフたち3人が帰りの戦闘を担当すると決まって、程なくして出発することになった。
上層への通路側の魔物は倒してまだ間が無いからリポップしていなかったが、入口に近づくにつれて、行きで倒した魔物や、逃れていた魔物がグルっと回り込んで来たのか、遭遇するようになった。
もちろん、その魔物たちはこちらを襲ってくるので倒しているわけだが……。
「うおおおおおっ!!」
すっげぇうるさいのよ。
そして暑苦しい。
それぞれが特に役割を分担するでなく、3人が3人とも両手持ちの剣を操り、一太刀で魔物を倒していく。
強い事は強いし、実に巧みな戦いぶりなんだけれど……。
くそうるせぇ。
なんとなく行きより魔物との遭遇が多い気がするけど、もしかしてこの大声に引き寄せられていないか?
冒険者でも自分を奮い立たせるために大声を出すのもいるが……3人揃って……それも強敵ってわけでも無いのに、アレは過剰すぎる。
「ねぇ……あのおっさんたちクソうるさいんだけれどさ……。アレが普通なの?」
明らかに冒険者とは違う戦い方だが、これが正規のものなのか、あるいはあのおっさん共だけなのか……。
高度を下げて、下の連中に向けて問いかけた。
「彼等は人間との戦闘を想定した訓練もしているからね。魔物と違って人間相手には気迫も大事なんだよ。部隊を率いての戦い方はまた別だが……ああいった個人での戦闘になると、その戦い方の方が力を発揮しやすいんだろうね」
俺の疑問にリーゼルは苦笑交じりに答えた。
「なるほど……」
わかったような……わからんような……。
と、首を傾げていると、前方から大音声が。
どうやら戦闘が終わったらしい。
まぁ……この上なくうるさいが、なんだかんだで上手い事戦っているし、アレでいいのかな?
◇
さらに数戦をこなし、俺たちは無事ダンジョンから帰還を果たした。
ホールには2番隊や戦士団が整列していて、俺たちの帰還を見届けると、交代して入って行った。
公には、これから彼等が調査をして、それから開放ってことになるんだろう。
茶番と言えば茶番だが、これで大手を振ってダンジョンに潜れるし、話す場所や内容に気を配る必要もなくなる。
悪い事じゃ無いな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・15枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚




