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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
15章・リアーナでアレコレと。

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 夏の3月半ばも過ぎた今日この頃。

 俺は1人ゼルキスの領都を目指して快調に【浮き玉】を飛ばしている。


 リアーナでダンジョン開通後に不測の事態が起きた際に備えて、周辺領地が兵を動かしている……という事は俺も聞かされている。

 その纏め役が親父さんらしい。


 で、その不測の事態ってのは、ダンジョンで一度だけ姿を現す魔王種の事だ。


 ところがウチは既に倒してしまっているため、折角動員したその兵は不要になる。

 来るべき次の事態に備えて、ここで無駄に領地の力を消費する事態を避けるためにも、ここら辺の纏め役であるミュラー家に不要であることを伝えようと、俺が派遣されることになった。

 

 ……その、次の事態ってのが何なのかはわからないが、養子の件で手間をかけてしまった礼も言いたかったし丁度良かった。


 前回訪れてから少々間が空いてしまったので、色々ゼルキス宛の手紙もあずかっている。

 その場で片づけられる事もあるし、テレサも同行出来ると良かったんだが、彼女は領地での貴族としての仕事が色々溜まっているそうで、今回は領地に残った。


 そして、俺も今回は1泊だけの予定だ。

 今月末に、アレクやジグハルト、オーギュストの3人がダンジョンに数日籠ることになっていて、その間領都の個人での戦力が落ちてしまう。

 だから、その穴を埋めるために俺も領都にいて欲しいそうだ。


 まぁ……俺程度で彼等の穴を埋められるとは思えないが、団長サマからの要請だし、大人しく引き受けた。

 1週間くらい纏まった期間の滞在なら、ダンジョンに行ったりゼルキスの領都で遊べるのだが……残念だ。

 彼等が帰還するのを待ってからだと、秋の1月に入ってしまうからな……。


 王都から聖貨を運んで来る部隊のことを考えると、兵を動かすなら彼等とかち合わない時期が良いんだろう。

 予定時期は秋の2月だし、今でも結構ギリギリになるかもしれない。


 ってことで、【風の衣】を発動しての初の高速飛行だが……これはヤバい。


 普通に飛んでいる分には特に前と変わりは無かったのだが、ある一定の速度……恐らく受ける風が俺に対してダメージになると、風も弾くようになった。

 試しに速度を上げても見たのだが……どこまで上げても抵抗無し。

【浮き玉】の最大のネックであった、風圧の問題が解決してしまった。

 多分……俺今200キロ近く出しているはずなのに、体に感じる風は精々そよ風程度だ。

 鳥や虫と空中で接触する危険も、【風の衣】だけじゃ無く【琥珀の盾】も発動しているから、ほぼ心配なし。

 強いて言うなら、速度を出し過ぎると俺が怖いって問題があるが、これだけ守りを固めたら、これくらいまでなら何とかなる。


 ただ……【浮き玉】の限界はまだ先にあるみたいなんだよな。

 流石にこれ以上速度を出す気は無いが……この玉も謎過ぎる。


「……わぉ」


【浮き玉】の限界についてあれこれと悩んでいると、森の切れ間に見覚えのある人工物が見えてきた。

 ゼルキス領都の街壁だ。


 空を見ると、お日様は西に傾き赤くなってはいるが……まだまだ夕日と呼ぶには程遠い。

 俺がリアーナ領都を出発したのは昼を回ってからだし、道中1度休憩を挟んだが……大体3時間弱ってところかな。


 以前テレサが全開でぶっ飛ばした時でも時間はもっとかかったんだが……想像以上だな。

 流石に、リアーナとゼルキスと言ったいわば俺の地元だが、それでもこれ以上の速度を出すのは、見た者にいらぬ警戒をさせてしまうかもしれないし、止めた方がいいだろうな。

 一応ここまでは街道を少し外れたルートを採っていたし、人目に付くようなことは無かったと思うが、気を付けるにこしたことは無い。


 一旦近くの森に身を隠して、周囲を確認……ついでに領都入口までも念入りに索敵する。

 獣も魔物の姿も無し。

 もちろん、怪しげな人間もだ。

 入口辺りに入場待ちで並んでいる連中がいるくらいか。


 安全が確保できたところで、【妖精の瞳】を解除してヘビたちも服の下に戻らせた。

 これで俺の見た目はどこにでもいるお嬢さん。

 俺を見た人間が驚くようなことは無いだろう。


「さてと……そんじゃー、領都に向かいますかね」


 隠れた場所から姿を現し、領都入口に向けて出発した。


 ◇


 入口に並ぶ者達をよそに、顔馴染みの検問の兵と一言二言挨拶を交わして、領都に入場を果たした。

 その際に、屋敷までの案内をつけると言われたが、断らせてもらった。

 俺の目的地は屋敷なんだが……少し街中を覗いてみたいんだよな。


 もう完成しているこの街の構造が数ヶ月で変化するようなことは無いが、ちょっとリアーナの領都と見比べてみたくなったんだ。

 あっちは若い街で、まだまだ変化し続けているし、何か参考になる様なものがあるかもしれないもんな。


 と、そんな事を考えてはいたが……あまり見た感じはどっちも変わり映えしないな。


 流石に、人口はこちらが上だし人通りは多い。

 それだけに、通りに並ぶ店の数も多いが、質が劇的に違うってことは無い。


 もっと下町とか……住民の生活に根差した場所だと差があるのかもしれないが、元は同じ領地だし文化面や風習はそこまで差が無いのかもしれない。

 街を移動しても違和感を覚えるようなことは無いな。


 ……強いて言うなら、通りを行き交う人が俺を物珍しそうに見ているくらいか?

 俺がこの街にいた時間は何気に短いし、あまり街をうろつく事も無かったもんな。


 ……あまり長居はしない方がいいかな?

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・11枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚

エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・8枚

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > 今月末に、アレクやジグハルト、オーギュストの3人がダンジョンに数日籠ることになっていて、その間領都の個人での戦力が落ちてしまう。 > だから、その穴を埋めるために俺も領都にいて欲し…
[一言] やはり伝書セラが最適職……?
[一言] 浮き玉の限界が見えないねぇ
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