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リーゼルの執務室前に着くと、警備の兵が中に伺いを立てて、そしてドアを開く。
毎度の光景だが、ここは省略しちゃいかんよな。
「おじゃましまーす」
とにもかくにも、俺も中に一声かけて、入室した。
中ではリーゼルとセリアーナがソファーに座りお茶をしている。
いつもは誰かしら中で働いているが、今日はその彼等はおらず、2人だけだった。
彼の執事であるカロス達もいないし…………お邪魔だったかな?
「やあ、セラ君。いらっしゃい。もう祭りは良かったのかな?」
リーゼルはその事を特に気にしたそぶりを見せずに、いつも通りにこやかな顔で聞いて来た。
セリアーナは俺を見て手招きをしている。
「一通り見て回ったしねー……。途中で子供達と合流して、貰ったお金でご馳走して来たよ」
セリアーナの隣に移動しながら、貰った小遣いの使い道を話したが、何故かセリアーナがニヤリと笑っている。
ついでに肩に腕を回してきたし、ご機嫌のようだ。
「ね? 言った通りでしょう」
そして、肩を竦めているリーゼルに向かってそう言った。
……なんか勝ち誇った様な顔だし、俺の行動で賭けでもしていたんだろうか?
じーっとリーゼルを見ていると、それに気付いたのか口を開いた。
「昨晩セリアと話をしていてね。君はどんな風に金を使うのだろうかって。僕は精々顔見知りの子供達に振舞うくらいだろうと思っていたんだが……。セリアはね……」
「私は、お前が全員を呼び、その後人数に驚きながらもこの街の者の店で、全員に下げ渡すだろうってね。額も不足なかったでしょう?」
「……うん」
まぁ、なんとなく街の子供達に奢らせたいのかなー、って渡された額から考えてはいたけれど、見事に俺の行動を見抜いている。
マジで何でそこまで予測されてしまうんだろう?
俺そんなにわかりやすいのかな?
愕然としていると、自分の予測が当たったのが嬉しいのか、セリアーナがやや得意気に説明してくれた。
街の出店の状況や子供達の人数に環境等も、彼等には報告が上がっているそうだ。
そこから、俺の性格も前提に、いつもとは違う護衛を連れた場合の行動を予測した結果らしい。
そう言われたら確かに予測は出来そうな気もするけれど……。
「ここ最近屋敷に籠ってばかりだからね。丁度いい息抜きになったよ」
「そか……そりゃ良かったよ」
ネタに使われた身としては複雑ではあるが……、まぁ、いいか。
それよりもだ。
「旦那様にお土産があるんだよね」
部屋のドア近くで待機している、護衛の彼等に声をかけて、持って来させた。
「ありがと。後はもういいよ。部屋には自分で持って行くからさ」
「……はい。それでは失礼いたします」
リーゼルが頷いたのを見て、彼等は挨拶をして部屋を出て行った。
なるほど……リーゼルの命令で動いていたんだもんな。
俺が言うだけじゃ動けないか……。
「そういえば、それは何なの? 随分大きいけれど……」
同じくソファーにかけているフィオーラが、箱の中身を聞いて来た。
ミニタワーPCくらいの大きさだし、そりゃ中身が気になるか。
セリアーナ達も、早く開けろっていう目をしている。
ではお披露目……と、包みを解いて、中身を出す。
思ったよりも重たいそれを、箱から出して机に置くと、「あら」「ほう」とそれぞれ感心した声を上げた。
うん……実際、物は見事なんだ。
「凄いでしょ。露店で売ってたから買って来たんだ。こっちが職人頭の作で、こっちが工房の親方の作ね」
クマと、リアーナモドキの像を指して、制作者を告げた。
「……クマはわかるけれど、こちらは何なの?」
セリアーナの声に2人も頷いている。
確かにこれは何かって言われてもわからないよな。
なまじ正解の姿を知っているし、平民の間の噂話とかも聞かないだろうし……。
「こっちは昔、街を襲って来たクマで、こっちは巨獣リアーナだって」
驚く3人に、何でこんな姿なのかを説明すると、「なるほど」といった顔で感心している。
「面白いものだね……アレがこうなるのか。情報を全て管理するつもりは無いが、かといって不要なものまで交付するつもりは無い。……無いが、どうしようか? この地にいた魔物の姿だし、訂正しておいた方がいいのかな?」
「このままでいいんじゃない? 尋常ならざる存在とだけは伝わっている様だし」
「そうね……。少なくとも領民が気軽に足を運んで出くわす様な場所にはいないでしょうしね。それに、同じ姿の混合種なんていないだろうし、違う姿の混合種を見ても、一目で異常だとわかるはずよ」
サイモドキが明らかに違う姿で認識されている事を危惧したリーゼルの言葉に、セリアーナ、フィオーラがそれぞれ答えた。
「……それもそうか。しかし……いい出来だね。本当にいいのかい?」
リーゼルは像を持ち上げると、クルクル回転させて出来を確認している。
顔を見るにどうやらお気に召した様だ。
「いーのいーの。気に入ったから思わず買ったけど、よくよく考えると部屋に置くには大きすぎるからね」
「……まあ、確かに私の部屋に置くには大きすぎるわね。昔お前が買ってきたのと同じくらいの大きさならともかく……」
「でしょ。他にも領地に現れる魔物の像を彫っていたし、もっと小さいのを注文してみようかな?」
昔王都でセリアーナとエレナにお土産で10センチくらいの木彫りの像を買ったことがある。
今も彼女の机の上で、文鎮代わりに使われているが……あれくらいの大きさなら邪魔にはならないかもしれない。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・7枚




