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「上にいると客が多くて面倒なのよ……。ジグは外で冒険者達と一緒にいるけれど、私はここの方が落ち着くわ」
直立する護衛達に、フィオーラは楽にしろと手を振りながら、そう答えた。
「あー……」
彼女もだがジグハルトも、この領地どころか国内屈指の有名人だったりする。
そりゃー、折角来たんだし、お近づきになりたいって考える奴がいてもおかしくないか。
俺の様に領主夫妻が追っ払ったりもしないしな。
「……2人はお屋敷を持ったりしないの?」
彼女達は、未だに屋敷の敷地内にある専属冒険者用の家で暮らしている。
出産前は、エレナとアレクもそうだったが、彼等は今は自分の家を構えているしな……。
あの一画はフィオーラ達だけしか今は生活していない。
もちろん領主の屋敷の敷地内だし、誰でも入れるってわけじゃ無いが、言ってしまえば入れさえすれば、誰でも訪問可能だ。
これで使用人でもいたなら、主の代わりに客を捌いたりするが、彼女達は誰も雇っていない。
そもそも、あの建物は普通に生活するには十分だが、使用人も含めて、となると大分手狭になる。
全員が通いでってのも面倒だろうしな……。
「私もジグも戻らない事が多いでしょう? 家を買っても建ててもいいし、人を雇ってもいいけれど、ほとんど利用しないのなら無駄に終わるわ」
「うん……」
フィオーラは今まさにここにいる様に、この通路沿いの各部屋にある錬金スペースに入り浸る事が多いし、ジグハルトはジグハルトで、狩りに行ったり採集に行ったり、フィールドワークで忙しい。
その事を考えると、確かに屋敷をわざわざ用意するのは手間なのかもしれないな。
「それよりも、どうしたの? 貴方が人を連れて外から戻って来るなんて珍しいじゃない」
フィオーラは、側で控える彼等を見ている。
まぁ、普段から俺は空を飛んでいるし、出入りも窓からだ。
基本的に人と一緒に行動するのには向いていない。
この街に移った初期こそ、アレクやテレサが護衛についていたけれど、今は1人で出かけることがほとんどだ。
「セリア様から記念祭を見て来いって言われてねー。さっきまで行ってたんだ。彼等は俺の護衛に旦那様が付けてくれたの」
「……ああ、荷物持ちね。……まだ明るいけれど、もう戻って来て良いの?」
出歩く際の護衛=荷物持ちって事にすぐ行きついたあたり、この人も立派なお貴族様だ。
「うん。大体見て回ったしね。フィオさんは今日はこのまま? 屋敷に一緒に行く?」
2階なら客も来ないし、ここより寛げるだろう。
「……そうね。あなたと一緒なら2階も使えるし……。そうするわ」
「そか。じゃ、行きましょー」
仲間を1人ゲットだ。
もっとも、街を散策してでは無くて、帰ってからってあたりが何とも締まらんね……。
◇
「あらセラちゃん……。っ!? フィオーラ様も。いらっしゃいませ」
通路を出て地下施設に。
そして、そこをさらに進み屋敷に出ると、屋敷で働くメイドさんに出くわした。
流石に今日は【妖精の瞳】を使っていないし、ヘビの目も使っていないから、屋敷にどれくらい人がいるかわからないが……、彼女の様子を見るに、忙しそうではあるが緊張した雰囲気は無い。
「ただいまー。今はお客さんはいないのかな?」
「ええ。旦那様と奥様のお客様は、先ほどお帰りになったわ。また夜になったら晩餐会のお客様がお越しになるけれど……」
「ほー……」
ちょうど夜に向けての休憩みたいなタイミングなのか。
それなら、リーゼルの所にちょっと寄ってみるかな?
セリアーナもいそうだしな。
「そか。ありがとー」
礼を言って、リーゼルの執務室に向かおうとしたが、その前に彼女から呼び止められた。
「ええ。……あっ、セラちゃんは夜はどうするの? またお部屋に運ぶ? それともパーティーに出席する?」
夕飯の事か。
「そうだね……部屋にお願い。フィオさんもそうかな?」
最近はセリアーナに連れて行かれて、俺も食堂で食事をしているが、この記念祭の期間は部屋で食事をとっている。
内容は一緒だし、別に皆と食べるのも嫌いじゃ無いが……ダラダラしながら食べられるし、部屋で食べるのも好きなんだよな。
……多分フィオーラもそっちのタイプだと思う。
「ええ。私の分もお願いするわ」
やはりか……。
「わかったわ。料理長に伝えておくわね」
そう言うと、頭を下げてパタパタと早歩きで去って行った。
それを見送り、俺達も移動を再開する。
このメンツになると、屋敷の人間は俺だけになるから、俺が先導しないといけないんだよな……。
あまり俺だけで外の人間と行動をとる事が少ないから気づかなかったぜ……。
この数日で、国内だけでなくて周辺国家にも、リアーナの存在をアピールできたし、テレサもお客の対応に回る機会が増えるかもしれない。
俺も案内役とかやる機会が増えるかもしれんな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・7枚




