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「んで、どうかしたの?」
気を取り直して、何の用なのかを訊ねた。
テレサは俺の身の振り方がどうのこうのと言っていたが、おそらく俺が成人してからの事だと思う。
もう来年だが……そこら辺の事はセリアーナに任せてある。
あんまりお堅いことや面倒なことは避けたいとは伝えているし、その辺のことは酌んでくれるはずだ。
悪いようにはしないだろう。
「……お前聞いていなかったのね。エドガーからの贈り物を飲んでいたようだけれど……そんなに気に入ったの?」
俺が手に持つグラスを見ると、そんなことを言ってきた。
普段は様付けなのに呼び捨てだ。
オフィシャルな場だからかな。
あのにーちゃんは侯爵家の嫡男とはいえ、今はまだ男爵位だったっけ?
夫人って立ち位置がどうなのかはよくわからんが、将来的にはともかく、現時点じゃセリアーナの方が上なのか……。
「美味しかったよ。今度エドガー様にお礼しないとね。……セリア様も飲む?」
手にしたグラスをセリアーナに向かって差し出すが、首を横に振った。
ついでに、周りのご婦人方が「まぁ⁉」と声を上げるが……はしたなかったか?
非難の色は感じられないが……。
セリアーナはコホンと一つ咳ばらいをすると、口を開いた。
「まあいいわ……。それよりも、お前。結婚したい?」
「しないよ?」
なんか前も似たようなことを聞かれた気もするが……急になんじゃ?
「そう……。皆さんがお前の事を気にかけてくださっているのよ。来年で14になるでしょう? お前はどうするのかって」
「ほう……?」
うちの息子の嫁に……とかの話なのかな?
まぁ、お断りだが、これでも結構優秀ですからね……!
セリアーナに断ってもらっているが、今でもたまーにそんな話があるそうだ。
「国の中央や西側ではお前の事を養女に取りたいと考えている家がいくつかあって、そこからお話を預かってきているそうよ」
と、周りの何人かのご婦人たちを見てそういった。
「……なんで養女?」
まぁ……そりゃ俺は家という意味ではフリーだけれど、公爵様であるリセリア家が後ろについている。
養女に入ってまで得られるようなことは思いつかないが……。
かといって、その家だけにメリットがある様な申し出なら、セリアーナがもう少し不機嫌になってもいいはずだ。
人前だからうまく隠しているってことも考えられなくはないが、そういう気配は感じられないし……。
「親衛隊に入隊するには伯爵家以上からよ。お前も知っているでしょう?」
「……ああ!」
そういえば、エレナもそんな話があったって、昔聞いた覚えがあるな。
「それに貴族学院への入学も可能になってくるわ。お前、通いたい?」
「……通わなくていい」
王都の屋敷での生活だけなら悪くはないが、お勉強……それもマナー的なものを中心の生活ともなると、ちょっと遠慮したい。
というか、ぶっちゃけごめんだ。
「ええ。だから断っておいてあげたわ。それに、お前はミュラー家の養女に入ることが決まっているもの」
「……なんですと?」
結構重要な話だと思うんだが、なんで普段から一緒にいるのに今初めて聞くんだ?
「なに? それとも私の養女になる方がよかったの?」
寝耳に水な情報にポカンとしていると、それが不満と思ったのか今度はそんなことを言ってきた。
「い……いや……」
「私の義娘になるのが嫌なの?」
そういうわけじゃないと否定しようとする俺に向かって、今度は一睨み。
「ぇぇぇ……」
なんでここでそんないじめっ子ムーブするんだ……?
周りのご婦人方も困って……いないな。
口元に手を当てて隠してはいるが、困惑している俺を見てニヤついているのが、目でわかる。
どうすりゃいいんだと、視線をキョロキョロとすると、セリアーナの一歩後ろにいるエレナと目が合った……が、苦笑を浮かべているだけで、セリアーナを止めようとはしない。
こういう時のあいつは駄目だ。
せめてだれか解説を……!
「セラ様」
後ろで別のご婦人グループの相手をしていたテレサが声をかけてきた。
その声に振り向くと、向こうのご婦人方もこちらに来ている。
「女性で騎士になるには親衛隊に入隊する必要があるのです。今のセラ様はあくまで領内限定の身分です。親交のある領地でしたらこちらの階級に合わせてもくれる事もありますが……」
「あぁ……。そういえば……」
ゼルキスでは、もう自由に動けるようになっているが、それ以外だと俺はテレサのおまけ的な立ち位置だった。
王都だと、一応昔の借りで【浮き玉】を始め、大分自由に動くことができるが、それは冒険者って身分でだ。
「もっとも騎士と言っても、どこでも自由に……とはいきませんが、親衛隊となると話は別です。王家の公認ですからね。私はセラ様の副官で侍女という立場ですが、籍は親衛隊にも置いています。私だけではなく、他にもそういった方はいらっしゃいますよ」
と、笑っている。
「そう言うことよ。もっとも親衛隊の隊員とはいっても、王都に行った際に王妃様に挨拶をして、もしこちらに来られるようなことがあれば、その際にも挨拶を……その程度よ」
セリアーナは気軽に言ってきたが、それはそれで結構プレッシャーのかかる様なお役目な気もする……。
が、それはそれでいつも通りか。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・7枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・7枚




