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ボスカマキリの横に薙ぎ払った鎌を躱しながら、アレクは後ろに回り込むと……。
「はぁっ!」
【強撃】を発動し、後脚の1本に棍棒を叩きつけた。
岩でも砕くような轟音が辺りに鳴り響く。
【強撃】プラス【祈り】付きだ。
その威力は相当な物だろう。
だが……。
「ちぃっ! オーギュスト!」
直撃させたものの、その硬さから逆に弾かれてアレクは体勢を崩しかけている。
とは言え、それは先程から何度も繰り返しているから想定できている事で、アレクの反対側からオーギュストが加護を乗せた斬撃を見舞い、ボスの気を散らしている。
良い連携だ。
そして、重装2人の攻撃の合間をついて、軽装3人がコツコツとつっつきその2人の援護を行っている。
「うーむ……」
距離を取らずに敢えて近い間合いを保ち相手の攻撃を引き出してから、それを起点に一連の攻撃を行う。
サイモドキの時も使った戦い方だ。
あの時はアレクが盾で攻撃を受けていたが、例えるならサイモドキの攻撃は鈍器で、こちらは刃物。
無いとは思いたいけど、切り裂かれる可能性を考慮して、回避優先にしたんだろう。
この戦い方は本陣のあったところじゃー出来ないな……。
今行われているのは、ボスの体表……甲殻でいいのかな?
それを砕く作業だ。
竜種の倒し方を昔教わったことがある。
まずは、硬く魔法を弾く鱗を砕くことが討伐への第一歩だそうだ。
鱗を砕くことで、まともに攻撃の通じる皮膚を露出させる。
そうすることで、魔法も通じる様になり、そこから徐々に傷を広げていく。
手間がかかるが、そうでもしないとまともに倒すのは難しいらしい。
亜竜の場合も同様で、まずはあの甲殻を砕く事から始める。
斬撃よりも硬く重たい鈍器での方が適しているため、アレクがメインで他の皆はサポートだ。
……ただ、始まったばかりとはいえ捗々しくない様子。
当ててはいるけれど、どれも単発で終わり、中々攻め込めていない。
こうなったら俺の四つ目のお仕事にチャレンジするべきか……?
「っ!?」
フィオーラの放ったボール状の魔法が、鎌を振り切ろうとしたボスの側面で炸裂した。
甲殻があるから魔法自体は効果が無いが、物理的な現象……例えば今のような破裂の衝撃や、熱、風などは作用する。
ダメージを与える事は出来なくても、それで隙を作ったりは出来るようで、徐々にボスの動きを捉えてきたフィオーラも参戦してきた。
上空から自由に動き回り援護する事で、アレクの攻撃の回転も上がり、わずかにだがヒビを入れる事に成功している。
となると……俺も少しずつパターンを読めてきたし、そろそろだな。
◇
フィオーラも攻撃に加わってからしばし。
【紫の羽】で麻痺した魔物達は依然倒れたままだ。
倒してしまうと、リポップした魔物は麻痺にかかっていない状態で現れる。
……まぁ、それは当たり前だが、そうなってしまうと麻痺にかかるまでの間、ボスと合わせてその魔物達の相手もしなければいけない。
このボスカマキリがどのように魔物達と連携するのかはわからないが、この1体でも手強いのだから、厄介な事には違いない。
そのため、魔物達は放置したままで、さらに【紫の羽】の麻痺毒を上がけし続けている。
「……まだまだ動きそうにはないかな?」
ボスの上の天井近くまで高度を上げて広範囲を見通すが、目につく範囲の魔物全部倒れている。
素晴らしい威力じゃないか……まぁ、相変わらずカマキリは絶好調に鎌を振るっているが……。
なにはともあれ、部屋の魔物は無効化出来ている。
壁の向こう側には魔物はいるが、こちらに向かってくる気配は無い。
そして、ボス戦は決め手に欠く状況。
俺のこのボス戦での四つ目の役割……隙を見て介入……これにチャレンジする段階に来たな。
先程から観察を続け、どこを狙えばいいかは大体わかっている。
「よっ!」
やや弱めの照明を撃ち出す。
俺も参戦する合図だ。
同じく宙にいるフィオーラと目が合うと、彼女は小さく頷いた。
彼女は牽制で鎌を狙って魔法を放っていたが、これから俺が狙うのも鎌だ。
【風の衣】と【琥珀の盾】を発動しているが、それでも余波を食らう事は避けたい。
その為にも狙いを変えてもらう必要があるが……伝わっている様だ。
上からタイミングを見計らい……今っ!
【足環】を発動し、ボス目がけて突貫した。
狙いは振り上げた腕だ!
「ほっと……ぬわわわわわ……!?」
狙い通りカマキリの腕に【足環】で取り付くことが出来たのだが、俺ごと一緒に振り抜かれてしまった。
今までの魔物だと、背中なり腕なりに取り付くと、そちらを気にして動きを止めることがあったが……魔王種兼亜竜のボスには何ら影響がないからか、はたまた虫だから他の魔物とは思考が違うからか……アレク達が距離を取ってくれていたから、ぶつかるようなことは無かったが……ちょっと危なかった!
ともあれ、取り付く事は出来たし攻撃開始だ。
「ほっ!」
【影の剣】と【緋蜂の針】を発動する。
亜竜の甲殻は確かに体を覆っているが、それでも全身全てがそうだという訳じゃない。
今から狙うのはその覆われていない部分……関節の裏だ!
関節まで覆われていたら曲げられないしな……色は黒だが、テカリも無いし甲殻とは別物だという事がわかる。
【影の剣】と【緋蜂の針】……さらにヘビ。
このそれぞれ性質の違う3種の攻撃は、どれかは通じるはずだ。
理想は切断だが、それが出来なくても攻撃を続ければ動きに支障が出るだろう。
そうしたら、アレク達も攻撃に専念できるだろうし、より安全な討伐が可能になる。
うむ。
結構重要な役目な気がする……!
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




