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「……あれ? 向かう場所違うくない?」
俺を抱えて【浮き玉】に乗ったテレサは、北に向かい始めた。
てっきり本陣に向かうと思ったのだが、どうやら先にアレク達と合流するようだ。
先程のルバンの魔法であの変なのに気づいたのか、彼等も本陣に向けて移動している。
もう一回彼等を【風の衣】で吹っ飛ばすのかな?
「ええ。恐らく本陣を捨てて、開けた場所に移るはずです。アレク達にも伝えて、まずはその場を確保しましょう」
わざわざ造ったあの場所を捨てるのか……。
「うん……。ね、テレサもアレが何かわかってるの?」
魔虫種って事くらいしか俺にはわからない。
魔力も何も見えないし、強さがわからないから気にはなるが、ルバンといい只事ではない様子だ。
ここまで来たらあれがここのボス……魔王種なんだろうってのは俺でもわかるが、それでもここまで警戒するような相手なんだろうか?
「私は直接対峙した事はありませんが、オオザルと一緒でアレも森林の深い位置に生息する、オオカマキリです」
まんまなネーミングだ。
まぁ、カマキリとか強いし、それの魔物版ともなれば警戒するものなのかな……?
カマキリの方を見ると、さらに本陣の方へ移動をしている。
ルバンの魔法で接近に気付いただろうに、一切迎撃を行っていないのが気になるが……飛ぶのかな?
いや、それなら撃ち落とせるだろうし……。
などと考えていると、アレク達のもうすぐ側まで来ていた。
本陣に向かって走っているが……。
「あれーく」
手を振りながら呼びかけると、こちらに気付いた様で足を止めた。
大きな怪我こそ無いが、あちらこちら鎧が破損しているあたり激闘だったんだろう。
「降りましょう」
「うん」
彼等の補給もしないといけないしな……忙しくなりそうだ。
◇
竜種。
強靭かつ巨大な肉体に魔法を無効化する鱗を持つ、この世界の頂点に君臨する種族だ。
物語だと空を飛んだりするが、実際は流石にそこまでの化け物っぷりではないらしい。
それでも、単純にデカくて硬くて重いってだけでも十分な脅威になる。
アレだね……ゾウさんが強い的な。
そして、強力なブレスや、人が使う様な魔法こそ使わないが、魔力のごり押しでそれに近い現象を起こしたりもするそうだ。
そのエネルギー源になるのが、竜核と呼ばれる臓器だ。
極論だが、竜種と他種との区別は、その竜核の有無と言ってもいい。
「……亜竜?」
アレク達と合流を果たした後、【隠れ家】から急いでポーションや予備の装備を取り出して、装備の交換作業等をしていると、本陣から移動してきたジグハルト達もやって来た。
装備は置いたままだが、ポーションはしっかり持って来たようで、ジグハルトとフィオーラも回復を行っている。
本陣を目指していたカマキリは、狙いは俺達なのか、壁から降りてこちらに近づいて来ているが、随分ゆっくりとしている。
その間にアレは何なのかと聞くことにした。
亜竜か……ゲームとかだと、ドラゴンじゃ無いけれど、ドラゴンっぽい姿だってことで、ワイバーンとかがそんな風に呼ばれることが多いな。
でもカマキリだぞ?
せめてトカゲとか、鳥類とか……どこか共通点でもあれば納得できるけれど……。
「カマキリなのに?」
「姿は関係無いわ。あの体表……竜種の鱗とほぼ同種のもので、魔法を弾くの。竜核を持たなくても、あの鱗を持つものを亜竜と呼ぶようになっているの。……ダンジョンで出て来るとは思いもしなかったわね」
苦々しげに言うフィオーラ。
「!? ……そりゃエライ事だ」
あの黒いのがそれか……魔法が無効化って事はうちのメイン火力2枚が封じられてしまう。
とんでもないな……。
「俺もフィオも、溜めさえ作れりゃ亜竜程度はどうにか出来るんだが……」
ポーションをグビグビ飲んでいたジグハルトが加わってきたが……。
「あ、どうにか出来はすんのね」
「外でならな……。亜竜を押さえながら他の魔物の対処となると手が足りない。……どう倒すかな」
「あー……なるほど」
サイモドキの時のアレみたいのなら通用するのかもしれない。
ただ、あの時は溜め時間は10分そこらだったが、そのための準備を事前にしっかりやっていた。
それ抜きでとなるとどれ位かかるのかはわからない。
しかもそこらから魔物が湧いてくるダンジョンでとなると……ちょっと厳しいだろう。
それに……あのカマキリ。
もう200メートルくらいのところまで来ているが……壁に貼り付いていた時は何となく大きいなって程度だったが、高さは3メートルくらいで、長さはもっと……大型トラックくらいだろうか?
それが大きな鎌を構えながらジワジワと……いざ近づいて来ると結構な迫力だ。
2人を守りながらとなれば、あのカマキリの足止めは1人でやる事になってしまう。
その役割はアレクになるだろうが、いかに彼でも……ぬぬぬ。
「どう戦う? 足は速くないようだし、もう一度壁側にまで移動するか?」
カマキリの挙動を探っていたルバンが口を開いた。
壁際にあった本陣を捨ててここまで来たのは、あそこは雑魚を迎え撃つために造ったもので、あちらこちらに堀や塀があり、大物相手に走り回る様な戦いには向いていない造りだったからだ。
戦闘中は移動することになるかもしれないし、そこに引っかからないようにとここまで移動したが、あの移動速度なら、本陣から反対の西側まで移動するくらいは余裕がある。
「そうだな……南側の壁を目指そう。セラ、先導を任せられるか?」
結局入口まで戻ることになるのか。
ボスの間の4分の1を回った感じになったな。
「うん。任せて」
南側なら壁や通路越しに増援を呼ばれても、何が来るのか把握できているし、対処もしやすいだろう。
「急ぐ必要は無いぞ。折角姿を捉えているんだ」
「了解!」
俺の場合はゆっくりの方が難しかったりするが……まぁ、何とかしよう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




