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ボスの間での最初の戦闘を終えてからしばし。
その後も散発的に襲ってくる魔物の群れがいたが、どれもジグハルトが一掃していた。
魔王種の影響を受けて、強化されている魔物はいなかったが、それでも下層の魔物。
普通なら十分強敵なんだろうけれど……、このおっさんには関係無いようだ。
そのまま魔物を蹴散らし壁際に移動を続けていると、少し開けた場所に出たところで、先頭を歩くアレクが足を止めた。
戦闘を挟みながらだから少々時間はかかってしまったが、既にボスの間の半分近くまで到達しているはずだ。
このボスの間は、下層の手前全体くらいの広さがありそうで、ここまでにも何本もの通路を通り過ぎてきた。
迂闊に進み過ぎると、その通路から増援がワラワラやって来そうだな……。
「この辺でいいか? どうです、ジグさん」
「ああ……視界も取れるし足場も悪くないな。ここにしよう」
壁際で足場が良く、比較的高い位置にあり周囲を良く見渡せる。
さらに、通路からも程よく距離があり、増援がやって来ても気付きやすい。
ここが、ボスとの戦闘の本陣になりそうだ。
「んじゃ、オレは道具とか取って来るね」
前回は不意打ちから乱戦になってしまって、準備をする暇が無かったが、今回はしっかりやっておかないとな。
折角【隠れ家】に回復アイテム各種や予備の装備を積んでいるんだし、活用したい。
「姫、私も手伝いを」
「うん。お願い」
魔物が来る前にさっさと済ませようと、壁に手を触れテレサと共に【隠れ家】に入った。
◇
「オレはポーションを取って来るから、テレサはそっちの武器とかをお願い。台車使っていいからね」
「はい」
中に入るとテレサに指示を出し、俺はリビングの冷蔵庫の元へ向かった。
冷蔵庫のドアを開けて、中に入っていた2つの大きな袋をそのまま取り出した。
この中にポーションが入っている。
緑の紐の方が治療用で、赤い紐の方が魔力の回復用だ。
これはそのまま予備の装備と一緒に外に置いたままにする。
今回は前衛と後衛との間が短いから、俺が配達せずに自分で回復に戻って来ることになるからだ。
……まぁ、折角用意したけれど、使う機会は無い方がいいか。
「よっせ……!」
気合いを入れて持ち上げる。
それぞれ10本ずつ入っているから、結構な重さだ。
【祈り】で強化されていないと持ち上げられないかもしれない……。
「あ、そっちももういいかな?」
玄関まで行くと、予備の武器が積んである箱は既に台車から降ろされて、準備が完了していた。
その台車は俺が遺物を運びやすいように、室内用に作って貰った物であって、外、それもダンジョンのような荒れた場所での運用は想定していないからな……。
外でも使えたら、便利なんだろうが……まぁ、しゃーない。
「はい。槍と剣、予備の盾です。その袋もこちらへ……このまま出してしまいましょう」
そう言うとテレサは俺から袋を受け取り、箱の空いたスペースに置いた。
装備もポーションも、ストックはまだまだあるが……一先ずはこんなものか。
「出る前に……ちょっと待ってね」
ドアの覗き穴から外の様子を覗う。
普段のように天井で発動したわけじゃ無いから、外の様子も確認しないとな。
試した事が無かったから最近まで俺も知らなかったが、こうする事で外の様子を見る事が出来る。
何となく覗いてみたら、外の様子がわかったので驚いたもんだが……よくよく考えるとその為についているんだし、出来て当然といえば当然だ。
部屋のモニターの様にそこまで多機能では無いが、こういった時に便利だ。
「んー……問題無いね。行こう」
外ではアレク達が周囲の警戒をしている。
ジグハルトとフィオーラの姿が見えないが、足場でも作っているのかな?
ともあれ、まだ何も起きてはいないようだし、このまま出ても大丈夫だな。
◇
「ぉぉぉ……」
外に出ると、ちょっとした砦のような物が出来ていた。
縦横20メートルずつくらいはあるだろうか?
その周囲を高さ1メートル程の壁が塀のように張り巡らされていた。
おまけに堀のようなものまで出来ている。
そして、その砦の中央にそびえたつ2メートル程の高さの台が建っている。
そこがジグハルトのポジションか。
堀はただ周囲を囲っているのではなくて、所々渡れるように道が出来ている。
前の方にいるアレク達が、補給や回復でこっちに来る時はそこを通るんだろう。
魔物も通れそうだが、要は一直線に突進してこなければいいわけだし、落とす事よりも足止め程度でいいのか。
どうせ上から撃ち抜くんだろうしな。
領都周りの工事で、穴を掘ったり道を均したりする際に、魔法でドカンとやっちゃえばすぐなのに……と聞いた事がある。
その時は、魔法でやると細かい調整が難しいし、地盤を痛めて後々事故につながりかねないから、よほどの緊急事態を除けばやることは無いと言っていた。
ダンジョンだからそんなこと気にしなくていいんだろうな……。
だが、元から舐めプはしない人達だが、それでも彼等がここまでするって事は、やっぱり俺には気付けない何か脅威でも感じているんだろうか?
「セラ、道具類はそこの台の前に置いてくれ。わかりやすいだろう?」
「りょーかい」
ジグハルトの指示に返事をする。
もっとも運ぶのはテレサだが……。
「それにしても、あっという間に造れちゃったね……」
少々気まずくなり、話題を変えようとジグハルトに話しかけると、苦笑しながら答えた。
「フィオがな……。外じゃ大っぴらにやれる事じゃ無いし、張り切っちまってな……」
そのフィオーラは、風魔法か何かで塀の高さを揃えている。
「……ああ」
この人達、優秀だけれどたまにそういう所がある。
まぁ、余裕を持てているのは良い事か。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】・【浮き玉】+1【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




