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「んじゃ、改めまして……ほっ!」
中断してしまっていたが、改めて聖貨10枚を掴み、聖像に捧げる。
領主は、騎士団を始めとした領都でのガチャの使用者の大半は把握できている。
なんと言っても、領都の聖像は屋敷の礼拝所とリーゼルとセリアーナが持つ合計3つに、教会にある計4つだけだからだ。
領主側の聖像の使用には申請が必要で、教会へ出入りする人間はチェックしている。
……まぁ、俺が隠し持っている分もあるが、そうそう他には居ないだろうし、例外にしておこう。
それはさておき、ダンジョンが出来て以来数件のガチャの申請があったらしいが、その誰もがダンジョン探索に参加したメンバーでは無かった。
そして、当たり前といえば当たり前だが、探索したメンバーで教会に出入りしている者も無し。
つまり、このリアーナのダンジョンから産出された純度100パーセントの聖貨でガチャをするのは俺が初だ!
まぁ、だから何だって気もするし誰も気にしないだろうが、何となく縁起がいい気がする。
ドラムロールをよそに、そんな事を考えていたが、そろそろ止めるか……さぁ来い!
「ほっ!」
ドラムロールが鳴り止み頭に文字が浮かび上がった。
それと同時に目の前に現れた指輪を、空中でキャッチした。
「当たりね」
「指輪ですね……」
と、後ろで口々に言っている。
アレク達はいないが、何だかんだで賑やかになりそうだな。
「何だったの? その様子だと、お前も知っている物のようだけれど……」
「む……顔に出てたかな?」
持っていないけど、知ってる物だったからな。
驚きは確かに少なかったかもしれない。
俺が所持している未だ出番のない【琥珀の剣】と対になる物で、エリーシャの侍女たちが持っている……なんか盾!
「【琥珀の盾】だね。むふー……剣と揃っちゃったね!」
剣の方は細く華奢なデザインの指輪だったが、こちらは太く無骨なデザインだ。
セット効果なんかがあるわけじゃ無いが、ちょっと嬉しい。
これも左手に装備しようかな?
「あら、良い物じゃない」
「ね。防具だよ防具!」
魔王種の防具なんて贅沢かつ高性能な防具で普段から身を包んでいるが、どれだけ固めても十分なんてことは無い。
まして、こんな軽い指輪一つで、盾になるんだ。
カッコイイかはわからないが、俺的には大当たりだ!
この調子で残り9回……どんどん行くぜ!
「ほっ!」
魔鋼。
「はっ!」
魔布。
「ふんっ!」
魔木。
「きぇぇぇぇぇっ!」
魔鋼。
初回の勢いに乗ってドンドン回したけれど……おかしくねぇ?
聖像の前で呆然としている俺の背中に、後ろからポンポン言葉が飛んでくる。
「……ひどいわね」
「……ええ」
「確率は同等のはずだけれど……偏りが出るものなのね」
セリアーナとエレナはガチャの結果に呆れ、フィオーラはその偏り方に興味深そうにしている。
恩恵品と加護そして素材。
便宜上当たりや外れと呼んでいるが、確率は等分だと言われている。
つまり3分の1だ。
それが4連続ってどうよ?
この短い時間で聖貨50枚……なんかクラクラしてきた。
「姫、少し休憩されてはどうでしょう?」
爆死中の俺を見かねてか、テレサが休憩を提案してきた。
……それも有りかもしれない。
ちょっと落ち込んできてるし、残り5回もしっかり回すつもりだが、ちょっと気分転換したい。
「する。お茶欲しい」
「はい。すぐに淹れますね」
テレサがお茶の用意に席から立とうとすると、エレナが待ったをかけた。
「テレサ、私が淹れます。それよりも、セラに【琥珀の盾】の使い方を教えたらどうでしょう? 貴方なら使い方がわかるでしょう?」
「そうですね、使った事もありますし……ではエレナ、そちらは任せます。姫、まずは開放を済ませましょう」
流石元親衛隊……使用経験があるらしい。
「ほーい……」
それじゃーサクッと開放と下賜を済ませて、使い方を教わるか。
◇
「あ、こんな風になるんだね」
開放と下賜を済ませた後、テレサからのレクチャーが始まった。
【琥珀の剣】はその名の通り発動すると剣が現れる。
まぁ、一太刀で砕けるアレを剣といっていいのかはちょっと俺にはわからないが、見た目は立派な剣だ。
だが、【琥珀の盾】は盾と名前がついているが発動した際に現れるのは、盾では無くて半透明の薄い膜だ。
普通に発動すると、俺を包むようにその膜が展開されるが、剣の方と違ってこっちは対象を選ぶことが出来る。
発動した場合は一度攻撃を受けるとその膜が砕けて消えてしまうが、攻撃を弾き尚且つその砕けた膜の破片が相手に突き刺さるらしい。
【琥珀の剣】ほど命中率は高く無いが、攻撃を防ぎ反撃までするんだ。
優秀な防具といえよう。
その反撃機能や、こと対人に関しての防御性能から、護衛に持たせることが多い人気のある恩恵品らしい。
「姫の場合は自身の機動力が高いですから、一度攻撃を防ぎさえすれば十分でしょう。このまま姫が持つ事を薦めます。いかがでしょう?」
「ええ。それで構わないわ」
一応セリアーナは守られる側だし、彼女自身が使わなくてもエレナやテレサに持たせるってのも有りっちゃ有りだが、使用者は俺のままでいいらしい。
「ただ……セラ」
「ほ?」
俺がそのまま使っていいようだが、何か言う事でもあるんだろうか?
「それで防御が少しはマシになったからといって、調子に乗っては駄目よ? お前はまだゴブリンよりも脆いのだから」
「……ぉぅ」
ゴブリンよりはマシになった気はするけど……調子に乗るなってのは気を付けておこう。
ボスザル君の咆哮の件もあったしな……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】・51枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・3枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




