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ボスザルの遺骸を【隠れ家】に押し込み、その後はさっさと撤収することになった。
もともとボスを倒したら撤収する予定ではあったが、恐らく中層の魔物を一掃している。
数十分の間、奥からはもちろん、途中から手前の魔物達まで含めて、ひたすら集まってくる魔物を倒し続けたわけだしな。
怪我人も出なかったし、それなら今のうちに中層を少し調べてみては? と思ったが……予定は変えないそうだ。
堅実。
帰りは、行きと同じく一気に駆け抜けた。
やっぱりフィオーラの足に合わせていたが、魔物を倒す速度は帰りの方がずっと上だった。
行きも相当速かったが……ボス戦に備えて温存していたようだ。
そんなわけで、あっさりと帰還を果たした。
帰るまでが遠足……その言葉が頭に浮かんだが、この連中に油断なんてないか。
帰還後はまずは、騎士団本部の一室に向かった。
ここは、後ろ暗い……とまではいかないが、あまり公に出来ないようなアレやコレやをする場所で、出入りできる人間が限られている。
そこの壁に触れ、【隠れ家】を発動した。
ボスザルの遺骸は、手足や頭部は2人がかりでなら簡単に運び出す事が出来るが、やはり胴体がネックだ。
【祈り】までかけているが、それでもきついらしい。
最終的に倉庫から持って来たロープをかけて、引っ張っている。
中に入らないし、これならオーギュストも参加可能で、彼も一緒に汗を流しているが……【隠れ家】はドアを開けて当人達に入室の許可を出していれば、外から中の物を引っ張り出す事が可能らしい。
中からなら、ドアの外の様子も普通に見えるが、外からだと真っ暗で中の様子はわからず、壁に出来たドアの形の真っ黒な影にしか見えないそうだ。
マジックミラーみたいなもんだろうか?
あまり使う機会は無いだろうけれど、思わぬ裏技を見つけてしまった。
「確かにっ! コレは重いな!」
外から引っ張りながら、放り込む時は参加していなかったオーギュストが、その重さに目を白黒させながら、必死に引っ張っている。
アレク達は彼のその必死な様子を、自分達も必死になりながらも笑っている。
「がんばれー」
中から声をかけるが、果たして彼等に届いているんだろうか?
まぁ、面白いからいいか。
◇
ほっぺがいたいきがする。
……ってかいたいわ!
「なんじゃー!?」
と、叫びながら体を起こした。
……起こした?
「ようやく起きたわね」
背後からセリアーナの声がしたので振り向くと、彼女は呆れた様な顔をしている。
……どうしたんだっけ?
「お前……しばらくは起きていたけれど、すぐに眠り始めたのよ? リーゼルも来たし、話を始めるから起こしてあげたのよ」
ダンジョンから帰って遺骸を引っ張り出した後は、風呂に入って食事をして……報告をするために集まっていたが、リーゼルが何やら急遽入った用事で遅れてしまっていた。
で、彼が来るのを待ってからとなって……なるほど。
場所はいつもの談話室で、いつの間にやらリーゼルを始め、ダンジョンの事を知る領地のお偉いさんたちが勢揃いしている。
風呂に入ってサッパリして、お腹も膨れた事で居眠りしてしまっていたのか。
「……なんかほっぺ痛いんだけど?」
痛む両の頬に手を当てていると、セリアーナはフッと笑っている。
「千切れる前に起きられてよかったわね」
「ぐぬ……」
どこでも眠る俺もいかんのかもしれないが、セリアーナの起こし方もだんだん過激になって来ている気がする。
「セリア、その辺で……。遅くなって済まなかったね。今日は報告を聞くために1日空けていたのだが……どうしても僕が出る必要のある用が出来てね」
「いえ、それも領主の務めです。どうぞお気になさらず……」
謝るリーゼルにすかさずフォローを入れるオーギュスト。
「じゃあ、始めようか」
仕切り直すように、リーゼルが報告を促した。
◇
中層に現れる魔物自体に問題はない。
浅瀬と上層の魔物が混在しているが、強さに変化は無かったと思う。
強いて言うなら、中層の構造が俺達人間にとっては見通しが悪く、不利な事だろうか?
浅瀬もそうだったが、あそこは魔物にとっても動きを制限されていたが、中層はそれが無いし、相応の実力が要求されそうだが、あそこまで来れる様な冒険者なら十分戦えるだろう。
そこまではいい。
参加者からも特に質問は出ず、オーギュストの報告を黙って聞いている。
いよいよボスザルについてだ。
「魔王種だというのか?」
皆は驚きを隠せないようだ。
ボスの存在は以前の会議で伝えていたが、それがまさか魔王種だとは思わなかったんだろう。
俺も驚いたが、彼等は俺よりもずっとダンジョンの情報に精通している。
尚の事だ。
「セラ殿、【妖精の瞳】と潜り蛇たちを良いだろうか?」
「うん。ほっ!」
オーギュストの要請にこたえて、まずはアカメ達を襟から伸ばした。
『おおっ……』
普段からアカメ達は見せているが、3体揃ってってのは中々無いからな……ちょっと驚いている。
そして……。
「よっ!」
『…………』
【妖精の瞳】を見て、今度は黙り込んでしまった。
まぁ、結構グロイ目玉だしな……俺も気を抜くと自分でビビる事もある位だし、無理もない。
ともあれ、オーギュストはこれらを示しながら、戦ったボスザルについて説明を始めた。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・64枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・4枚




