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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
14章・リアーナダンジョン

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 とりあえずこっちの面子にも【祈り】をかけた。

 後はどのタイミングで戦闘に介入するかだ。


 ボスザルは先程からアレクばかりを攻撃している。

【赤の盾】の効果もあるだろうし、アレクが上手い事正面に立ち続けているからだ。

 それでも、時折俺とジグハルトにも視線を向けている。

 ジグハルトは単純に強いから、俺の場合は……変な生き物だとでも思っているのかな?

 この中ではオーギュストが一番警戒が薄い。

 止めは彼が刺すようだし、それ自体は歓迎するべき事か。


 しっかし……牙を剥いたゴリラってクッソ怖い顔してるな……。

 

 こちらもしっかりと照明の魔法が、ジグハルトの手によってあちらこちらにばらまかれていて、その怖い顔が良く見える。

 もっとも向こうは地面にまいているが、こちらは土柱にだ。

 まるで間接照明のようで、ちょっとお洒落じゃないか……。


 時折こちらを見てくるその顔から隠れるように、大きく回り込んでいく。

 アレクが正面でターゲットを取っているのもあるだろうが、照明の範囲から出ると俺への興味を無くすようだ。


 これなら、なんとかなるか?


 と考えてはいたが、ちと甘かったかもしれない。


 ボスザルの背後に回り込んだはいいが、どうしたものか……。

 今俺は高さ5メートル程の位置で止まっている。

 俺に攻撃が届く事は無いが、ボスザルの動きは激しい。


 離れて見ていた時はそこまで気付けなかったが、大分動き回っている。

 アレクが上手く正面で捉え続けているが、弓を当てるには厳しいだろう。

 となると、近接攻撃をする事になるが。


「さてどのタイミングで行くか……?」


 今俺は【妖精の瞳】もヘビ達の目も解除している。

 最初の一回以来咆哮を上げていないが、あれだけ距離があったにもかかわらず、俺は結構衝撃を受けてしまった。

 あの距離でああなったのだから、この距離だとどうなるかわからないからだ。

 両方発動していたからああなった可能性もあるが、違った場合は死にかねないし、目視で十分な距離だから、久々の自前の目のみで戦闘だ!


 ダンジョン自体が放つ光と、ジグハルトの照明で、決して明るくは無いが視界はそこまで悪くない。

 足元で繰り広げられているボスザルとの戦いも、その周囲もしっかりと見えている。


 だが……こえぇぇ。

 入手して以来、ずっと頼りっぱなしだったからな……。


「ぐぬぬ……っ!? 今のタイミングだったかな……?」


 つい今しがた、アレクがボスザルの右腕の振り下ろしを、盾で弾き返した。

 そして、オーギュストが左足を斬りつけているが、上から見ていると、アレクが盾で弾き返した際に、ボスザルの動きに一拍間がある事がわかる。

 わかるんだが……仕掛ける踏ん切りがつかない。

 物陰や背後に何かいても俺じゃ気づけないからな……。


「う……」


 アレクと目が合った。

 なにやら頷いているが……やれって事か?


 ……よし。

 いつまでもここでもたついていても仕方が無いし、次のタイミングだ。

 決めた!

 次で突貫だ!


 ◇


「はあっ!!」


 ラリアットの様に振り回してきたボスザルの左腕を、アレクは盾を両手で持ち、真下に叩きつけた。

 今までは上や内側に受け流していたが、今回は違う止め方だ。


 二足歩行の生物ならバランスを崩して前のめりになるだろうが、ボスザルは残念ながら違う。

 だが、それでも前に意識が向き、俺の不意打ちが決まる確率はさらに上がる。

 グッドだ、アレク!


「ふっ! たぁっ!」


 その隙を逃さずに予定通り仕掛けた。

 俺の位置からじゃ、ボスザルの体に隠れてオーギュストの姿は見えないが、彼もきっと合わせてくれるはず!


【足環】で肩甲骨あたりに掴まり、しっかりと狙い定めた蹴りを、後頭部に放つ……が。


「……あれ?」


【浮き玉】で加速しながらの、蹴りというより体当たりの様な方法を採れば別だが、【緋蜂の針】の蹴りは威力は基本的に変化がない。

 だから、少々窮屈な姿勢で放ったとはいえ、今の蹴りは威力が十分あったはずなのだが……全く効いた様子が無い。

 このターンでオーギュストが何かやって、後はボコるだけって考えていたのに……。


「……わっ!?」


 背中に回ってきた腕に驚き、蹴りを放ちながらその反動で一気に離脱をした。


 い……今のはビビった。

 骨格的に不可能なのか、俺がいた場所までは腕が届いていないが、視界の端にヌッと丸太のような腕が現れたんだ。

 我ながらよく反応できたもんだ。


 しかし……困ったな。

 ボスザルは短い首が分厚い筋肉に包まれていて、脳震盪とかは起こしにくいだろうとは思ったが……後頭部に蹴りを当てて全く意に介さないとは……。

 こちら側にはまだまだ余裕があるとはいえ、想定した勝ち方がちょっと難しいかもしれない。


 いっそ【影の剣】をと一瞬思ったが、この短い刃じゃ体に密着でもしないと大して傷を与えられないだろう。

 アレにくっつくのはちょっと怖すぎるし……。


 仕切り直しのためか、ジグハルトが威力を押さえた魔法をバラまいて牽制をしているが……一旦俺もそっちに戻ろうかな?

 指示を仰いだ方がいいかもしれない。


 ほんのわずかな時間だが、その場で留まりどうしたものかと考えていると、上から影が差したような気がした。

 明かりはあるから影が出来るのはおかしくないが、宙にいる俺に影ってなんだ?


 そう思い上を向くと……。


「ん? ……って……おわあああああああああっ!?」

セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・60枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚

エレナ・【】・【緑の牙】・1枚

アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚

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― 新着の感想 ―
[一言] セラ!上だ!(某ゲームネタ)
[気になる点] さては元気玉か!?
[良い点] ムカデじゃなくても浮遊中に今まではなかった上から現れる何かは悲鳴を上げちゃいますね
感想一覧
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