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会議は無事終わり、解散となった。
男性陣は本館に移ったし、むこうの食堂なり談話室でお酒でも飲むのかもしれない。
で、俺を含む女性陣はセリアーナの部屋に移動した。
今はエレナとテレサが皆の分のお茶を用意している。
そういえば、このメンツはお酒を飲む事はほとんど無いな。
夕食時とかはワインを飲んだりしているそうだけれど、それ以外はいつもお茶だ。
そう思い、テーブルや皆を見ていたのだが、その様子に気付いたのか、セリアーナが口を開いた。
「どうかしたの?」
「ぬ……いや、皆お酒は飲まないんだなって思ってね?」
「食事時には少し飲むけれど……わざわざ飲むことは無いわね。ほとんど乳母に任せているけれど、私もエレナも授乳する事もあるし、あまりお酒は良くないそうよ?」
「へー……」
妊娠中だけじゃなくて、出産後もなのか。
……まぁ、体内で作られるわけだし、控えた方がいいってのは道理だな。
「私も飲まないわね……。弱くは無いけれど、味があまり好きじゃないのよね……」
頷いていると、フィオーラも加わってきた。
「あらま」
味があまり好きじゃない……この世界のお酒ってどんな味なんだろう?
臭いだけで酔っ払いそうになったことはあるが、未だに口にしたことは無い。
【隠れ家】内にはお酒を置いているが、俺だけしかいない状況で酔いつぶれてしまったら大変だから、流石にあそこでチャレンジはしないが……。
舐めるくらいならいい様な気もするが、どうにも機会が無いんだよな。
ぬぬぬ……とどこかに機会は無いものかと考えていると、ふと視線を感じて顔を上げると、こちらを見ているセリアーナと目が合った。
呆れた様な表情を浮かべているが……。
「……お前、隠れて飲むのは駄目よ?」
バレバレか。
◇
雨季が来た。
屋根を叩く雨の音が、屋根裏にいると殊更うるさく感じる。
街の拡大と合わせて、以前整えていた水路などのインフラもさらに強化していて、大きな問題は起こっていないようだ。
リーゼルが代官としてこの街に来て以来、水路絡みの事故とか減っているなぁ……。
箱物建てたりと派手な事はしていないが、地味な事をしっかりやっている。
何と言っても公爵様だ。
いまさら箔付けとかする必要も無いし、実利を取っているのかな?
街に住む身としてはありがたい事だね。
「セラ殿、どうだろう? 何か変わりは見つかったか?」
さて、街の事はリーゼルに任せるとして、俺は俺でお仕事だ。
「いやー……なんもないかな?」
下から聞こえてきた声に、明かりで照らした天井を睨みながら答える。
「そうか……わかった。降りて来てくれ」
「はいよ!」
アカメ達に【妖精の瞳】も同時発動の本気モードで、先程から屋根裏をうろうろし続けているが、異常は何も無しだ。
異常といっても、雨漏りやシロアリなどじゃない。
なにか……こう……不思議な魔力的な異常だ。
ダンジョンが出来て以来、弱くはあるが、街に結界が発動した。
本当に弱く、何かが起きた事を知っている者が、そういう目で見でもしないと気付かない程度だが、それでも何かしらの力が加わっていることは確かで、発覚以来ダンジョンの探索や調査の合間を縫って、ジグハルトやフィオーラ達が色々調べていた。
いずれ張る予定の、本物の結界と干渉し合わないかの調査だ。
いや、本当に俺の知らないところでよく働いているよね……皆。
幸いそちらは何の問題も無かったし、一緒に調べた街の各施設も問題無かった。
だが、冒険者ギルドの地下にあるとはいえ、あそこはまだ魔力的には何も繋がっていない。
繋がっているのは、騎士団本部とここ、領主屋敷だ。
って事で、その両方の調査を行う事になったのだが、ダンジョンの存在を隠し通さなければいけない事がやはりネックになる。
騎士団本部ならまだ兵士がうろついていても問題無いが、屋敷の方はどうしても難しい。
警備の兵は常駐しているが、彼等は基本的に動き回らないからな……。
使用人の目もあるし、警備の兵もダンジョンの事を知らない者がほとんどだ。
一番異常を調べなければいけないところなのに、その調査が滞ってしまっていた。
そこで、俺だ!
最近はダンジョンに籠っている事が多く、屋敷にいない時間も多いが、基本的に屋敷のどこにいても怪しまれない俺なら、兵を引き連れてウロウロしていても、セリアーナに何か頼まれているとしか思われないだろう。
実際この調査はセリアーナに頼まれてのものだ。
自分じゃ気づかなかったが、俺は相当ダンジョン探索を楽しんでいたらしい。
彼女にしては珍しく、命令じゃなくて頼み事だった。
北館を除く屋敷全体を調べるわけだし、日数がどうしてもかかるが、その間ダンジョンはお預けになるわけだしな。
まぁ、残念な事は確かだが、上層の手前の調査は終えたし、俺の中でダンジョン熱はちょっと収まっている。
ルバンが来たら中層に繰り出すからまた燃え上がるだろうけれど……。
メリハリは大事だって事だな。
「差し当たって本館は異常が無い事はわかったな。残りの北館は我々が。南館はフィオーラ殿と一緒に任せるが、よろしいか?」
「よろしいよ。北館は大丈夫なん? オレは入った事無いからよくわからんけど……」
本館の調査は俺がいても3日程かかった。
広さは違うが大丈夫なんだろうか?
「ああ。向こうは南館と違って調度品も少ないからな。手間はかからないさ」
「ほう……」
彼等は団長サマ直属の調査にたけたエリート兵だし、その彼等が言うんならそうなんだろう。
北館に俺が入る事は今回も出来なさそうだな……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・60枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




