425
「次は俺だな」
アレクと支部長の報告が終わると、ジグハルトが自分の番だと口を開いた。
彼が調べていたのは、ダンジョンに一回性のボスの様な存在がいるのかどうか、だ。
俺が今一番気になっている事だ。
これのお陰で大分足止めされていたからな……!
ジグハルトは周辺領地から情報を募り、さらに色々な資料をフィオーラや、領都の錬金術師達と調べていた。
文官じゃなくて錬金術師なのは何か理由があるのかと思ったが、しっかりあったらしい。
ともかく、彼等の調査の結果、やはり何かボスともいえる様な存在がいる、という事がわかった。
周辺の領地のダンジョンは歴史が長く、すでに当時の事を知る者がいない為、アレコレ資料を照らし合わせる必要があったそうで、随分手間取ったとボヤいている。
いるかいないかってだけなら、書いてあったらしいが、これから倒しに行かなければならないかもしれないし、情報を精査していたんだろう。
……俺がダンジョンを堪能している間に、そんな苦労話が……。
「話はわかったが……どうやって確信を持ったんだい?」
話を聞き、確認するようにリーゼルはジグハルトに訊ねた。
「ああ、どこの領地も結界に用いた魔物の事は記録にある。ただ、それとは明らかに違う種類で、討伐記録が存在しない魔物から作られたであろう、強力な武具……もしくは魔道具が存在するんだ」
「……なるほど」
その言葉に、思い当たるふしがあるのかリーゼルは頷いている。
ウチの場合だと、あのサイモドキを結界に使っているが、それから作れる武具……俺のあの変な帯みたいなのだな。
それとは別系統で尚且つ強力な物が、由来不明で存在しているのか。
基本的に、魔王種を始めとした強力な魔物の討伐は領地の武力の証明になるし、隠す理由は無い。
それにしても、強力な武具や魔道具か……。
フィオーラも混ざり所見を述べている向こうの事は置いておこう。
「ねぇ?」
隣に座るセリアーナの腕をつつくと、こちらを見た。
「なに?」
「ゼルキスにもそういうのあるのかな?」
「……領主では無くて、ミュラー家の当主に就任した時に受け継がれる槍があるわね。ソレの事かしら……?当主への就任式の時以外は宝物庫にしまわれていて、私も一度しか見せてもらった事が無いけれど」
「へー……」
あるのか……。
でもセリアーナでもそれって事は、俺が見るのは難しそうだな……当主交代の時ならいけるか?
◇
「それで、その大物は、ウチの戦力で討伐は可能なのかい?」
俺が謎アイテムの存在に気を取られている間に、討伐の可否にまで話は進んでいた。
どうやらボスがいる事は確定らしい。
そして、中層と下層に1体ずついる可能性が高いようだ。
階層分けはあくまで便宜上俺達が勝手に呼んでいるだけだし、意味は無いのかもしれないが、結構浅い所にいるんだな……。
そして2体か……。
「倒すこと自体は可能だろう。精々並の魔人と同程度だ。そのダンジョンに出現する魔物に合わせた種類が出るようだ。妖魔種なら妖魔種、魔獣種なら魔獣種って具合だ。だが……ココの場合はちと読めんな」
ジグハルトのその言葉を聞き、リーゼル達は出現する魔物の種類が書かれた資料に目を落とした。
俺はソレを見なくても、何が出て来たか覚えているが……雑多だもんな。
俺は見ていないが魔虫も出るし、なによりまだ中層以降にどんな魔物が出るかも不明だ。
ジグハルトは倒せると疑っていないようだが、何が出て来るのか想像がつかない。
リーゼルも同じことを考えたのか、しばし考えこんだ後、再び口を開いた。
「ダンジョンを一般に開放する前に討伐をしておきたいね。ジグハルト、君が必要だと思う戦力は?」
「アレク、俺、フィオ、セラ、出来ればルバンとオーギュスト。それとセラの護衛にテレサかエレナだ」
あ、俺も入ってる……まぁ、当然だな!
「オーギュスト?」
「はっ。私も街を外せるよう調整しましょう。だがジグハルト、人数が少ないがそれでいいのか? 中層以降の探索はある程度のバックアップ用の部隊を連れる事が多いと聞くぞ?」
リーゼルに出られるかを聞かれたオーギュストは即答こそしたが、それでも疑問はあるようだ。
「確かに探索をするなら人手がいるが、今回は倒すだけでいいし、むしろ少人数の方が動きやすい。騎士団から中層を安全に探索できるだけの兵を抜いてきたら、短時間とは言え街に負担が出るだろう? 上手く核を避けて遺骸を残す事に成功しても、運搬方法は考えがある。問題無いさ」
尤もジグハルトもすぐに答えているし、その辺は想定済みなんだろう。
そうか……ボスはダンジョンに出現するわけだし核を潰しちゃえば素材が残らないのか。
倒し方を気を付けないと、もったいない事になってしまうんだな……。
運搬方法は俺の【隠れ家】だろうけれど、支部長がいるから誤魔化したのかな?
「ふむ……ならば問題無いな。セラ殿、君も参加することになるが、構わないか?」
「ぬ? うん。大丈夫だよー」
「わかった。アレクシオ隊長も含めて、こちらで姿が見えなくても問題無いように調整しておこう。ルバン卿も……そうだな、雨季の間の直通ルートの確認、とでも言って呼べばいいか?」
そう言うと、オーギュストはアレクの方を見た。
「そうだな……あいつは自分で動くことを厭わないし、問題無いだろう」
アレクもその案に頷いている。
雨季だと中々外に出る機会はないからな……これなら自然か。
……自然なのか?
まぁ、いいか。
それにしても、よくこんなスラスラ嘘を思いつくな……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・60枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




