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「おや? 話はもういいのかい?」
リーゼルは、部屋から出てきた俺達を見て、そう言った。
彼の机の上にはテレサが王都から預かって来た手紙が広げられ、テレサはそれの説明をしていたようだ。
「疲れたから眠りたいんですって。テレサ、あなたはどう? セラから聞いたわよ。連日随分な長時間移動を行っていたのでしょう?」
セリアーナは肩を竦めながらそう言った。
そんな事言った覚えは無いが……自然にここを離れる口実には丁度良いんだろう。
「ああ……そうだね。説明が必要な個所はもう聞いたし、君も下がると良い。ご苦労だったね」
セリアーナの言葉を聞いてリーゼルは頷き、テレサに下がる様に言った。
そこまで急ぎの内容のは無かったはずだし、そもそも王都側はリアーナ領まで10日そこらはかかると思っている。
今日1日くらいゆっくり休んでからでも何の支障も無いはずだ。
「わかりました。それでは失礼します。奥様、姫、参りましょう」
テレサはリーゼルに一礼すると、その場から離れこちらに向かってきた。
そしてそれを待って、俺達は部屋を出た。
「私達はここで失礼するわね」
「じゃあな」
そう言うと、2人はそのまま地下訓練所がある方へ向かっていった。
さっき言ってたように、聖貨を取りに行くんだろう。
◇
2人と別れた後、俺達はセリアーナの部屋に向かった。
何だかんだであそこが一番内緒話には都合がいいからな。
「テレサ、少し部屋で話をするけれど、貴方は大丈夫なの?」
その道すがら、セリアーナがテレサを気遣うように、体調を訊ねた。
「問題ありません。移動中姫が起きている間は【祈り】を、睡眠時は【ミラの祝福】を受けていましたから。疲労は確かにありますが、それ程でもありません」
「そう……なら結構」
そして、そこで会話は終わり無言のまましばし歩き、部屋の前に辿り着いた。
テレサがドアを開けて中に入ると、エレナが待っていた。
普段はこの部屋にいる乳母達も子供達もいなかった。
隣の子供部屋かな?
これから話をするために、移らせていたんだろう。
「お帰りなさい。セラ、テレサ」
俺達はエレナに出迎えられ、そのままさらに奥の寝室へと移動した。
そして、各々いつもの席に着くと、まずはセリアーナが口を開いた。
「2人ともご苦労だったわね。これで私達は大分優位に立って動くことが出来るわ」
実に満足げだ。
「ねぇ、わざわざダンジョン用の聖貨を持って来たって事は、ダンジョンを出現させるためだってのはわかるんだけどさ。良いの? 色々と……」
「いいのよ……珍しいわね? 王都で聞かなかったの?」
「王妃様になら聞いてはみたけど、セリア様に直接聞けって……」
テレサもそう言っていた。
その事を思い出し、彼女の方を見ると、フッと笑っている。
「そうなの? なら仕方ないわね……」
セリアーナは口では仕方なくと言っているが、嬉々として説明を始めた。
王都でテレサが言っていたように、自分で説明したかったのかもしれないな。
◇
セリアーナの説明を要約するとこうだ。
新規ダンジョンは、国どころか大陸全体で見ても稀なことで、王家主導でそれが確実になっているリアーナは、各国から注目されていたそうだ。
だから、ウチの動向を探るために、商人や冒険者がちょこちょこ出入りしているのは俺も聞いている。
魔王種を倒し、ダンジョンを出現させる準備が整ったリアーナは、春の雨季が終わると王家から聖貨が運ばれる。
大部隊で国内各領地に王家と騎士団をアピールしながらの移動になるので、少々時間がかかるが、時期的に秋の1月頃に到着し、ダンジョンの出現及び一般開放はそれから1ヶ月ほど後だと想定されている。
秋の雨季の少し前ってタイミングだな。
しかし、今回俺が運んだことで、その予想を大幅に覆す事が出来た。
ダンジョンの出現……その大きなビジネスチャンスに合わせて、国内外の冒険者を始めとした多くの人間がやってくる。
中には、いずこかの息のかかった、よからぬことを考える者達もいるだろう。
そいつらは、リアーナに混乱をもたらす事が狙いで、ダンジョンでの事故に見せかけて色々やりかねない。
直接手をかけなくても魔物を使った、所謂MPK等だ。
だが、これからの半年近い猶予で、そういった事への備えも出来るようになる。
単に道中での襲撃による、聖貨紛失の可能性を恐れてってだけじゃなかったようだ。
他勢力からの、領内への工作を潰す為でもあったらしい。
セリアーナは、初めて俺と会った時にこの可能性を思いつき、自身で【浮き玉】を操りその性能を確認したことで、確信を持ったんだと。
「わかる? 大陸中を騙す事が出来るの。お前のお陰よ。よくやったわね」
俺の頬に手を当てると、珍しくストレートに褒めてきた。
少々規模が大きすぎる気はするが、長い事仕込んだ悪戯が成功したようなものだからな
セリアーナの性格を考えると、面に出すことは無いだろうが、そりゃー大喜びだろう。
さらに……。
「屋敷を中心とした主要施設の地下通路網のお陰で、もうダンジョンを出現させる予定地の整備も完了しているわ。お前たちが王都に向かってからすぐに作業を始めさせていたの。後は仕上げだけ」
「……あれ? じゃぁ、もうすぐダンジョンが……?」
「ええ。作業に従事した者達も、大半はあくまでその作業は事前の準備だとしか思っていないわ。フィオーラ達が上手くやってくれているのよ。そこまで準備をしても、聖貨が無ければダンジョンは出現しないのだけれど、言ってしまえば、聖貨さえあればいつでも出現させられるわね」
人員の差配などはリーゼルが引き受けていて、各作業ごとに人員が重ならないように配置していて、そのため、情報の共有もされずに上手く隠せているそうだ。
「だから、今日にでもこのリアーナにダンジョンが出現するわ」
そう言うと、目の前に置かれたカップを手にし、一息ついた。
「!?」
てことは、今正に謎の儀式でもやっているのか!?
「ああ、でも見に行くのは駄目よ?」
見たいと口に出そうとした瞬間に、先にセリアーナから駄目だと言われてしまった。
「……なんで?」
ダンジョンが出来るとかもろファンタジーじゃないか……。
「あれはフィオーラ達でも何が起きるかはっきりとは分かっていないそうなの。成功はするでしょうけれど、余計な者を近づけない様に言われているわ。だから、我慢してお前は今日は寝ておきなさい」
「むぅ……まぁ、そういう理由なら……」
聖貨1万枚のパワーだ。
邪魔してなんか変なことになったらいかんか……残念だけれど、我慢しよう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・0枚




