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領都への入場こそ門を通る正規のものだったが、後はすぐに高度を上げて、まっすぐ屋敷に向かった。
そして、屋敷の門の前には既に使用人達が俺達の到着を待っていた。
まぁ、これはセリアーナがいるし、毎度の事だから予測通りともいえる。
そして、そのまま風呂と食事をとると、リーゼルの執務室に報告に向かう事になった。
テレサは人心地付いた事で少々眠そうな顔をしているが、大丈夫だろうか?
執務室には既にリーゼルとセリアーナが待っていた。
そして、オーギュストは毎度の事だが、珍しい事にジグハルトとフィオーラもいる。
……ジグハルト達は聖貨を受け取りに来たのかな?
「よく帰って来たね。テレサも疲れているだろうが、報告だけは頼む。その後は休んでもらって構わない」
「はい。お気遣いありがとうございます」
リーゼルの言葉にそう返し、王都で預かって来た手紙を渡している。
俺はその様子を眺めながらフヨフヨ浮いていたが、いつの間にか側に寄って来ていたセリアーナに袖を引かれた。
「ん? なに?」
だが、セリアーナはそれに答えず、リーゼルに向かって言葉を投げかけた。
「リーゼル。報告はテレサだけでいいでしょう? 隣の部屋を借りるわよ」
「うん? ああ、そうだね。でもセラ君も疲れているだろうし、あまり我儘を言ってはいけないよ?」
「私が我儘なんて言う訳ないでしょう? 行くわよセラ。フィオーラ、ジグハルト、貴方達も来なさい」
……俺には今まさに我儘を言っているように見えるんだけど、これは旦那さん的にどうなんだろう?
そう思っていると、セリアーナは俺の腕を掴み、隣室に向かって歩き始めた。
いつになく強引な気がするが……それよりも。
「あっ……と……、テレサ! テレサも疲れてるし無理しないでね」
一応テレサの主は俺だし、リーゼルが相手だし心配は無いと思うが、無理な時は休んでいいと言っておかないとな。
「ええ。ご安心ください。お気遣いありがとうございます」
そう言って、にこりと笑っている。
今日も夜明けからスタートしていたのに……タフだな。
セリアーナに腕を引かれながら俺はそんな事を考えていた。
◇
「さて、セラ」
隣の私室に4人で入ると、セリアーナは腰を下ろさず立ったままだ。
てっきり施療でもさせるのかと思ったが……なんだろう?
「聖貨はちゃんと受け取ってきたわね?」
少し声を落として、聖貨について聞いて来た。
「うん。100箱1万枚、ちゃんと受け取って来たよ……?」
と言っても使うのはダンジョン予定地でだ。
ここで聞いてどうするんだろう。
「結構……2人とも、いいわね?」
セリアーナの言葉に頷くジグハルトとフィオーラ。
そして、壁の一角に向かい歩いていった。
この2人がセリアーナと悪だくみってのもちょっとイメージがわかないけれど……何するんだ?
「……あ」
2人が何やら壁を弄っていたかと思ったが、その場所がぱかっと奥に開き、通路が現れた。
ここにもあったのか……隠し通路。
この屋敷には、俺も把握できていない隠し通路がいくつかある。
これもその一つだろう。
「さあ、急ぎましょう」
そう言うと、セリアーナが先頭に立ち、早足で通路に踏み入った。
「ねぇ、何を急いでるの?」
そもそもどこに向かっているんだろう?
「屋敷から各主要施設に地下通路をつなげる計画は知っているな? これもその一本で、冒険者ギルドの地下に繋がっている」
「へーありがと、ジグさん……って遠いな!? そりゃ急がないと……でも、何でそこに?」
「そこまでは行かねぇよ……。奥様、そこだ」
薄暗い廊下にはいくつか扉が並んでいたが、セリアーナがそのうちの一つ前を通りがかったところで、ジグハルトがストップをかけた。
ドアを開けると真っ暗なままで、フィオーラが照明の魔法を使った。
部屋の中は何も置かれていないが……ここで聖貨を出すのかな?
「セラ【隠れ家】を。ここに聖貨を出すわ」
やはりか。
でも、こんな何も無い所でどうするんだ?
◇
「これで全部だな。奥様、フィオ、数はどうだ?」
聖貨が入った木箱の最後の一つを抱えたジグハルトと共に【隠れ家】から出ると、セリアーナ達が床に直接座って中の聖貨を数えていた。
これを受け取った時に俺達も数えていたが、2重チェックは悪くない。
「どれも問題無いわ。ジグそれもお願い」
「おう」
ジグハルトはフィオーラの前に箱を置くと、座り込み一緒に枚数を数え始めた。
自分の分は終わりと、セリアーナは立ち上がりスカートを叩いている。
「ねぇ、セリア様? 聖貨はここに保管するの? 人は来ないかもしれないけど、不用心過ぎない?」
泥棒なんてこんなところに来るとは思わないが、それでも聖貨1万枚をここに置いたままにするのはちょっと……。
「問題無いわ。ここに置くのは今だけよ。2人とも数え終わったかしら?」
「ええ。1万枚、確かにあったわ」
「結構……。戻りましょう」
セリアーナはフィオーラの言葉に頷くと、再び早足で来た道を引き返し始めた。
本当に置いてっちゃうのか?
◇
リーゼルの私室に戻り、隠し通路を塞いだ。
部屋を空けていたのは10数分程度だったと思うが、中には誰も来ていないようだ。
塞がった通路を見て、セリアーナは腰に手を当て満足気に頷いている。
そして、こちらを向きこう言った。
「セラ、今あった事は秘密よ? いいわね」
「うん……いや、それは良いんだけれど、アレは置いたままでいいの?」
この3人は何でこんなに平気なんだろうか?
一財産……そんな言葉じゃ足りないよ?
「セラ、アレはこれから私とジグが、別の通路から回収に向かうから心配いらないわ」
「あ、そうなの?」
フィオーラの言葉にちょっと気が抜けるのを感じた。
そか……いくらなんでも放置はしないよね。
「そう言う事。さ、行きましょう」
そう言うと、セリアーナはテレサ達がいる隣の執務室へ歩き始めた。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・0枚




