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王妃様の私室に到着すると、そこから更に奥にある寝室に向かった。
やはり施療を?
と思ったのだが、護衛について来た親衛隊の隊員達が、壁側にある棚の一つを押し込んで行くと、ズズズっと重い音を立てて壁ごと奥に開き、魔道具の明かりに照らされた通路が現れた。
「隠し通路だ……」
リアーナの屋敷にも地下に繋がる通路を始め、隠し通路はあちらこちらにあるが、あっちは木造だ。
それに対してこちらは石造りの、重そうな壁……ロマンだ。
「貴方達はここで待っていなさい。さあ、行きますよ」
護衛達にこの場で待つよう命じると、王妃様はそのまま通路に踏み入った。
テレサもその後を俺を抱えたままついて行くが……先頭が王妃様で良いんだろうか?
石造りの隠し通路と言うと、ジメジメとして、埃やカビの匂いが漂っているイメージがあるが、そんな事は一切ない。
鼻をスンスンと鳴らしていると、テレサがどうしたのかと聞いて来た。
「全然臭くないね。掃除しているの?」
隠し通路なのに、人を入れるんだろうか……?
「正確には隠し通路では無くて、隠し倉庫ですよ。王妃としてではなく、私個人の資産をここに収めているのです。もっとも、隠し倉庫と言っても陛下や親衛隊の様に、知る者も多いですが。使用人でもここを知る者はいますし、彼女達が掃除も担当しています」
「そーなんですね……」
前を歩く王妃様の言葉に頷く。
隠し通路だろうと倉庫だろうと、「王妃の寝室」なんてところに繋がっている廊下が不潔じゃ、あまりよろしくないか。
それにしても倉庫か。
きっとそこに俺が運ぶ物が置いてあるんだろうけれど、わざわざ隠す様な物なのかな……?
疑問に思いつつも廊下を進み、階段を下りて、またしばらく歩くと、廊下を塞ぐ大きな扉が現れた。
扉の手前にはイスとテーブルが設置されている。
中に入らない人用かな?
本棚もあるし、ここで時間を潰すのだろう。
……優雅だな。
「ここに入る前に確認です。セラ、貴方は秘密裏に物を運ぶことが出来るのですね?」
「ぬ……。はい。いくつか制限はありますけど……」
「結構。昨年、貴方に届けてもらった手紙に、運ぶ手段があるから準備を前倒しして欲しいと書いてありました。半信半疑でしたが、元々夏には運ばせる予定でしたし、そのまま用意させました」
ウチ側から要求をしたのか……何を要求したんだろう?
「……面白い加護を持っていますね。ですが有用過ぎでもあります。セリアの言う事をよく聞いて、上手く隠すのですよ」
「はい……」
「テレサ、私はここで待ちます。後は貴方達で片づけなさい」
「お任せください。セラ様、行きましょう」
さくさくと話を進める2人に何も言えずに頷いてしまった。
「あ、うん……」
結局、ここに来ても何を運ぶのか教えてもらっていないが……まぁ、中に入ればわかるかな?
◇
中には壁一面に頑丈な戸の付いた棚が並んでいた。
あの一つ一つにお宝が収められているんだろう。
だが、お目当ての物はそれ等では無く、目の前の空いたスペースに置かれたテーブル……ちょうどリーゼルの部屋で見たのと同じくらいのサイズのそれに積まれている、小型の木箱の山だ。
そちらに近づくと、テレサはテーブルの上に俺を下ろした。
「コレが俺の運ぶ物なの?」
「はい。リアーナのダンジョン用に王家から下賜される、聖貨1万枚です」
「へー…………!? 待って!?」
今テレサは何と言った?
聖貨1万枚?
これが?
「まずは数を数える事からですね。あの木箱1つに100枚ずつ入っているはずです。全部で100箱。王妃殿下を外で待たせるわけにもいきませんし、手際よくいきましょう」
テレサは待ってくれない様で、俺に指示を出すと自身も作業を開始した。
「あ、うん……そうだね」
確かに王妃様を外に突っ立たせ続けるってのは、いかんよな。
気を取り直して、俺も箱の蓋に手をかける。
「…………ぉぉぉ」
箱の中は10枚一束で仕切られて、一目でわかるようになっている。
その束が、10列……。
俺が今まで一度に見た最高枚数は、孤児院を脱走した時に失敬した38枚で3回分だった。
それに対して、ここにある分は全部で1000回出来る計算だ。
なんだろう……何というか……この複雑な気持ちを表す言葉が思いつかない。
アホな事考えていないで、俺も数えよう。
この山を見続けるのは目の毒だ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・0枚




