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書籍版「聖貨を集めて、ぶん回せ!」発売中です!
「何か随分恐縮されちゃったね……。お礼だったのに悪いことしたかな?」
ルーイック家からの帰りの馬車で、屋敷でのやり取りの様子を思い出した。
王都の屋敷を任せられているのは、現領主の甥で、身分的にも俺やテレサに気を遣う様な必要は無いはずなのだが……。
「ルーイック家が治めるエルゴ領は、王国の西部で比較的魔物の勢いは穏やかですから、あの瓶1つで街一つ分の結界になります。具体的な見返りを期待してミツメを姫に譲ったわけでは無いのに、返礼の品にあの様な貴重な品を頂いたとなると……。姫にとってはそうでなくても、周りから見たら価値が全く釣り合っていません」
「あー……」
言われてみれば、確かに。
価値に差があるっていうのは俺もわかっていたけれど、ルーイック家は領主一族だ。
個人間のやり取りじゃなくて、自治体相手と考えるべきだったか……失敗したかな。
大きい相手が個人に借りを作ってしまうのは上手くない。
テレサは渋い表情を浮かべる俺に気付いたのか、フォローするように微笑みかけてきた。
「ご安心ください。あちらに渡した手紙に、旦那様と奥様からの要望がいくつか書かれているので、それで相殺になりますよ」
「……ぉぉ」
「姫、それよりもあちらをご覧ください」
セリアーナ達のフォローに感謝をしていると、テレサは馬車の外に手を向けた。
そちらを見ると、なにやら工事中の屋敷がある。
ミュラー家とルーイック家との中間あたりで、かなり広い敷地だ。
前回はここを通った時は気付かなかったし、新築じゃなくて改築かな?
庭に外装用なのか資材が積んでいて、多くの作業員が忙しそうに働いている。
「あそこがリセリア家の王都屋敷になります。まだ改築工事の最中ですが、雨季前には完成の目途が立つそうです」
城の門に繋がる通りに面して、尚且つ城の近く。
流石は公爵家と言ったところか。
「恐らく、今後も定期的に姫と私は王都に出向く事になるでしょうから、私達の部屋も用意するそうです。家具は良い物を選ばせますから、楽しみにしていてくださいね」
「ほえー……」
気を遣わせてしまったかな?
まぁ、もう済んだことだし、セリアーナ達がフォローもしてくれたし、いつまでも気にしちゃいられないか。
「でも……お城が近いのは緊張するね。挨拶に行ったりするのかな?」
「旦那様の名代は屋敷の主が務めますが、姫は個人的に呼ばれることがあるかもしれませんね。もっとも、呼ばれても私室でしょうし、そこまでうるさくはありませんよ」
テレサはそこで区切り、ただし……と一つ前置きを付けた。
「恩恵品は外したままになるでしょうから、姫は王都では歩く練習をした方がいいかもしれません。……ああ、屋敷に着きましたね」
「ぉぅ……」
馬車を降りる前にしっかりオチを着けられてしまったが、まぁ、良いリフレッシュになったかな。
◇
さて、夕食後。
昨日は疲れを取るためにすぐ部屋に戻ったが、今日は談話室に集まりお茶をしながら話をしている。
じーさんがアリオスの街の側に現れたオオカミの魔王種の事で話を聞きたいと、夕食の席で言ったからだ。
あの街はゼルキス領だった時代に、じーさんが長く暮らしていたらしいし、思い入れがあるのかな?
申し訳ないが、その情報は嘘なんだ……。
一応セリアーナ達から公にしないことを条件に、事実を伝えていいと言われている。
じーさんは【影の剣】の事も知っているしな。
そんな訳で、公表している方ではなく、実際にはどこでどうやって倒したのかを説明した。
「……なるほど。前回の襲撃から少々ペースが速いとは感じていた。だが、あの街ならば有り得ることだと思っていたが……そう言う事だったのか」
説明を聞いたじーさんは何やらすっきりしたような表情を浮かべている。
前回の襲撃はクマの事だとして、あの街なら有り得るってのはどういうことだ?
「元々あの街はゼルキスの領都を守る為に、魔境の切れ間を敢えて作り、街に魔物が流れ込むようにしているのだ。今はまた各街の役割は変わっているかもしれんが、それでも戦力は揃っているだろう?」
「あー……なるほど」
どうやって誘導するのかはわからないが、魔物を追いかけるよりも、戦力の揃った場所で迎え撃つ方が効率がいい。
「しかし……オオカミの魔王種といえどジグハルトなら可能だろうとは思っていたが、セラが討ったか。その爪ならば不可能ではないだろうが……よくやったな」
そう言うとガハハと大口を開けて笑った。
「アリオス殿、この事はあくまで内密にお願いします」
「ふん……わかっておる。相性次第とは言え、魔王種を単独で討伐出来る者など迂闊に連れ回せぬからな。セリアーナもそれは望まんだろう」
テレサが念押しするとじーさんは気を悪くすること無く笑って答えている。
明日は城に行くから、夕食でテレサはワインを断っていて、じーさん達も彼女に倣ってそうしていた。
だから酒を飲んでいるわけじゃないんだが……随分とご機嫌だ。
「この人は騎士団に依頼されて対魔物の戦術研究も行っていますからね。貴方の様に今までにいないタイプの活躍は楽しいのでしょう」
オリアナさんはそっと耳元に顔を寄せ、そう囁いた。
「へー……じーさん、そんな事やってたんだね」
まぁ、今でも騎士団に顔が利くみたいだし、魔物との戦闘経験も豊富だ。
ある意味老後の道楽みたいなものか?
それにしても、今もガハハと豪快に笑っているじーさんが研究職か。
……俺の周りインテリ系脳筋が多い気がするな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・0枚




