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ペチンペチンという、何かを叩くような音と、頬の軽い痛みで目が覚めた。
あまり爽やかな目覚めとは言えないな。
やり直そう……。
「ぐぅ……」
「起きなさいっ!」
爽やかな目覚めをするべく、もう一度布団に潜り込んだのだが、業を煮やしたセリアーナによって引っぺがされてしまった。
貴重な冬の微睡みタイムに何てことを……。
とは言え、布団をはがされた以上は仕方が無いし、ベッドから起き上がったのだが、時刻はまだ早い。
と言うか、朝だ。
「なに……こんなはやくに……?」
昨夜もそうだったが、【ミラの祝福】の寝ながらの発動に慣れる為に就寝時は毎回発動している。
眠気は筋トレ後の筋肉痛みたいなもので、大分慣れてはきたが、翌日は自然に目が覚めるまで眠る事にしている。
その場合、目が覚めるのは大体昼前後で、その事はセリアーナも知っている。
にも拘らず、起こしてくるなんて……。
「早くって……お前、今日は仕事に出るのでしょう? さっさと起きて支度なさい」
「もうすぐテレサが朝食を持って来るからね。今日は外に行くんだし、いつもみたいに朝食を抜いちゃ駄目だよ?」
「あ、うん」
寝起きのぼんやりした状態で、2人の言葉が微妙に理解できないが、なにやら急かされている事はわかった。
何だったかな……?
◇
領都の南には川で魔境から切り離されてはいるが、魔物や獣が多数生息する森が広がっている。
ここはどちらかと言うと猟師の縄張りで、冒険者が近づくことはあまり無かったりする。
まぁ……すぐ側にもっと稼げる場所があるし、わざわざ揉めるかもしれない場所で狩りをしようとはしないだろう。
アレクは色々調査や護衛なんかで入る事は多いそうだが、俺は遠目に見た事はあっても踏み入るのは初めてで、新鮮な景色が広がっている。
「うはー……」
一の山から流れる川が、森の切れ間に見えている。
あの川がルバンが代官を務める村の側を流れる川と途中で合流しているそうだ。
一見穏やかな浅い川だが、ワニっぽい水棲の魔物がいて中々デンジャラスらしい。
幸い住み分けは出来ていて魔境側からは出てこない為、川を越えるなら下流から、とか言われている。
ちょっと、そのワニを見てみたい気持ちもあるが、俺とは相性が悪そうな為近付いたりはしなかった。
あれがその川か……話には聞いていたが、呑気に高度を上げていると、鳥型の魔物に襲われたりするからな……見るのは初めてだ。
「お?」
南側に数キロ程離れた場所から一筋の煙が上がった。
先行した隊による狼煙だ。
「おーい! 狼煙が上がったよー!」
「!? わかったー! 教えた通りに頼む!」
下で待機している兵士達に向かって報告をすると、すぐに返事があった。
言われた通り、預かっているコンパスのような物で狼煙の位置を記す。
この世界でも方位磁石は有効で、方角を調べる時に使用される。
ただ、しっかりファンタジーなテクノロジーも組み込まれていて、俺が預かっているコンパスと連動した装置が下にあって、俺が動かした通りに下の装置も動くようになっている。
「……よし! 副長ー! 向こうに合図を送ってくれー!」
「はいよー! ……ほっ!」
狼煙を上げた側にも見える様に、一旦高度を上げてから照明を打ち上げた。
◇
まだ名前は無いがルバンが治める南の村は、順当にいけば今後リアーナ領の水運を支える場所になる予定だ。
既に王都を始めとした国中の品が、マーセナル領経由でそこに入って来ている。
そして、この森を迂回してアリオスの街にその荷を運んでいるが、中には領都宛の荷も含まれているし、その流通の輪に加わりたいらしい。
その為に、領都と村との直通の道を建設中だ。
利権とかどーなんかなって気もするが、結局アリオスの街に集めることになるし、あまり気にしないでいいそうだ。
もっとも森の中を通す為、沼地等の足場の悪い場所を避けたりすると一直線にとはいかず、迂回したりひと手間かける必要がある。
それが今日の作業だ。
「副長。これであっていると思うが、上に上がって一応確かめてくれ」
「はいよ」
そう言って渡されたのは、森の中の沼地や傾斜地帯を記した地図で、先程の狼煙が上がった方向に向けて線が引かれている。
領都からスタートして既に何本も引かれていて、ルバンの村側からも同様の作業を行っているらしい。
そのうち合流して、完成したそれを基に今後の作業を進めていくそうだ。
まぁ……同じ作業とは言ったが、俺のいるこちら側の方が楽そうではあるな。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】・0枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・28枚
エレナ・【】・【緑の牙】・0枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・0枚




