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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
1章・さらば孤児院。よろしく異世界

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02

ドゥロロロロロロロ


「⁉」


ため息をつきながら、聖貨を掲げた瞬間、急にドラムロールが鳴り始めた。

そして、リールが物凄い勢いでぶん回っている。


目の前には院長の机と、その後ろの女神だか何かの像と壁だ。

思わず両方の目を擦ってみたが、変わらない。


ただ、リールが回転している事だけはわかる。


「…脳か?」


何がとは言わないけれど、脳な気がした。


ドゥロロロ…


手早く掃除を終え、いつもなら本を読んでいるが流石にそれどころではない。

いつの間にか、手に持っていた聖貨も消えてしまっている。

驚いて落とした可能性も考え、部屋中を探してみたが、無かった…。


ドゥロロロ…


そしてこのドラムロール。

鬱陶しいし、いい加減止まって欲しいけれどレバーもボタンも無い。

どう止めればいいんだろうか…?


聖貨が消えこの現象が起こったって事は、恐らく、聖貨を消費するガチャ的なものだと思う。

そうでなきゃ困る。


「ストップ‼」


とりあえず気合を入れて叫んでみた。


「お!」


気合が効いたのか、回転が徐々に緩やかになっていき、そしてついに止まった。

パンパカ、ファンファーレが鳴っているし、きっと何かいいものが出てくれるはず。


「…は?」


頭の中に文字が浮かび上がった。


その内容は【隠れ家】



この世界には魔法がある。


以前教会の治療院という、病院のような所に手伝いで駆り出されたことがある。

そこで掃除やら洗濯やらをやっていた時、運ばれてきた傷だらけの男が、神父が杖を掲げながら何やら唱えたと思ったら、徐々に傷がふさがっていった。

神聖魔法というそうだが、要は回復魔法だ。


もちろん回復魔法があるってことは、攻撃魔法などもある。

何でも、効果は違うものの魔力を行使するという点は同じで、基本は一緒らしい。


そして、生まれつき使える者もいれば、後天的に身に着ける者もいるそうだ。


上がったね。


テンションが。


それはもう、冒険者や魔物の存在を知った時以上に。


以来こっそりと、「波~~~!」だとか「~デイン!」だとかを練習していたが、俺に才能が無いのか、何かが間違っているのか、何も起こらず、いつしか断念していた。


だが、突如手にした聖貨の存在で、一気にその時の気持ちが沸き起こったのだが…。


【隠れ家】


まさかの不動産だ。

確かに欲しいとかは考えていたが、いきなりそんなの手にしても困るし、そもそもどこにあるのかもわからない。


あの後あまりの事態に呆然とし、気づいたらいつの間にやら夜。

いつも寝ている大部屋の俺の指定席の隅っこに寝っ転がっていた。


明かりなど無く、窓はあっても今夜は新月。

今の気分を表すように真っ暗だ。


上手くいくかはともかく、それでも明るい未来の想像を楽しめたが、さすがにもう無理だ。


さようなら、素敵な未来。

扉を開けば、真っ暗な人生。


そんな下らないフレーズを考えていたからか、真っ暗なのに何かドアのようなものが見えた気がしたので、折角なので開けてみようと…


「…あ?」


冷たい木の床ではなく、やっぱり冷たいがつるつるしたタイルの上に座っていた。


「ここは…⁉」


今俺のいる場所。


それは、孤児院でもなく、前世の実家でもなく、大学生の頃のワンルームでもなく、新入社員の頃の独身寮でもなく、その後何度か引っ越した部屋でも、独立時に事務所も兼ねた一軒家でもなく、事務所は別に設け、利便性で選んだ最後の住居である1LDK、そこの玄関だ。


何年も住んでいたんだ。たとえ明かりがついていなくても、ここから見える部屋の様子を見間違えるわけない。


え…何?隠れ家ってこういうこと?


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― 新着の感想 ―
[良い点] スキルGETには女神像に聖貨を掲げるのかな。 いきなりドラムロールが鳴り出したら慌てますよね。 ガチャには引換券や通貨がよく使われるなか聖貨を持ってくると特別感がありますね。
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