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「…………ふぎゅっ」
へ……変な声が出た気がする。
頭がガクッと行ったのかもしれないが……そんな変な寝方をしていたかな?
「うぐぐ…………ん?」
うつ伏せのまま大きく伸びをしてから、布団から出ようともぞもぞしていたのだが……どこだここ?
ベッドに寝ていたはずなのに、ソファーの上にいるようだが……。
「おはようございます。セラ様」
キョロキョロと周りを見ていると、少し離れた場所からテレサの声がした。
俺が目を覚ました事に気付いたようだ。
「あ……、おはようテレサ。ここは……? ぉぉっ!?」
体を起こし、声がした方を見てみると、なにやら人が沢山……おっさんおっさん、おばさんおばさんおばさん、またおっさん……あ、ロブもいる。
「ようやく起きたの……?」
そして、そのおっさん達の向かいに座るセリアーナが呆れた様な顔をしている。
テレサの俺の呼び方や、部屋の調度品から察するに、本館にあるリーゼルの応接室か。
だんだん頭がはっきりしてきたが、そう言えば昼頃に来客があるから、その席に俺も……とか言っていたな。
「……起こしてよ」
それにしても、寝ている状態の俺をそのまま運んで来るってのはどうなんだ?
「私達は何度も起こしたわ……お前が起きなかったのよ。昨晩私のベッドに入った途端眠っていたのに……よくそんなに眠れるわね?」
「止めてよ……その言い方」
セリアーナのベッド、の辺りでなんか部屋がざわついたぞ?
本人は面白がって言っているんだろうけれど、そんなんだから妙な誤解が広まるんだ。
まぁ、リーゼルも笑っているから良いみたいだけれど……。
「寝相は良かったわよ?」
ご機嫌だな……。
「テレサ、隣の部屋を使っていいから、とりあえずセラ君の身だしなみを整えておいで」
「はい。セラ様、こちらへ」
リーゼルの言葉に従い、セリアーナの後ろに控えていたテレサが、【浮き玉】を手にしてこちらにやって来る。
「あ、うん……」
なんだろう?
俺そんなにひどい恰好なんだろうか?
寝間着から、エプロンだけ外したいつものメイド服姿になっているけど……これ俺が寝ている間に着替えさせたのかな?
◇
別室で髪を梳いたり顔を洗ったりしてから部屋に戻って来ると、テーブルの上に、部屋を出る前には無かった大きな箱が2つ置かれていた。
スーツケースのような物と、1辺50センチくらいの、大きな箱だ。
オオカミの毛皮を使った何かが完成したから、今日俺もこの場にいるんだけれど、あれに入っているのかな?
でもなんで2つあるんだろう……大きなオオカミだったけれど、それでも2種類も作れるほどとは思わないが……。
セリアーナの隣に空けられたスペースに座り、箱を見ながら首を傾げていると、一際偉そうなおっさんがゴホンと一つ咳をしてから、片方の箱の蓋に手をかけた。
名前は知らないが、この街の仕立ての顔役で、セリアーナやリーゼル達の服を手掛けている人だ。
彼が中から取り出した物は、ジャケット……と言うよりは、ハーフコートか?
黒い毛皮をしっかりなめした、やや細身のシルエットだ。
何となく毛皮を生かしたモコモコのを想像していたから、少々驚いた。
ボタンじゃなくてベルトで前を留めるタイプのデザインで、シュッとしていて中々カッコいいじゃないか。
「セラ、着て御覧なさいよ」
「うん」
セリアーナの言葉を受けて、着てみようかと手を伸ばしたが、先におっさん達側の後ろに控えていた女性の手に渡った。
「セラ様、どうぞこちらに」
彼女は席から少し離れたスペースに移ると、俺を呼んだ。
どうやら着せてくれるようだ。
「ほい」
お言葉に甘えて……と、そちらに行き、コートに袖を通した。
暖房が効いているから、温かいかどうかはわからないが、軽く、何より随分と柔らかい。
質感はしっかりとした革なのに、布のような柔らかさだ。
これは防寒着では無くて、防具だから防御能力はもちろん必要だ。
だが、俺が装備する以上は、【浮き玉】の重量制限も踏まえて、より軽くて動きやすい物が望ましい。
俺の戦い方は、【緋蜂の針】で突っ込んで【影の剣】を振り回すのが基本だし、これならマッチしている。
だが……。
「…………手抜き?」
丈はしょうがないにしても、肩幅も袖の長さも俺には合っていないよ?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・39枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




