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リーゼルは抱いていた子を乳母に渡し、身を乗り出した。
交渉モードかな?
「セリア、僕にはいつも通りの美しい君にしか見えないが、違うのかい?」
すげぇ事言うな……リーゼル。
「ええ。全然駄目ね」
「そうか……君がそういうのならそうなのだろうね。あまり時間は無いが、セラ君の施療じゃ間に合わないのかな?」
リーゼルが俺を一瞥し、セリアーナに向き直る。
「その娘、夜は眠るのよ」
セリアーナの言葉に再び俺に視線が集まる。
「……夜は寝るものだよ?」
「お前は朝も昼も寝ているでしょう……。ただ、この娘、眠りながらでも【ミラの祝福】を使えるのよね。本人はやりたがらないけれど……」
思わず口に出た言葉に即座にカウンターを決められてしまった……。
「ごもっとも……」
【ミラの祝福】は発動しなくても、俺にくっ付いてさえいれば一応効果を発揮するらしい。
だが、流石に効果は落ちてしまう。
そして、発動するだけなら眠りながらでも可能だが、如何せんこの加護は俺自身どんな仕組みなのかよくわからない為、その使い方をする気が無かった。
セリアーナもそれを理解しているからか、たまに思い出したように言ってくることはあっても、俺が断るとすぐ話を引っ込めていたが、今回は……我儘って程じゃ無いけれど理由を作って、リーゼルにおねだりして解禁させるつもりなんだろう。
「どうだい? セラ君」
強要する気は無いようだが……どうにも断りにくい空気だね。
セリアーナの狙いは、これか!
◇
あの後結局、寝ながらの施療を呑んだが……どうしたもんだか。
「~♪」
セリアーナは、鼻歌を口ずさみながら、ご機嫌で髪を解いたりと、就寝の準備をしている。
寝ながらの施療がよほど嬉しいようだ。
リーゼルじゃ無いけど、見た目とか俺には全然違いが分からん。
機嫌も具合も悪くなさそうだけれど、本人的には譲れない何かがあるんだろうか……?
「セラ、君が不測の事態を警戒しているのはわかるけれど、その加護はそもそも危険なものでは無いでしょう? 今までも何も問題無かったし、仮に何か起きても、隣に私もいるし大丈夫だよ」
「いつまでもむくれていないで、さっさと寝てしまいなさい」
2人はベッドの上に座る俺に向かい、そう言ってきた。
「むぅ……」
確かに夕飯もしっかり食べたし夜も遅く、瞼が重い。
やると決めた以上、今更だな。
何かあってもセリアーナとエレナなら気付くし何とか出来るだろう。
そう言えばセリアーナと一緒の布団で寝るのは随分久しぶりな気がする。
俺は普段は【隠れ家】で寝ていてたまに一緒に寝ていたが、妊娠して以降は俺がビビって断っていたからな。
「よいしょっと……」
【ミラの祝福】を発動して、もぞもぞ布団に入るが、セリアーナの布団は俺が使っているのと同じく天狼製だが、グレードはこちらの方が上だ。
ベッドもそうだし、そろそろ【隠れ家】の家具の買い替えも検討するかな……。
部屋とベッドのサイズを頭に浮かべながら目を閉じた。
◇
「……明かりがついているのによく眠れるわね」
ベッドに潜り込むなり、すぐに寝息を立て始めたセラの寝つきの良さに、改めて驚いてしまう。
「どんな状況でも眠れるのは、冒険者に必要な才能ですよ……」
同じくセラを見下ろしているエレナは、笑いを噛み殺して思ってもいない事を口にする。
「……それは無いわね。下手な貴族なんかよりよっぽど寝具にこだわりがあるもの」
セラは確かに昼夜関係無く眠るが、ベッドやソファー……それも質の良い物じゃなければ、座ろうとすらしない。
「孤児院にいた頃は床で寝ていたと言っていたから、その反動かもしれませんね。それよりも、セリア様。体調に問題はありませんか? ただでさえ双子で負担が大きかったのに……もう少し乳母達と共に居た方が良かったのではありませんか?」
「確かに万全とは言えないけれど、問題無いわ。それよりも、睡眠を妨げられる方が疲れるもの。……世の母親は大変ね」
ここ数日の事を思い出すと、ため息が漏れてしまう。
領地の事を考えたら、子供は出来れば後2人か3人欲しいが、自分が産むのはもう御免だ。
……第二、いっそ第三夫人辺りもそろそろ選別にかかるべきか?
口元に手をやり、そう考え込んでいたが……。
「セリア様? 何を考えこまれているかわかりませんが、私達も休みましょう」
その声に顔を上げると、エレナが顔を覗き込んでいる。
「そうね……。久しぶりにゆっくり眠れそうだわ」
いずれは必要になるだろうが、今はまだ急ぐ事では無いか……。
それよりも、身体も楽になった事だし、久しぶりに気分よく眠れそうだ。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・39枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚




