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聖貨を集めて、ぶん回せ!【2巻発売中】  作者: 青木紅葉
13章・誕生!子供やダンジョン

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部屋の前で待つ事数分。

廊下の先から、こちらに向かって駆け寄ってくる女性の姿が目に入った。


出産用に用意している部屋は、南館の1階のちょうど真ん中あたりにある。

セリアーナの部屋には、そこからぐるりと結構な距離を回って来なければいけない。

その割に随分早いなと思ったが……走ってきたのか。


使用人の制服じゃ無いし、もしかしたら警備の兵士かな?

こっちには女性しか入れないからな。


「セラ副長!」


そして、部屋の前の俺に気付いた様で、大きな声で呼んできた。


「……あぁ」


副長呼びをするって事は、やっぱりか。


そのまま俺の前まで来るが、息が切れているのがわかる。


「大丈夫?」


「はい! 大丈夫です! エレナ様は無事出産されました!」


彼女に声をかけると、力強く答えた。

なんでこんなに元気なんだろうか……と思うが、それは置いておいて、報告を続けてもらった。


生まれた子は男の子で、母子ともに問題無しだとか。

念の為フィオーラにも来てもらっていたが、若い健康な女性だ。

いらん心配だったか。


ついでに何でまたそんなに張り切っているのかと、それとなく訊ねてみたのだが、屋敷の中での仕事が初めてだったので、ついついテンションが上がってしまったんだとか……。


「……屋敷の中は色んな人がいるから、走るのは止めた方がいいかな? オレもいつもゆっくり飛んでるしね?」


「っ!? そうですね。気を付けます!」


「うん……その方がいいよ。中のセリア様にはオレの方から伝えておくね。ご苦労様」


「はい! よろしくお願いします。それではっ!」


そう言うと、回れ右をして、ズンズンと大股の早足で去って行った。

確かに走ってはいないが……。


「仕事のモチベが高いのは良い事かな……」


俺は、小さくなっていく背中を見てそう頷いた。



部屋に戻りセリアーナ達に無事生まれた事を伝えたが、彼女の加護で屋敷の中の人間の動きは把握できている。

母子ともに存在している事や、向こうで大きな動きが無い事から、察したんだろう。

多少ホッとはしたようだったが、特に大きな喜びを見せたりはしなかった。


「エレナなら問題は無かったでしょう。何も心配はしていなかったわ」


とか言っている。

俺も人のことは言えなかったし、少し前の狼狽えっぷりは忘れてあげよう。


「そういえば……」


今度は薬草茶ではなく普通のお茶をテレサに淹れてもらい、それを飲んでいると、何かを思い出したようにテレサが口を開いた。


「先程、姫が子供の相手が慣れているとかおっしゃっていましたが、そう言った経験があるのですか? 確か兄弟姉妹はいなかったと聞いていますが……」


……そういえばそんな会話をしたような記憶が薄っすらと。


フっと、隣に座るセリアーナに目を向けると、視線を避ける様に横を向いている。

これは覚えているな……そして、口を滑らせた自覚があるな。


セリアーナは、観念したのか、ふぅ、と一つ息を吐き、口を開いた。


「その経歴はお父様に用意させた物よ。本当はこの街の孤児院出身ね。その事を知っているのは、私とエレナ、アレク、お父様とその側近だけよ。貴方も他には漏らさないで頂戴」


「なるほど……【隠れ家】を使って、この街から離れたのですね。北東部を妙に避けていると思いましたが……納得できました」


あっさり言ってしまったセリアーナもセリアーナだが、テレサもすんなり吞み込んでしまった。

孤児院からの脱走はともかく、戸籍改竄とか結構大事な気もするけど、お貴族様にはよくある事なのかな?

展開の速さについて行けずポカンとしている俺をよそに、説明を続けている。


聖貨の下りはテレサも少々驚いていたが、どうやら平民の子供の過去はそこまで重要じゃ無いようだ。

まぁ、孤児院出身の子供と、借金苦で親に捨てられた子供と、他人から見たらそんなに差は無い気がするしな。

セリアーナのもとに来てからもう4年程になるが、経歴はそれで十分なんだろう。


「……わかりました。教会もですが、あの周辺の者との接触も、怪しまれない様に上手くあしらいましょう」


「ええ。大分影響力は削いでいるし、今更どうこうできるとは思えないけれど……。セラ。お前もいいわね」


「あ、はい……」


何かよくわからんが、今後の街へのお出かけはテレサがマネジメントするようだ。


セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・9枚


セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚

エレナ・【】・【緑の牙】・5枚

アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・5枚

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― 新着の感想 ―
[良い点] おもしろかったです [一言] 384話今読み終えました とてもよかったです 7歳で脱走から早4年の主人公 14歳で騎士になるといわれてますがもうちょい先ですね 更新がんばってください
[気になる点] 孤児院に身元がばれたらどうなるんだろう? 教会勢力が文句をつけにくるのかな? 主人公は古巣の人間を救おうなんてお花畑な発想をしないところが良いね。
[一言] 北東を避けてるってわかるもんなんやな さすテレサ
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