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「さて……セラ、俺達はこのまま仕事をするが、お前はどうする?」
「どうしようかね……。掃除でもしようか?」
先程の書類へのサインで、今日ここまでやって来た用事は終わってしまった。
昼には食事をしに屋敷に戻るが、それまでまだ時間がある。
滅多にここには来ないし、何かやる事があれば引き受けてもいいかな?
「掃除は……雨季前に終わらせたしな。何かあったか?」
と、アレクは周りを見るが、一様に首を横に振っている。
「春や夏なら、討伐した魔物の素材や更新した装備が置いてあるんですが……」
「今はちょうど全部片づけてしまいましたからね……」
部屋で作業をしている兵士達が口々にする。
なるほど……騎士団の外での活動が増える時期は、ここも色々物が置いているが、秋の雨季から冬にかけては、中での仕事が増えるから片付けてしまい、あまり見る物が無くなっているのか。
……しかし、アレクは何か仕事が無いかと聞いたのに、もてなす方向に話が行っているあたり、俺はすっかりお客さん扱いなんだな。
滅多にここに来ないから、無理もないかもしれないが。
アレクも困った様な笑みを浮かべている。
まぁ、仕事が無いなら無いでいいか……邪魔にならないうちに退散しよう。
やりたい事もあるし、ある意味都合がいい。
「やる事は無さそうだね……。そんじゃー、オレは屋敷に戻るよ」
「ああ。わざわざご苦労だったな。そうだ、一つ頼まれてくれるか? 夜ジグさんの所に行くと、エレナに伝えておいて欲しいんだ」
外は雨だし、飲みに行くってわけじゃなさそうだけれど、何か話でもすんのかな?
まぁ、いいや。
「りょーかい。それじゃー、お先にー」
「おう」
部屋で仕事をしている皆に向かい【祈り】をかけて、そのまま部屋を後にした。
◇
「……お、曲がり角か。ふぬぬぬぬ……」
屋敷の地下に張り巡らされている通路は螺旋状になっている。
上から下に伸びているんだし、グルグル曲げて距離を稼がないと、直滑降になってしまうから当たり前ではあるか……。
ともあれ、その通路を俺は今、目を閉じながら進んでいる。
浮いていて何かに躓くようなことは無いし、色々施設が入っていても人気も無く、誰かにぶつかる様な事も無いが、緩い傾斜で目を閉じて歩くのには間違っても適しているとは言えない。
その通路を、俺は目を閉じている代わりに、裾からヘビたちを出して、彼等に先導させて進んでいる。
潜り蛇の能力で、契約した主が魔力をみえる様になる、という物がある。
サーモグラフィーのように、ある程度遮蔽物を無視する事が出来て、契約したものは偵察要員として重宝されている。
俺も何度も助けられている、とても便利な能力だ。
だが、実はそれ以外にも能力がある事がわかった。
それは、ヘビの見ている視界を共有できる、という物だ。
つい先日、頭まで布団をかぶって昼寝をしていたのだが、セリアーナに起こされた。
たまたま布団から出る前に、アカメだけ先に隙間から出したのだが、その時に部屋の様子が俺の頭の中に浮かんだ。
ヘビたちが何か異変を感じたら、それが何となく俺にも伝わる事はあったが、完全にヘビの視界が俺にも見えたのは、この時が初めてだった。
その後何度か試してわかった事だが、どうもヘビたちの目を発動すると、魔力だけじゃなくて視界も共有している様だ。
ただ、主の視界の方が強く見えるようで、ヘビの視界は、メモの裏側に書いてある文字のように薄っすらと透ける程度にしか、見えていないのだろう。
だから、目を開き尚且つ動きながらともなると、気付く事は出来なかった。
決して俺が鈍かったわけじゃ無い……はずだ。
「うん……見える見える」
俺は曲がり角の手前で待機して、ヘビたちだけ体を伸ばして角の向こう側を覗いているが、その光景は俺にも見えている。
さながら、前世であった潜望鏡のような感じだろうか?
もう少し訓練して、もっと使いこなせるようになったらセリアーナ達にも報告しようかな?
今のところ覗きくらいしか使い道は思いつかないが、何かいい使い道や活用できる場を用意してくれるかもしれない。
「よし……次行くぞー!」
ヘビたちを再び手元に戻して、【浮き玉】を角の先に進めた。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・9枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・4枚




