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おっさん冒険者達の指導の下、男女合わせて10人ちょっとの見習達が、魔物の処理や運搬用の橇造りを行っている。
さらに、それとは別に少し年上っぽい少年達が、冒険者達と一緒になって周囲の警戒をしている。
俺がいる以上危険は無いが、油断していないのは良い事だ。
何となく見覚えのある子供達がいるが、彼等は去年からかな? それにしても……。
「ねぇ、なんか多くない?15–16人くらいいるよ?」
ごちゃごちゃに動いているから数えていないが、俺が引率をしていた時より10人くらい増えている。
近くで、周囲の警戒に当たっている冒険者にそのことを聞いてみた。
最近こっちに関わっていなかったから気づかなかったが、何か方針の変化でもあったんだろうか?
「ああ……そういや、あんた魔王種の討伐とかで忙しかったからな……。去年に続けて今年もガキどもの中から選別したんだよ」
「うん」
何か好評だったらしいしな……継続するのはわかる。
「指導するガキどもが増えていくと、去年までの編成だと俺達の手が足りなくなるんだ。それに、指導する人間がコロコロ変わっちゃ、教わる側だって混乱するだろう?」
「まぁ、そうだね」
マニュアルがあるわけじゃ無いし、それぞれの流儀だってあるだろう。
ただ、人にものを教えるのに、その内容が違っていたら、ちょっと困る。
「ああ、だからまとめて面倒を見てるんだ……」
「だな。まあ、これはこれで問題が無いわけじゃ無い。特に処理を教えるとなると魔物の数が足りなくて、中々教えられなかったんだ。助かったぜ、副長さんよ」
へっと笑いながらこちらを見て、そう言った。
解体の手伝いとかなら冒険者ギルドで手伝いをしたら、覚える事は出来るが、狩場での魔物の処理となると、また変わってくる。
獣の場合は血抜きや内臓を取ったりするが、魔物の場合は何もせずに、そのまま街まで運ぶ事もある。
俺のように倒したら後を任せるってわけにもいかないし、その辺りの判断を、魔物が出る狩場で行うんだ。
場数を踏ませられるなら、良い事だと思う。
「まぁ……いいか。魔物を売ったお金とかはどうしてるの?」
いつも任せている兵士達は、酒代にしているそうだが……。
「支部長が運営費として貯めているよ。あいつらの昼飯代だな。去年は採集の合間に俺達が倒した分だけでも十分だったが、今年は人数が増えたからな……」
と、子供達を指して言った。
「……そういや、うちの旦那様が出してるのは、冒険者達の指導料だったっけ?」
「ああ。それだけでも十分なんだろうが……支部長や昔からこの街で活動している連中が張り切っていてな……」
と、苦笑気味に答えた。
ルトルの冒険者冬の時代を知らないあたり、彼は他所からやって来たっぽいな。
それでも、この仕事を引き受けているあたり、面倒見が良いんだろう。
◇
結局あの後、俺だけ帰るわけにもいかず、処理が終わるのを待って皆で街に帰還した。
橇は見習達が人力で曳いていたが、それもトレーニングになるので【祈り】は無しだ。
「おっし……、お前らご苦労さん。シャワー浴びて、飯食ってこい」
そして、冒険者ギルドの裏まで運び、解散となった。
食後彼等は解体を手伝うそうだ。
中々充実したカリキュラムだと思う。
だが、それよりも……。
「ここってシャワーとかあったっけ?庭で水ぶっかけるとか?」
土地と水はあるから、それくらいは出来るだろうが……と考えていると、横から俺達とは別のおっさん達が加わって来た。
「所帯持ちや女の冒険者も増えてきたからな……。汗くらいならいいだろうが血の臭いや汚れを着けたまま家には帰れないそうだ」
「王都の冒険者ギルドでもこんなの無いぜ?」
と、口々に言ってくる。
彼等はこの街出身かな? 呆れ……とまでは言わないが、今の状況に少し戸惑っている様だ。
「馬鹿野郎! 施設の設備を良いもんにしたらその分よそには出て行くことはないだろうが! おう、姫さん、あんたも浴びてくか?」
「あ、いや。オレは屋敷のがあるから……」
さらに加わって来た、青筋立てた冒険者ギルドの職員らしきおっさんに誘われるが、俺は屋敷の方をチョイスする。
しかし、なるほど。
ここは危険ではあるが金は稼げるし、今後どんどん発展していく予定だ。
折角よそから集まって来た冒険者達に出て行かれないようにしているんだろう。
見習達の育成と合わせて、経営努力って奴かな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・8枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




