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屋敷と騎士団本部を繋ぐ地下通路の一角に最近新しく設置された部屋がある。
調合や加工といった錬金術絡みの作業部屋で、サイモドキとの戦闘でも使った薬品を始め、高度な技術や設備を要する物を、民間では無くて騎士団で用意できるようにするためだ。
人も物もフィオーラが自由に扱えるようになっている。
その部屋でゴリゴリと何かをすり潰す音や、バキボキ何かを折ったり砕く音が響いている。
先日倒した魔王種の素材は、その大半を俺が貰う事になってしまった。
倒したのは確かに俺だが、ジグハルトにもいろいろ手伝ってもらったし、遠慮なく貰って欲しかったのだが……必要無いと固辞されてしまった。
その代わり、毛皮と牙を除く素材の加工を任せて欲しいと言って来たので、むしろお願いしたいくらいだし、全部任せることにした。
そして今日、解体後の下処理が済み、加工を行うという事で、見学させてもらっている。
「……面白い?」
乳鉢で骨の欠片をゴリゴリと粉末状にすり潰しているフィオーラが、顔を上げてこちらを見た。
「うん」
今潰している骨は、肉や脂を削ぎ落して、さらに薬品に漬け込み、内部の魔力まで完全に抜き取った代物だ。
そうする事で、魔素をどんどん吸収していく性質を持つようになる。
その性質は粉末に加工しても引き継がれて、その粉末を混入する事で、例えば建材や武具等にも疑似的にだがその性質を与えられるらしい。
この部屋も素材は以前倒したクマの物だが、それの素材を床や壁や天井に混入している。
そうする事で部屋全体が頑丈になり、外からの魔力の影響も受けにくくなるそうだ。
何もしない状態の骨は、ハンマーが折れるくらいの硬さだったが、魔力を抜き取る事で、簡単に粉々になっている。
何だっけ……骨粗鬆症? カルシウムじゃなくて抜けたのは魔力だが、あんな感じなのかもしれない。
フィオーラは粉末にしたそれをさらに篩にかけてから、1リットルのペットボトルくらいのサイズの瓶に流し込んでいる。
飾りっ気の無い素焼きの瓶だが、あれ一瓶で結構なお値段になるんだろうな……。
「セラ、こっちの確認を頼む」
「はーい」
後ろから飛んで来たジグハルトの呼び声がした。
声がした方を向くと、水瓶くらいのデカい壺が大量に並んでいる。
その中の一つの前に、これまたデカい骨を手にしたジグハルトが立っていた。
「ぬーん……」
【妖精の瞳】とヘビ達を発動してその骨を見るが……まだ魔力が残っている。
「まだだね。芯の方にちょっと残ってるよ」
アレはオオカミの方じゃなくて、サイモドキの方だ。
倒して、ここまで運んで、そして解体して……と、少々時間はかかったが、それでもあの壺の中で魔力を抜く処理を始めて一月以上経っている。
オオカミの方は一週間程で完全に抜けきったが、こちらはまだもう少しかかりそうだ……。
「そうか……」
ジグハルトは笑いながら、嬉しそうにそう呟くと、手にした骨を再び壺の中に戻した。
彼は、アレを使って何か作りたい物があるわけじゃ無いんだろうが、質の良い素材をストックできるのが嬉しいらしい。
オオカミの素材処理も嬉々としてやっていた。
「セラ、こっちも見て頂戴」
「はいよー」
今度はフィオーラに呼ばれた。
こっちは上手く魔力を吸収できるようになっているかの確認だ。
二人とも別に俺を頼らずともそれくらいわかるが、俺の方が早い。
職人肌ではあっても、頑固さは無い。
何となく好奇心で見学に来ただけだったが、来たら来たで意外とやる事があるもんだな。
◇
「……これで全て完了ね、ご苦労様。おかげで早く終わったわ」
瓶に封をして、フィオーラはそう言った。
「こっちこそ、ありがとーね」
同じく俺も礼を言う。
机の上には、粉末が入った瓶が10本ほど置いてある。
骨だけとは言え、あのオオカミからこれだけしか作れないのか……。
そりゃー、質だけじゃなくて量の面でも貴重になるのがわかる。
「本当にオレが全部貰っていいの?」
「ええ、私もジグも使わないもの。貴方も直接使うことは無いでしょうけれど、贈り物には喜ばれるわよ」
確かに贈り物に使うつもりではあるが……。
「……そっかー。んじゃ、ありがたく頂戴するよ」
この人達クラスになると、自分の為に何かを作ったり、物を贈ったりとかする必要が無いのかもしれないな。
小者な俺はそうはいかないし、ありがたくお言葉に甘えさせてもらおう。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




