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「セラも謁見の場で発言を求められたんだね……。上手くできたようだけれど、驚いたでしょう?」
エレナ達もセリアーナから手紙を回され読んでいる。
仲のいいねーちゃん達だ。
そして、どうやら今エレナが読んでいる物に、謁見の様子が書かれていたらしい。
「あれが上手く行ったのかどうかはわからんけども……怒られはしなかったね。てかさ、会う人会う人皆俺が発言することは無いって言ってたのに、ひどいよね?」
あの場での話はどう転んでもよかったらしいが、俺の胃にはよくなかった。
あの時の事を思い出すと、苦い顔になる。
「それは大変だったね……」
「結局、王都までの移動時間の記録を更新した方を評価されたそうね。もしかしたらそういった事態があるかも、と準備しておいたけれど……」
その様子が面白かったのか、エレナと、目を俺の手で塞がれているセリアーナまで笑いを嚙み殺している。
おのれ……と憮然としていると、ふとその少し後の事を思い出した。
「全く……! あ、そうだ。王妃様が、今度はテレサも一緒に春にまた来いって言ってたんだよね。どうしよう?」
断るって選択肢は無いんだろうけれど、何のために呼ばれたのかがわからないままだった。
オリアナさんが言っていたのも推測に過ぎないし……何かその事について書いてあるのかな?
「春ね……出産祝いかしら」
「そうですね。流石に冬に移動するのは厳しいですし……。春なら貴族学院の入学に合わせて、国中から集まりますし……」
「む?」
出産祝いとな……?
「子供出来た事知らせてたの? オレは何も言ってないし、王都の屋敷でも何も聞かれなかったけれど……」
魔法とかポーションとか、俺の想像を超えた技術があるから大丈夫だろうとは思うが、妊娠、出産は簡単な事じゃ無い……と思う。
だから俺はじーさん達にも妊娠の事は話していない。
「魔王種の討伐があったし、むしろ何も言及していないのだから予測は付いているでしょう。おじい様達もね。産まれたら改めて正式に報告をするわ」
「ほー……」
全然そんな素振りを見せなかったが……セリアーナだけじゃなくエレナもそうだったし、嗜みみたいなものなのかな?
出来ていなかったら、それっぽい事を言う……と。
「他にも王都でのリアーナの屋敷を用意したり、色々あるでしょうけれど……まあ、お前が気にする事じゃ無いわね」
本来は自領の屋敷に泊まるべきだが、今回は用意が出来ていないからミュラー家とセルベル家の王都屋敷に泊まった。
建物だけじゃなくて、そこを取り仕切る人員も必要だし、すぐには用意できなかったんだろう。
だが、もう1年経つし、そろそろそこら辺も手を付け始めたのかもしれない。
聞こえてくるエレナ達の話では、そこの人間はセリアーナの、使用人等はリーゼルの縁で揃えて、テレサの家もそれに協力するみたいだ。
人員に関しては問題無さそうだ。
まぁ、俺にはわからない世界だな!
◇
しばし王都での出来事を話していると、セリアーナが顔の上にある、俺の手を退けた。
どうしたんだろうか?
「こちらに使用人が向かって来ているわね。フィオーラ、お願い」
誰かが来るのか……それなら。
「オレがでるよ?」
そう言い、フィオーラが立つ前に、セリアーナの頭の下から抜けようとしたのだが、足を掴まれてしまった。
「下の騎士団本部から誰か来ていたから、解体が終わったんでしょう。フィオーラが行った方が話が早いわ」
「あら、思ったより早かったわね。大型では無いけれど、もう少しかかると思ったわ……ジグも早く終わらせたかったのかしら?」
そう呟きながら、フィオーラは寝室を出て行った。
「あ、そういえばさ……魔王種の素材、オレとジグさんで分けて良いって言われたんだけど……どうしよう?」
リーゼルへ報告した際に言われた事だ。
討伐命令が出ていたならともかく、たまたま狩った物だから好きにしていいんだと。
ミツメのお礼に使いたいし、ちょっとは貰うつもりだったけれど、全部貰うとなると……扱いに困るってのが、正直なところだ。
「好きにしたらいいじゃない。お前奥に飾ったりしているでしょう? 棚が豪華になるわよ?」
「いや……それは流石にもったいなさ過ぎるでしょう」
商人達に売るのももったいないが、オブジェにするのも同様だ。
そして……。
「職人のロブは革細工が専門でしたね。魔王種の素材で何かを作らせるには向いていませんか……」
俺が言う前にテレサが口にした。
「そうなんだよね……」
さらに今の俺は欲しい革細工も無いし……使わなきゃもったいないけれど、使い道が思い浮かばない。
困った……。
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




