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風呂から上がり、セリアーナの部屋に向かうと、部屋の前に立つ女性の姿が見えた。
おばちゃん……というにはもう少し若いが、セリアーナがたまに仕事を命じている使用人だ。
セリアーナの部屋は応接室と、その奥にある寝室の二部屋で、今はエレナ共々寝室に引っ込んでいる事が多い。
普段は俺が小間使いのような事をやっているが、屋敷を出ていた間は彼女がやっていたんだろう。
「お帰りなさいませ、セラ様」
彼女は俺に気付くと、そう言って来た。
仕事中だからだろうが、少々お堅い感じだ。
セリアーナや客の前でなければ、仕事中でもセラちゃんと呼んだりするのもいるし、その辺は個性だな。
「はいただいま。皆は寝室かな?」
「はい。セラ様が入った後は私も部屋を下がる様に言われていますが、何か申し付ける事はありますか?」
「いや、何も無いよ」
中にはテレサもいるだろうし、【隠れ家】の話なんかもするから、人が来ないようにしておきたい。
「そうですか。では、私はこれで……」
彼女は一礼すると、サッと下がっていった。
仕事人って感じだな……俺もさっさと中に入るか。
「あら? テレサ」
中に入ると、ドアを開けてすぐの所にテレサが立っていた。
「お帰りなさいませ。姫」
「……そこいたんだね」
ちょいとビビったが、彼女の今の役割はセリアーナの護衛も兼ねている。
寝室からは出ても、廊下まで出るのは彼女の中ではアウトなんだろう。
「……皆さまがお待ちです。こちらへ」
髪と手足の指先に一瞬視線が行っていたが、すぐに顔に戻った。
髪は乾いているけれど、マニキュアとかは塗っていなかったからな……お気に召さなかったかもしれない。
「後で、指に塗っておきましょう」
「はい……」
それだけ言うと、寝室に向かい歩いていき、ドアを開けた。
俺も後をついて行くが、中に入る前に中に向かって一声かけた。
「たでーま!……あれ? フィオさんじゃん」
そして中に入ると、いつもの二人に加えてフィオーラまでいた。
てっきり騎士団本部で解体に立ち会っているのかと思ったが……。
「お帰りなさい。……解体所は空調が今一なのよね。遺骸はもう私の家で十分に調べたし、ジグに任せるわ」
「ああ……」
解体は、騎士団本部でやるのか冒険者ギルドでやるのかはわからないが、あそこはどちらも体育館くらいの広さがある。
冬場ならともかく夏は暑いんだろう……集まっている面々も暑苦しいだろうしな。
フィオーラがいる理由に納得し、ウンウンと頷く。
「それよりも……」
フィオーラはピっと指を伸ばし、反対に座る二人の方を指している。
そう言えば、目の前にいたフィオーラにびっくりして、帰還の挨拶をしていなかった。
「セリア様とエレナも、ただいまー」
「……ええ。お帰りなさい」
ちょっと呆れた様な顔をしているが、気のせいだと思おう。
◇
セリアーナは、王都で預かって来た手紙を読み終え、今は俺の話を聞いている。
ちなみに場所はベッドの上だ。
俺は枕を背もたれ代わりにして足をだらんと伸ばし、セリアーナはその足の間に寝そべっている。
そして、彼女の目に手を当てて軽く【ミラの祝福】を発動している。
蒸しタオルの代わりみたいなもんだな。
ただ、目を閉じて大人しく施療を受けていたが、セルベル家の話題になると、手を退けてこちらに顔を向けた。
「……お前、メノアの食事は口に合わなかったんじゃない?」
「美味しい事は美味しかったけど……量はあんま食べられなかったね。セリア様も食べた事あるの?」
「本場のは無いけれど、貴族学院に通っていた頃、向こうの屋敷に招待されたことがあるわ。その時に頂いたのよ。お前は貴族の屋敷に行きたがらなかったから知らないでしょうけれどね……」
「むぅ……」
俺の太ももを軽く抓りながら、チクリと言って来た。
そういえばあの頃は、俺はただのメイドさん……それも見習いだったし、あまりパーティーとかには同行していなかった。
……お堅い場所にはいかないのは今もかな?
セラ・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】・6枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・38枚
エレナ・【】・【緑の牙】・5枚
アレク・【】・【赤の盾】【猛き角笛】・2枚




